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初めてお笑いライブに出演した話

 僕は宮城県に暮らす、お笑い好きの大学生だ。最近は、お笑いが好きすぎて、とうとう出る側になってしまった。
 今日は、初めてお笑いの舞台に立った時の話をしたい。

 僕が初めて出たお笑いライブは、今年(2022年)の7月、東京の下北沢で行われた「下北GRIP」というフリーライブだった。
 このライブは毎週末開催され、素人でも簡単に出れるが、サツマカワRPGさんやYes!アキトさん、金の国さんなど、有名な芸人さんも出演している。特に怪奇!YesどんぐりRPGさんの基地として有名で、大ファンの僕は初めて会場に行ったとき、怪奇さんのYouTubeでいつも見ていた景色を実際に見ることできて、すごく感動した。

 ライブの前日、僕は下見も兼ねて、お客さんとして下北GRIPに行った。フリーライブなだけあって入場料は無料で、会場の近くでは芸人さんが呼び込みを行っている。開演の数分前、会場に到着すると、お客さんは僕しかいなかったが、徐々に人が増えていき、気付けば満席だった。出演者には10億円さんやもりせいじゅさん、金の国さん、TEAM近藤さんなど、知っている芸人さんが何人もいて、かなりハイレベルだった。あまりの面白さからライブ後、満足感以上に明日は自分がこの舞台に立つというプレッシャーのほうが大きく感じた。

 ライブ当日、開演の1時間前に集合し、出演者を確認すると金の国さんや入間国際宣言さん、本多スイミングスクールさんがいることを知った。彼らの面白さを知っている分、自分は浮いてしまうのではないかと、昨日のプレッシャーに加えてさらに大きなプレッシャーがかかり、憂鬱になる。
 下北gripでは、お客さんが入場無料の分、出演者が出演料(ピンが2000円、コンビが3000円)を支払う。ネタの持ち時間は4分で、僕はピンで出演した。「4分で2000円なら、40分で20000円。」調べてみると、風俗の相場と同じくらいだった。風俗に行ったことは無いが、“お客さんを笑わせる”という快感は、それと同じくらいなのだろうか。

 そんなことを考えている間にライブが始まった。僕の出番順は16人中7番目で、ネタは7つのショートコントを羅列する予定だった。お客さんは7,8人で僕の前の人たちのネタを見る限り、かなり重たそうな雰囲気が流れている。ついに僕の出番が来た。「どうもー」と飛び出したが、お客さんは3人くらいしか拍手していない。そして、まず1つ目のショートコントを終えたが、ひと笑いも起きなかった。2つ目も、3つ目も、会場は静まり返っている。4つ目をしようとしたところで、あまりの緊張からネタが飛んだ。必死に思い出そうとしたが、頭が真っ白になり、結局5秒間の沈黙を経て、覚えていた別のショートコントをやった。残りのネタで続けることもできたが、地獄のような空気に耐え切れず、途中でネタを終えてしまった。

 舞台からはけて、控室に戻る。控室と客席はパーテーション一枚越しで、ネタと笑い声も聞こえるため、僕がひと笑いも取れなかったことは、ほかの出演者も把握している。「もう二度とお笑いライブになんか出たくない」それほどのトラウマを抱えた僕だったが、ある人の一声に僕は救われた。控室にいた金の国の渡部おにぎりさんが「おもしろかったよ」と言ってくれたのだ。あまりにもスベっていたため、もちろんそれがお世辞であることはすぐに理解した。それでも、R-1グランプリで決勝に進出し、ツギクル芸人グランプリで優勝するような憧れの芸人さんが、僕のネタを聞いてくれていたという事実だけでも、すごくうれしかった。そして、その一声により「もう二度と出たくない」という僕の思いは、「次は絶対に笑いを取りたい」という思いに変わった。

 その夜、大好きな怪奇!YesどんぐりRPGさんの単独ライブに行った。登場しただけで大きな歓声と拍手がわき起きる。3人が何かしゃべるだけで大きな笑いが起きる。ネタをやっても全く噛まないし飛ばさない。改めて芸人さんの凄さを実感した。すごく笑ったが、少しだけ悔しかった。

 早く次のお笑いライブに出て、笑いを取りたい。そう感じた1日だった。

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