バン@内科医のジレンマ

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バン@内科医のジレンマ

ブログ「内科医のジレンマ」(https://viceversa888.exblog.jp/)運営 内科医/専門は呼吸器と感染症/今はひょんなことからICUでお仕事 研究者としては端くれ中の端くれ(そちらの専門はNTMと真菌) noteお試し中 ブログとはテーマを分けてみたい

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noteとブログとSNSの使い分け

はじめにはじめまして。内科医のジレンマ(https://viceversa888.exblog.jp/)という、主に医療従事者向けのブログを運営している内科医のバンと申します。 診療科としては呼吸器内科医で、専門は感染症診療と研究ですが、 1)初期研修後はしばらく地方で一般内科医として勤務 2)離島で病院診療&訪問診療 3)現在は地方都市のICU/救命センターで勤務 と短期間ずつではありますが、様々な場所で働いています。 そんな経緯もあり、呼吸器や感染症診療だけでなく、内科

    • 第118回医師国家試験(感染症)

      前回からの続きです。 その他の問題についても簡単に掘り下げてみましょう。 結核(118A-55、118B-29)ポイントは1)罹患発症リスク、2)経過が亜急性であること、3)感染対策(空気感染)の3点でしょうか。 1)罹患発症リスク 曝露歴:濃厚接触(同居など) 医療従事者も感染ハイリスク 居住地:低所得者層の多い地区 基礎疾患:HIV、慢性腎不全、コントロール不良な糖尿病といった免疫不全状態はもちろん、胃切除後や珪肺患者でも注意が必要です。加齢に伴う細胞性免疫低下で過去の

      • 第118回医師国家試験(感染症)その1

        今年も2/3-4に第118回医師国家試験が行われました。傾向をつかんでおいて、学生教育に活かそうと毎年ざっとみています。また実臨床に役立つかたちに昇華できればと思い、感染症分野について少し解説を加えてみようと思います。 梅毒(118A-10、118B-37など)梅毒とは梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による多彩な症状を呈する感染症です。 元々出題傾向のある感染症ですが、昨今の梅毒感染者増加は当然影響しているものと考えます(その他婦人科領域や泌尿器科領

        • 脂肪乳剤の適応

           少し前に話題になっていたこともあり、今一度簡単にまとめてみることにしました(なるべく難しいことは抜きに)。 脂肪製剤とは? 三大栄養素といえば、炭水化物、タンパク質、そして脂肪ですね。脂肪乳剤とはこのうち脂肪の補充を目的とした点滴製剤です。現在本邦で使用可能なのはイントラリポス®️(10%、20%、大塚製薬)のみです。大豆油を主成分としており、これに乳化剤としてレンチンが含まれています。脂肪酸の多くはリノール酸というn-6系多価不飽和脂肪酸です。リノール酸の代謝物が炎症を

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          対症療法の難しさ

          「薬剤師の処方権」が話題です。超えるべきハードルはいくつもあるように思いますが、基本的な方向性としては賛成です。ただ、SNS等でかなり稚拙な議論が行われていることにはやや辟易しているところです。一部で「対症療法」が軽く扱われているのも気になりました。 対症療法とは「病気による症状を和らげる、あるいは消す治療」「原因療法、根本治療の対照にあるもの」と定義されることが多いです。 かぜを引いた時に、原因であるウイルスを直接排除できないけれど、咳や鼻汁といった症状を和らげる治療もそ

          医療職からみたAIサービス私的まとめ

          もうAIなしで仕事は成り立たないChat GPTが一つのきっかけとして、「AIサービスの大衆化」が驚くべきスピードで進んでいます。勿論万能ではなくそれぞれに限界がありますし、しばしば誤りも認めますので、僕ら専門職はより一層気をつけて利用しないといけないです。しかしながら、特に「比較的気を使わなくても良い仕事」については圧倒的にAIに任せたほうが効率が良いですし、下絵を描いてもらうだけでも作業は楽に時短になるのは間違いないです。 もはやAIなしではやっていけないほどに。 まず

