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【戦術レビュー】ゴールから見る改善進捗 - AFC Champions League GS 第6節 山東泰山 vs 浦和レッズ

この記事でわかること

  • 絶やさなかった深さを取るアクション

  • 理想的なゴールの形

  • 江坂がいないサイドをどうするか

  • 最適化より出場機会

浦和レッズサポーター間での議論活性化を目標に戦術を解説するマッチレビュー。今回はACL第6節、山東泰山戦です。

グループ突破も決まっており、これまで出場が少なかった選手に出場機会が与えられました。

その中でも5−0の快勝。

特に裏へのアクションが増えていて、理想的な形のゴールもあったので、浦和のACLを通しての改善も含めて振り返っていきます。

深さを取るアクションで理想のゴール

グループステージ、ほとんどの試合で5-4-1を相手にしたわけですが、今節の山東も同様でした。

大邱との1戦目ではコンパクトに圧縮された陣形の穴を探しきれなかった浦和ですが、大邱との2戦目、第4節以降から改善している裏へのアクションが今節も見られたと思います。

トップに松尾が入っており、裏へのアクションが第一の選択肢になっていたことも良い作用を起こしていたかもしれません。

ボール保持者がオープンに持ったら、相手最終ラインの裏へアクションを取る選手が必ず1人はいる、という意識が垣間見えました。

チームとして、絶えず裏を狙う役割を誰かが担っている状況を作れていたと思います。

相手の押し下げを行えると手前も使いやすくなります。

裏に抜けた選手が戻っきたら別の選手と役割を交代するなど、ポジションのローテーションもよく出せていました。

チャンスは江坂がいるサイドから

前半は特に、右サイドからチャンスが多く生まれました。

宮本と松崎に加えて江坂が+1として関わっていましたし、一歩後ろには岩尾もいたので、関われる人数も十分で、出てくるボールの質も含めて攻撃がしやすいサイドでした。

1得点目は、安居が攻→守の切り替え守備で奪った流れからミドルシュートを決めました。

この切り替え守備が発生したボールロストも、相手を押し込んだ後にしっかり裏を狙って押し下げた後に発生したもので、前向きな守備が行いやすい状況を作れていました。

手前と奥の選択肢を常に持ち、相手に後ろ向きの守備を強要させることで、ボールロスト時の形勢を良くすることができていました。

理想的な3点目

また、3得点目はその良さが最も出たゴールでした。

左サイドに流れた松尾に対して前に出た山東のWB。その裏で大久保が受けたところから始まっていて、ここで相手を下げて左に寄せたので、その後の右への展開に繋がっています。

5-4の4の横で岩尾が持った際に宮本が裏へのランニングをしていますし、江坂とスイッチングした際には岩尾と松崎が裏へのアクションを見せています。

こういったポジションのローテーションから再び岩尾がボールを持つと、裏に抜けた江坂にパスが通って、マイナスのクロスで松尾がフィニッシュ。

これはリカルドのチームにおいて、理想的な形のひとつだと思います。いわゆる"ポケット"を取って折り返す攻撃です。

ポケットを取ってマイナスクロス→シュートへの対応は、相手DFにとってはゴール前へ戻った逆をつかれる形ですし、相手GKにとっては、シュートに対応する時間を確保する余地がほとんどありません。

