Treponema pallidum

Treponema pallidum(梅毒トレポネーマ)。

スピロヘータ科のトレポネーマ属。

細菌です。

スピロヘータっつーのも中々にヤバい子でございまして、梅毒のほかに回帰熱やライム病などなかなかな病気を引き起こす恐ろしい子。

細菌なので抗生物質が使えるっちゃ使えますが、飲み薬ではペニシリン系やテトラサイクリン系を使います。

梅毒は、感染してから約3週間ほど経たないと抗体検査でも陽性が出ませんが、陰部にしこりなどが出来始めるので心当たりがある場合は問題の性交渉日から3週間ほど待っての検査をお勧めします。

コンドームしたら性交渉できるかと聞かれることがありましたが、お勧めしません。陰茎以外でも感染するときはします。例えばコンドームを装着する前に口でするなども危ない。逆もしかりです。

この梅毒、ほんとに増えてきてるなぁと肌感ですが思います。

陰部にしこり。この相談少なくはないんですよね。

今年の前半の話ですが、ついに知人からピロン、と「これ何に使うの?」の写メLINE。

友達から薬の相談をされることは普通にありますので何気なく見たら違和感です。アモキシシリン(AMPC)とミノサイクリン(MINO)。

え、これは誰の薬?とまず聞きますよね。そしたら知人のご主人のものだと言うのです。彼女のご主人は浮気性で、昔からその話は笑い話として話すので知ってはいました、ンが。

言う?言わない?と考えます。薬剤師は確かに使用薬剤やその組み合わせから病名を推測する部分ではプロではあります。

でもなー。決めつけても、ねぇ?私がまだまだ不勉強なだけかもしんないし。

「どんな症状でこれ飲んではるん?」

「お尻にオデキができたって。仕事でできたイボみたいなもんだって。それ以上聞いたら逆切れするし何の種類のオデキに使うどんな薬なんかなと思って」

おおおおおおおおおぅいぃぃぃぃぃぃぃ!まじかぁぁ😱

O・DE・KI。

久々に聞いたわ。これ大阪弁?大丈夫ですか?オデキ。

梅毒初期症状の写真をスクショして送ってみた。

「あ、こんなかんじ」

ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ😭ケツちゃうやん、モロやん。(やめなさい

どうする?言う?


・・・・・言う。

いや、だって、もう遅いかもしんないけど性交渉するでしょ旦那さんと。

「梅毒かなぁ・・・・・」

って返すと

「やっぱり。性病だと思った」

あれ。案外冷静。聞くとここ数年は全くそういうことは無いのだそうで、不幸中の幸いと言っていいのかなぁではありますが、遂に知人まで迫って来たかぁ・・・と愕然としました。

今までは店頭で相談客が来て、たいていは傷薬を求めるんですよね。

で、「これ・・・アソコにも使えます?」とか言いづらそうに(一応ワイ、女性なんで)聞くんです。これ、ほんと「聞いてくれてありがとうぅぅぅぅぅ!」ですよ。当然あっさり深堀りしますですよ。こんな話は相手に性別を意識させたらアウトなので。「今日ナニ食べた?」のテンションで話が進むよう配慮しながら伺っていきます。淡々と、でも親身に。

男性の場合も女性の場合も該当するかもしれないと判断したときは一応、近隣の泌尿器専門クリニックに行くよう伝えますが、彼らはどうなったかなぁ。何事も無ければいいんだけどなぁ。

薬局薬剤師は「その後」を知ることは数少ないですから。

梅毒は性病の中でも非常に厄介なものの一つです。

全ての性病は厄介なんですが、治療も時間がかかりますし(内服だと最長10か月弱だったかな)点滴だと2週間ほど毎日です。仕事どころではありません。梅毒の治療は本当に大変です。

あ、因みに放置したら全身真っ黒になりますから気を付けてくださいね。黒くなるには何年もかかるけど。そのくらい静かに蝕んでいくということなんですよね。

今年、新しいお薬が密かに承認されました。

めちゃくちゃぺんぎん薬剤師先生の解説ブログを楽しみにしてるんですが、

ステルイズ水性懸濁筋注シリンジ。

緊急避妊薬然り、経口中絶薬然り、中々医師会も薬剤師の職能を認めようとはしないけれど、少なくとも患者さんには罪は無いわけで、薬剤師がそこに患者さんたちを正しく導ける知識と経験は今後も積んでいかないといけないなぁと感じます。

店頭で「あれ?」と思えるように、患者さんが忌憚なく話ができる空気を作りきちんと治療に向かわせて差し上げられるように。何事もなければそれが一番良いのですから。

今年も残りわずかですが休み明け1月中盤~末辺り、注意ですよ。


ではでは。