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皐月まう
2023年7月10日 20:10
みんなそうだ、みんなそう。「こんなに自分のことを受け入れてくれる人はいなかった」って、みんな言う。孵ったばかりの雛が最初に目にした相手じゃないんだから、と思う。その証拠に、彼らはそのうち私が特別な存在でもなんでもないことに気づき、親鳥のようになんでも許してくれる私に甘え、つけ上がり、そして跡を濁さず消えていく。彼女も、その中の一人だった。 彼女が亡くなったと知らされた夜、私は一人ベッドの上で
2023年7月11日 20:12
▷第1話はこちら▼全5話をまとめたマガジンです。(完結) 私たちが落ち合ったのも、梅田の駅だった。平日の昼間だというのに電車のホームから人でごった返していて、私はとてもあの男を見つけられる気がしなかった。もちろん具体的な待ち合わせ場所を決めてはいたものの、なにしろ私は男の電話越しの声しか知らないのだ。 阪急にある本屋の前で手持ち無沙汰にしていると、不意に肩に何かが触れてびくりと震える。見
2023年7月12日 20:11
▷第1話はこちら▼全5話をまとめたマガジンです。(完結) 夜の繁華街は雑然としている。2週間ぶりに大阪へやってきたけれど、繁華街は特別ごみごみしていて息がしづらい。女一人で歩いていると簡単にキャッチに足止めをくらい、撒くのに時間がかかってしまう。適当な男をナンパして、隣を歩かせようかと考える。あるいは、今から会う男をこちらに呼び寄せるか。しかしここまで大きな街となると一人で歩いていようが二
2023年7月13日 20:15
▷第1話はこちら▼全5話をまとめたマガジンです。(完結) 彼女の実家は、琵琶湖の畔にあった。琵琶湖を見たことがない私たちは、せっかくだからと彼女の実家を訪問する前に湖岸へとやってきた。「すごい、ほんとに向こう岸が見えない」 それに海の匂いもしないんだ、とつぶやくと、「さすが、海辺生まれにはわかるんだ」と濱谷さんが笑う。「だって海だったら、こんなに近いと潮くさくてたまらないですもん」
2023年7月14日 20:08
▷第1話はこちら▼全5話をまとめたマガジンです。(完結) ちっとも眠れる気がしない。さっきから何度も寝返りを打っているが、身体の疼きが収まりそうにない。いつもならベッドの上で、スコくんと互いを慰めあっている時間だ。スコくんの声が恋しい、だけど今日は話すことができない。 今夜のホテルでは、ツインの部屋を一つしか取れなかった。どうやらホテル側の手違いだったらしい。受付のおばさんからはしきりに