いけばなとフラワーアレンジメントは何が違うの?

「いけばなとフラワーアレンジメントは何が違いますか?」というのは、よく聞かれる質問なので、ふとした機会にいろいろ考えています。どちらも花を使って作品をつくるという意味では同じものです。(前衛的な作品だと全く花を使わないものとかもありますが)

フラワーアレンジメントに関しては、最近我流で作って人にあげたりしているぐらいなので、それ自体を語る資格はないです。でも、いけばなとは何かを考える中で、違いについて自分なりにまとまってきたので、ちょっと書いてみたいと思います。

① フラワーアレンジメント(以降アレンジ)は作品が重要、いけばなは過程が重要

アレンジといけばなの最大の物理的な違いは、アレンジは作った後に持ち運べる、いけばなは持ち運べない、ということです。もちろんアレンジも作品の大きさや作り方によっては持ち運べないものもありますが、器にオアシスと言われるスポンジを敷き詰め水をしみ込ませそこに花をいれていく、もしくはブーケにするので、作ったらそのまま持って帰れます。

なので、アレンジの場合、贈り物にすることもできるし、作ったものを「どこに飾ろうかな」と意識して作りますので、自然と気持ちは作品そのものに向かいます。さらには「贈ったら喜ばれるかな」「これを置いたらテーブルが華やぐかな」と、外に向かっていく感じがあります。

一方、いけばなは、剣山かこみといわれる枝を花器にいれ、さらに水をたっぷり花器に張った状態でいけますので、出来上がったらせいぜい動かせて数メートル。移動する場合は、一度解体し、花だけを持って動き、移動先で花器を置き、剣山をいれ、水を張って、再度いけ直します。

つまり、いけばなでは作った作品はその場限りのもの。誰かにあげることもできません。そのため、もちろん作品がどうなるかは重要ではありますが、それよりもいける過程、その時間そのものを丁寧に慈しむ、というところが強いように思います。また、誰かにあげる、というよりは、自分と花の一対一の関係の中でいけていくので、気持ちが心の中に向かっていく、そんなところがあります。

② アレンジは空間をうめていく、いけばなは空間をいかす

いけばなをずっとやった上で、アレンジを時々やってみると、空間把握の仕方の違いを強く感じます。アレンジだと、空間を花でうめていく、いけばなは花によって空間をいかす、という違いがあるのではないかと思います。

まず、前述の道具の違い。アレンジはスポンジに花を指していくため、とにかく花をいれてスポンジを見えないようにします。いけばなでも、剣山はなるべく見えないようにいけていきますが、それはぱっと見た時に剣山が目立たないようにする、という程度で、花で剣山をうめるというよりは、花の角度や長さで調整していきます。

そしてそもそもの空間の捉え方の違い。「一つひとつの花をいかす」ことを意識するいけばなにおいては、花や枝の間に作られる空間は、むしろ花をいかすもの、と捉えます。そこに空間があるほうが花がいきるのか、その空間だと単なる穴になってしまうのか。そんなことを身体で捉えながら、いけていきます。空間も含めて作品だと言ってもいいかもしれません。

一方、アレンジだと、空間はうめるべきもの、という感覚になります。塗り絵に感覚が近いかも。花と花の間もなるべくあけず、重ねていれることでむしろ高低差や奥行きが出て美しく見えることもあります。

③ アレンジは特別なおもてなし、いけばなは日常

空間をうめるアレンジは、物理的に花がたくさん必要になります。なので、小さめのアレンジでも、普通に花屋さんで花を買って作ろうとすると少なくとも3,000円分ぐらいの花が必要になります。かつ贈り物やテーブルを飾る、という状況を考えると、華やかなほうが喜ばれる。あとオアシスはいれる容器にあわせてカットしたりと調整が必要で、セットもなかなか大変です。

一方、いけばなは、枝物や葉物を使い、かつ空間をいかすものなので、比較的大きく見える作品でもそれほど花材を必要としません。大きめの枝、メインの花、サブの花、葉物という4つの組み合わせが標準ですが、1,500円ぐらいで大体おさまります。かつ花器と剣山があれば、水を入れてすぐにセット完了。なので、ちょっと仕事に帰りに花屋で花を買って、家でぱっといける、という日常的な行為になりやすいです。

あと、花によってだめになるスピードが違う中、いけばなだと剣山なのですぐにいけ直したりできますが、アレンジのオアシスは一度いれると穴ができて使えなくなってしまって、いけなおしも難しい。

ということで、値段的にも手軽さ的にもあと道具的にも、アレンジはちょっと特別な時用、いけばなはより日常の中のもの、という感じがあります。

改めてまとめを再掲。
① フラワーアレンジメント(以降アレンジ)は作品が重要、いけばなは過程が重要
② アレンジは空間をうめていく、いけばなは空間をいかす
③ アレンジは特別なおもてなし、いけばなは日常

以下は、両方とも新年のお花をいけたものです。
上がアレンジ、下がいけばな。使っている花の量がアレンジはいけばなの10倍ぐらい。


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