浦和に限らず、世界中を見ても、ポジショナルプレーを標榜するチームはこの攻撃の流れを大きな狙いとして持っています。

ちなみに、リカルドのチームで順足のサイドプレイヤーが起用されやすいのもこれが関連していると思います。

このポケット取りを実現するための、裏へのアクションが続いていたのは改善してきている部分でしょう。

特に第3節、大邱との1戦目と比べたら差は歴然です。

ハーフスペース職人がいない左

一方の左サイドは、少し人数が足りなそうかなという印象でした。

ACL序盤でも言及しましたが、相手の背後に5枚+1枚は置けていても、+1がいないサイドは不足する場合があります。

特に5バックの相手に対しては、相手のWBを引き出すために手前に1人使うことがあるので、片方のサイドで人が少なくなりがちです。

江坂がいないサイド

そしてそれは、トップ下に入ったハーフレーンが得意な選手がいないサイドで起こりやすく、この試合では江坂のいない左サイドでした。

基本的には明本と大久保のコンビで、前に出てきた相手の裏を取るところまではいくのですが、その次が続かない場面もあったと思います。

トップに入った松尾は元々左サイドが本職なので、流れてくることもありましたが、そうするとゴール前に誰が入るの?という部分がありました。

こういったギャップを埋めようにも、例えば岩尾と安居は相手の背後やゴール前まで積極的に入っていくタイプではないです。

本来はミスマッチな知念の位置

また、相手1トップの周囲には少し人数が多かったかなと思います。1トップ脇で知念と岩尾が重なっている場面が何度かあったのは気になりました。

ただ、左利きの知念が右サイドでプレーしており、体の向き・利き足的に対角のパスを刺しにくく、どうしてもパスを出す先が同サイドに限定されがちな点はありました。

ですので、この場所では岩尾が持っていた方が選択肢が増えるのもまた事実です。

その中でも、知念の前にスペースがあるときは、運ぶドリブルもできていたので良かったです。

最適化より出場機会

このあたりの機能不足は、選手の組み合わせの最適化が優先されていなかったことが原因だと思います。

本来であれば、左利きCBを同時起用しつつ、そのうちの一人が右サイドの脇から運ぶような役割分担はしないでしょう。

グループ突破が決まっている状況なので、出場機会確保を優先した結果だと推測します。

得意分野の組み合わせや、役割の分担を意識したというよりは、特定の複数人に出場機会を与えることを優先したということですね。

工藤のポテンシャル

その同時起用された工藤ですが、昨年に比べて少し体が大きくなった印象でした。

また、ボール保持時の姿勢がとても良いです。

ルックアップしながらボールを運んでいけることは、現代サッカーのCBにとって重要なファクターです。

運ぶことで、前方の相手や越えていく相手に影響を与えつつ、自身は最後まで選択肢を確保できるので、ビルドアップへの大きな貢献が期待できます。

また、左利きのCBは、それだけで価値があります。

具体的なシーンで例を挙げると、66:30に縦パスを刺したシーンはポテンシャルを感じました。

知念からパスを受けて、相手をぎりぎりまで引きつけながら、奥と手前の選択肢を残しながらのパスで、味方と相手のアクションを最後まで見て選択したプレーでした。

ポジション的に、守備面の強度不足や安定感を欠く可能性を許容することができないので、リーグ戦での出場はまだ難しいと思いますが、将来が楽しみな選手です。

後半には木原や牲川のデビューもありました。木原は常に裏を狙い続けるようなストライカーな感じでしょうか。

試合終盤にはスコールも発生。何が起きてもおかしくない環境になったので、それまでに試合を決めておいて良かったです。

後半も順調に得点を重ねた浦和は、大勝でACL連戦を終えました。

まとめ - 第二次キャンプ

グループ突破を決めたことは結果として立派ですが、それ以上にキャンプのように使えたら良いなという側面もありました。

実際、6試合を行なっていく中で改善は見られたかなとは思っています。

リーグ戦では相手のMF背後にスムーズに人を残せていないことや、相手のファーストラインを超えた後のスピードアップ、深さを作るための背後へのアクションが課題として挙がっていました。

5+1と奥

今回の連戦では、引き気味の5-4-1に対する試合が多くなったので、相手を引き出して超えた後のスピードアップ、という点ではあまり見せ場はありませんでした。

一方で、背後に人を残すことや、アクションを起こすことは少しずつ改善はしたかなという印象です。

第2節までは力の差があったと思いますが、相手のMF背後に5枚以上配置しているからこそ、大外の幅とハーフスペースを有効活用するシーンが見せられました。

ただ前述の通り、5バックの相手に対して、トップ下に入る選手がいない方のサイドで人数不足が起こる場合もあり、その点はもう少し整理が必要かもしれません。

第4節の大邱戦以降は特に、5+1枚を置けていることも増えてきているので、リーグ戦でも見せたいところ。

手前を使うための深さ作り

深さを作るためのアクションについては、第3節の大邱戦で課題として浮き彫りになりました。

事前の分析が外れた困惑もありましたが、縦にコンパクトな相手に対して、押し下げるようなアクションをあまり取れず、相手が作っている狭いエリアを真っ向からこじ開けようとする格好になってしまいました。

第4節ではその反省を活かしたであろう動きが見えましたし、以降の試合でも、基本的には相手の裏を取るアクションが見られたので、課題として挙がりながらも、改善していけたのは良かったです。

J1で成果を見せられるか

1週間後、柏戦でリーグが再開。J1では強度の高いプレッシングができるチームも数多くあります。

ここまで徐々に改善してきた部分もある浦和ですが、それをJ1の強度の中で出していけるか。

出していかないと、ACL前同様に選手個人の決定力が問われるフェーズまで到達すること自体、増えません。

現在試合数が全チーム10で並び、13位。首位と12pt差、ACL圏内とは8pt差と、まだまだ諦める勝ち点差ではありません。

連勝していくことや、上位陣相手に勝たなければいけないことは確かですが、巻き返しを図っていきたいところです。

中2日6連戦と時間がない中、毎回レビューを読んでいただきありがとうございました。

5/1(日)19:00〜 YouTubeで4月の振り返り配信も行うのでぜひご参加ください!







スコールの中、大勝でACLグループステージを締めくくった今節。レビューを読んでの感想や意見はぜひ下記Twitterの引用ツイートでシェアしてください!


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