見出し画像

ちょっとしたテーマパークみたいなお菓子屋さん

でっかい湖以外にはアイデンティティもプライドもない、悲しき民族・淡海人あみんちゅとして私は生まれた。今度あなたの地元に行くんだけど、おすすめスポットある?と聞かれると私は、琵琶湖、彦根城、あとはなんだろう、メタセコイア並木とか?なんて適当なことを抜かしがちである。

そんな我が故郷にもちょっと自慢したくなる場所ができたのは、つい最近のこと。そこはお菓子屋さん、ところがどっこいただのお菓子屋さんではないのである。

GWの帰省中、私は父と母と3人でそこを訪れた。
場所は近江八幡市、垣根を越えると現れたのは、縄文時代の竪穴式住居を彷彿とさせる奇妙な建物。

一面に広がる草原の小道を辿り、いざ建物内に入ると出迎えてくれたのは、数々の洋菓子和菓子たちだ。ふわりと漂うのは、バウムクーヘンのやさしい卵の香り。

そう、ここは関西人なら知る人も多いはず、滋賀の老舗お菓子屋さん「たねや」と「クラブハリエ」の施設、「ラ コリーナ近江八幡」である。「ラ コリーナ」とは、イタリア語で丘という意味だそう。

ショップとカフェ、そしてフォトスポットに溢れる広々としたエリアがここの魅力だ。まるでちょっとしたテーマパークみたい。以前大学の頃に来たことがあるのだけれど、その頃からさらにリニューアルされていた(し、どうやら今後もまだまだパワーアップしていくらしい)。

エリア内マップ。
推しポイントは「ラ コリーナのへそ」

GWとはいえ平日だったので人は少なく、ゆったりと写真を撮りながら歩く。小腹が空いてやってきたのは、できたてミニバウムクーヘンが食べられるカフェだ。私と母はコーヒー、父は紅茶のセットを頼んだ。選んだ席は店内をぐるりと見渡せる半円卓。このカフェの席は充実していて、室内はもちろん外のテラスでもくつろぐことができる。

美しい円を描いたバウムクーヘンはころりと小さく、愛おしさすら感じる。これはできたてのうちに食べなければ!

早速フォークを突き立てると、やわらかな弾力がフォークを通して指先を包む。そしてすかさず口に含むと、しゅお、と吸い込まれてゆくような歯ごたえ。これは他のバウムクーヘンでは味わえない。なにせできたてなのだ、できたてに勝るものなどあるはずがない。どうやら相当顔に出ていたらしく、まうちゃんは美味しそうに食べるねえ、と両親に勝手にほっこりされるなどした。

このバウムクーヘンの特徴は、周りがしゃりしゃりの砂糖でコーティングされているところだ。やわらかなバウムクーヘンの生地との食感の違いが楽しい。酸味の強いコーヒーは、甘いバウムクーヘンによく合う。あと3つはいける、なんて言いながら小さなバウムクーヘンはあっという間に姿を消し、ふんわりとした淡い余韻だけが私たちの間に漂っていた。

こんなに美味しいものを食べてしまったら、お裾分けせずにはいられない。という顧客心理を見事掴まれ、私たちはカフェのすぐ下にあるショップに直行したのだった。恋人と自分の分、それから恋人の実家へのお土産を見繕う。


それにしても、施設内に点在するショップはどこも魅力に溢れている。私のお気に入りは飛び出し坊やに誘われた先の、倉庫風エリアだ。

とび太くんは滋賀の名産。彼を目にしない道などない。

旧車や古いバイクなどが所狭しと並べられ、ビンテージな雰囲気がたまらない。こちらもショップになっていて、さっきバウムクーヘンを買ったばかりなのに、ラ コリーナ限定パッケージだなんて言われてしまったらリーフパイまで欲しくなる。(リーフパイもリーズナブルで美味しいのでおすすめ)

外でも焼きたてミニバウムクーヘンを食べることができる。


気がつけば、お腹も心もカメラロールもいっぱいになっていた。甘い香りに引き寄せられたかと思えば、ちょっとした遊び心に惹かれてあちこちにカメラを向けてしまう。美味しくて、その上楽しい。何度も言うけれど、これが田舎のお菓子屋さんなのだ。

フォトスポットが多いのでもちろん若者人気は高いのだけれど、若い人の姿は目立つほどじゃない。この日も老若男女いろんなお客さんが訪れていた。それはきっと、「たねや」も「クラブハリエ」も長く地元に愛されてきたお店だから。

しかもラ コリーナに来ると、その人気に胡坐をかかず、より愛されようとする企業努力が伝わってくる。だから私も、より愛そうと思える。何よりお菓子がみんな美味しいのだ。一人でも多くの人に訪れてほしい、私の自慢の地元スポットである。

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

一度は行きたいあの場所

ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。