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朝の色相環

 朝日が青色を解く絵の具になって余りの光降り注ぐ今日、トーストの焼けるのをただじっと待つ。オリーブオイルも減らぬ日常。あの角を曲がれば君とぶつかって、抱きとめたのは夢であったし。
 携帯のアラームが後に起きてきて、なんだか損したような気になる。
 コーヒーはインスタントで別にいい。沸ききらない湯、溶けきらない粉。毎日は“別にこれでいい”の連続で、でも偏屈なこだわりもある。朝は憂鬱と希望の紙一重。人はどちらも併せ持ってる。
 三文じゃ物思い耽る暇買えず、慌てて鞄を肩から提げる。

「遅刻ギリギリは遅刻では無いから。」
 と、何度自分に言い聞かせたか。僕の生まれた星の元は隕石で、後先わからなくなってしまった。
 情けない卑屈なユーモア携えて、すっかり白けた外の世界へ。生活と憧憬、倫理と衝動の狭間で僕はアクセルを踏む。


以上は全て12首の短歌より構成される文章である。
以下はその元となった短歌12首の改行・句読点を復元したもの。


朝日が青色を解く絵の具になって
余りの光降り注ぐ今日

トーストの焼けるのをただじっと待つ
オリーブオイルも減らぬ日常

あの角を曲がれば君とぶつかって抱きとめたのは
夢であったし


携帯のアラームが後に起きてきて
なんだか損したような気になる


コーヒーはインスタントで別にいい
沸ききらない湯 溶けきらない粉


毎日は“別にこれでいい”の連続で
でも偏屈なこだわりもある


朝は憂鬱と希望の紙一重
人はどちらも併せ持ってる


三文じゃ物思い耽る暇買えず
慌てて鞄を肩から提げる

「遅刻ギリギリは遅刻では無いから。」と
何度自分に言い聞かせたか


僕の生まれた星の元は隕石で
後先わからなくなってしまった


情けない卑屈なユーモア携えて
すっかり白けた外の世界へ


生活と憧憬 倫理と衝動の狭間で
僕はアクセルを踏む



 早く起きすぎた朝の憂鬱を短歌にしていたら、次から次へ連鎖していった。朝無理すぎる。嫌いとかじゃなく、ちょっと無理だよなァ。
 妙に小気味よい文章のからくりを探るべく、試しに無理やり全て短歌のリズムにはめたら、普通に気味悪い文章になってしまった。それはそれでなんだかんだちょっと良い。
 最初だけ先に独立した歌として書き、あとは連歌的に、連想的に書いていったという感じだ。これを上手く纏められるようになるのであれば、文章のトレーニングとしていいかも。

暇なのかな、私って……。

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