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エッセイ|一家相伝の子守唄

幼い頃、祖母と母がよく歌ってくれていた子守唄がある。

 笹舟小舟 緑の帆かけてどこへ行く
 スイスゼネバの水汲みに
 ぎっこぎっこ ぎっこっこ

歌詞の冒頭から「笹舟小舟」と呼んでいたこの歌を、私も息子を抱きながら口ずさんでいたわけなのだが、歌いながら思ったのだ。


スイスゼネバって、なんだ……??
スイスのどこかか……??
……遠くない??
笹舟で……スイスまで行くのか……??


疑問に思った私は、インターネットで調べてみた。
すると、どうやら「スイスゼネバ」はスイスのジュネーブのことらしい。


ほおほお。
1番でジュネーブまで行って、その後はどうなるんだろう?


残念ながら、祖母も母も1番を繰り返し歌っていたので、この歌の続きを知らない。
どんな歌詞が続くのかと調べてみると、驚くべき事実に行き当たってしまった。


この歌、検索にヒットしないのである。


どう検索しても、歌詞が出てこない。
それどころか、類似する歌すら出てこない。


え? どういうこと……??
これって、我が家だけに伝わる歌なの……??


まさかの創作童謡だったのかと、困惑しながら母に事情を説明すると、母もネットで調べて「ないんだ……」と驚いていた。



結局、この歌のルーツはわからないまま。
尋ねようにも、祖母も祖母にこの曲を教えた曽祖母も故人となっていて、訊きようがない。

一般的な童謡ではないと知ったときは、それこそ動揺したけれど、4世代に渡って受け継がれてきた歌が絶えることのないように、今日もこの歌で息子をあやしている。


#エッセイ #子守唄 #童謡

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