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消費者の嗜好が変わりやすいEC市場で顧客を勝ち取る! 『ブランドスイッチの法則』著者まえがき

2024年1月刊行の『ブランドスイッチの法則 消費者の嗜好が変わりやすいEC市場で顧客を勝ち取る』(田中 宏樹・著、株式会社いつも・監修)の著者まえがき全文を掲載します。
本書の内容を知るてがかりとしてください。

まえがき

「どうしたら、もっと私たちのブランドは売れますか?」
「どうしたら、もっとリピート率が上がりますか?」
「どうしたら、もっと……」

今日も、現場ではクライアントからあらゆる相談が舞い込んで来ます。
彼らは市場の変化に適応し、競争力を維持するために、日々情報を求めています。その目には、この業界における変化やトレンドへの敏感さと、未来への不安が漂っているようにも見えます。さらに深層を読み解いていくと、彼らの質問はよりシンプルになります。

『売れている商品』は、なぜ売れているのか?

私は、この問いに対する答えを長年追い求めてきました。この本を手にとったあなたも、きっとそう感じている一人だと思います。

巷では、商品を売るためのテクニック本やネット記事、SNSで情報が飛び交い、私たちの日常生活でもありとあらゆるブランドが広告費をかけてプロモーションを行い、次々と新商品が発売されています。

1997年に楽天市場が誕生した年をEC元年とすれば、ECが誕生してすでに25年以上の時間が経過している中で、各ブランドは手を変え品を変え、消費者へ様々なアプローチを行っているにも関わらず、残酷なことに、それらは『売れている商品』と『売れていない商品』に必ず分かれます。では『売れている商品』はなぜ売れているのでしょうか?

知名度があり、広告費を大量にかけているからでしょうか? 一番成分が良く、最もコスパが良いから? それとも、競合ブランドよりも、同じスペックで安く売れるからでしょうか?

「『売れている商品』が、なぜ売れているのか?」という問いに対して、そんなに簡単な理由では説明できません。もし簡単に説明できるのであれば、『売れている商品』がやっていることをすべて実施すれば、どのような商品も売れる状況が作れるということになります。

マーケティングはそんな「お手軽」なものではなく、同じようなことをしても、必ず『売れている商品』と『売れていない商品』に分かれます。
このような事態に陥るということは、いかにマーケティングが“ 再現性の低いものであるか” を意味しています。

「ブランドをスイッチさせるための法則とは何か?」
この問いに向き合うことになった私の経歴について、少しばかり紹介させていただきます。

本書を執筆する原点は、私が2010年にとあるメーカーのECサイトの責任者として運営を担当していたころに遡ります。2010年といえばEC化率が2.84%と2022年の3分の1以下。ECに特化した書籍やネット上の情報も限られていたことに加え、各ブランドのECサイトも今よりも簡素なデザインで、参考になるような商品ページやLP(ランディングページ)はありませんでした。
したがって、商品選定から集客、デザイン、ユーザー対応まですべてを独学で習得するしかなかったのです。どうすれば売上が上がるのか、悩む日々を送っていました。
Googleアナリティクスなどの分析ツールはありましたが、膨大な数値の羅列にどう向き合えばよいのか最適解を見出せず、今思えば当てずっぽうな施策を実施して、その結果全く売上に繋がらない日々。また、当時はSEOやメルマガが主な集客方法だったため、何から手をつければ良いのかを考えるだけで1日が終わるということも日常茶飯事でした。
それでもがむしゃらに試行錯誤を重ねた結果、ECサイトの売上を月商100万円程度から最高500万円まで成長させることができました。
私はこの経験からECに大きな可能性を見出しました。そしてこのEC業界でプロフェッショナルになろうという堅い決意のもと、2013年にECコンサルティング領域のトップ企業であった株式会社いつもに参画しました。

クライアントごとに最適な売上拡大の方法を構築し、事業の成長だけでなく、クライアント企業満足度を上げることも信条としました。そのような想いで年商1,000万円から200億円を超える、累計200以上のナショナルブランドのコンサルティングをこれまで手掛けてきたのですが、その過程で、業務を通じてヒトの心理や行動パターンに共通項があることに気付いたのです。

そこで、すべてのアクセス分析を「ヒトの購買行動」として言語化し、『売れている商品』と『売れていない商品』の違いを徹底的に分析・ルール化してきました。そして、ある答えにたどり着きました。それは『売れている商品』と『売れていない商品』の違い、それは「ブランドスイッチを誘発する力が大きいか小さいか」であるということです。

売れているブランドは、このブランドスイッチが起きる仕組み・仕掛けができているがゆえに、必然的に売れている状況が作れていると言っても過言ではありません。そして多くのブランドは、他社ブランドからのブランドスイッチをいかに起こすかに躍起になっているのが今日のマーケティングの現状です。今後日本は人口の減少ともに、よりこのブランドスイッチ戦争という顧客の獲得合戦が激化していくことは必然といえます。

あなたが、自分のブランドをより多くのお客様に売りたいのであれば、どうしたら他社ブランドからスイッチさせることができるのか、また、どうすれば他社へのブランドスイッチを防げるのかを知る必要があります。
「ブランドスイッチ」という言葉に馴染みがない方もいると思いますが、マーケティング業界では、よく使われている言葉です。マーケティングに関する本は、毎日のように誕生している一方で、「ブランドスイッチ」に特化した書籍は現時点で私が知る限りでは見当たらず、クライアントからの『どの本が一番参考になるのか?』という質問の回答には毎度、非常に頭を悩ませていました。

これだけは断言できますが、この世の中にあるマーケティング関係の本で、たった1 冊を読めば“売れるブランドになるための方法” を学べる本は、存在しません。私自身も、マーケティング・心理学・行動経済学・コピーライティング・デザイン関連の本を100冊以上読んできましたが、これらの内容が1 冊にまとまった書籍に出会ったことはありません。
網羅されていそうな書籍はどれも“マーケティングの全貌を網羅することを目的としていること” が大半であったと思います。

そこで“ 売れるブランドになるための方法” を、ブランディングと消費者心理の観点でルール化することに、私自身非常に時間と労力を費やしました。
そしてよく問われる『どの本が一番参考になるのか?』への答えとして、自分自身で書籍を書くことが、最もクライアントや他のマーケッターのためになる回答になるのではないかという想いから、本書を執筆する運びとなりました。

本書では、私が実際にマーケティングの現場で蓄積した実例データをもとに『ブランドスイッチの法則』を解説し、売れるブランドになるための消費者理解とブランドが今後何をすれば良いのかを解説していきます。
また、本書の特徴として、時代の流れとともに陳腐化する情報やテクニックをできるだけ排除し、今後5年・10年と活用できる内容で構成していることも、ここで強調しておきます。
『売れているブランド』と『売れていないブランド』は何が違うのか?
この問いに対する答えが、現時点ではぼんやりとした解像度であったしても、本書を読み終える頃には、格段と解像度が上がっていることでしょう。この解像度が上がれば、あなたのブランドも今以上に大きく繁栄する可能性が広がります。

本書は、ECコンサルティング企業であるいつも.の中で関わってきた私のコンサルティング実戦経験に基づいて書かれていますが、数えきれない書籍や文献に目を通して得た論理的知見も加味しています。
この書籍が皆さんの業務の一助となることを心から願っています。

2024年1月 田中 宏樹