          医療職からみたAIサービス私的まとめ

          ブドウ球菌菌血症のマネジメント

          今回のブログ記事:黄色ブドウ球菌菌血症のマネジメント に関連して、ブドウ球菌(GPC cluster)が血液培養から検出された時のフローをつくってみました。 一部私見も入っていますし、すべては網羅できていませんので、また改訂するかもしれません。 ブドウ球菌(GPC cluster)が血液培養から検出されたら基本的にブドウ球菌が検出された場合には、コンタミネーションではなく真なる菌血症として初期対応をします。 感染源となる人工物、カテーテルがないか、感染性心内膜炎を疑うような

          ブドウ球菌菌血症のマネジメント

          第117回医師国家試験(感染症)②

          前回に引き続いて国家試験問題に関連した内容を(なるべくさらっと)まとめます。 117B-18 治療薬物モニタリング治療薬物モニタリング(TDM)が必要な抗微生物薬を答えさせる問題が出題されました。 TDMの対象となっている抗微生物薬は グリコペプチド系:バンコマイシン、テイコプラニン アミノグリコシド系:アルベカシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン トリアゾール系抗真菌薬:ボリコナゾール があります。 ただし、特定薬剤治療管理料が算定可能なのは入院のみ

          第117回医師国家試験(感染症)②

          第117回医師国家試験(感染症)①

          さて、先日(2月4、5日)に今年の医師国家試験が行われました。学生教育への応用や、その年のトレンドが見えるので、毎年ざっと解いています。 今年の問題は例年と大きな傾向の違いはなく、そのまで悪問・奇問はなかったかなと思います。感染症分野も(多少異論のあるところはありますが)、正答に辿り着けない難しい問題は少なかったと思います。そんな中でも比較的回答が割れた問題について、できれば今後の臨床に活かせる形に昇華したいと思い、ご紹介します。 117A-63 輸入感染症の基本をおさえよ

          第117回医師国家試験(感染症)①

          C.difficile感染症ガイドライン改訂

          Clostridioides(C). difficileとはC. difficileは偏性嫌気性の芽胞を持つグラム陽性桿菌です。かつてはClostridium属に分類されていましたが、Peptostreptococcaceae科に再分類され、Clostridiaceae科との区別と略称変更による混乱を避けるかたちで、Clostridioidesと新たに命名されました。 多くの抗菌薬に対し耐性を示し、しばしば抗菌薬投与中・後の下痢症を引き起こします。 菌そのものでなく、菌が産生

          C.difficile感染症ガイドライン改訂

          肺炎が良くならないときに考えること

          “肺炎が良くなる”とは なんとなく、熱が下がったとか、CRPが下がったとか、レントゲンの影が良くなったとか、そんなことをイメージしやすいかもしれません。  ただ、意外に熱は遷延しますし、レントゲンの肺陰影も完全に消失するのには経過が良くても3週間以上かかることが稀ではないです。  細菌感染症は、基本的には1つの臓器を侵します。細菌感染症が良くなったかどうかを判断するためにはその臓器の症状や所見が良くなったかをみることになります。また特に重症感染症(敗血症)の場合は臓器所見と

          肺炎が良くならないときに考えること

          コロナ禍の病床管理

          Twitterでもそれなりに反響があったので、こちらにまとめてみることにしました。 どうして、病床が逼迫するのか。救急搬送が滞るのか。平常時 そもそも患者数に対して病床数の余裕がない。 (「今も」だが、ベッド削減の流れ。病院は回転数を上げて診療しないと厳しい運営だった) 医療従事者の数も病床に比して余裕がない。 特に地方は… 初期 一部の患者さんは受診控え 感染対応できるベッドを確保するために、病床数全体は減少 感染患者と非感染患者を同時に診療するのは難しく、ベッ

          コロナ禍の病床管理