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雨の日を待ちわびているなんて、きっと私とあの街と

いつのまにか降り始めた雨のにおいをかいで、ひどく安心した。

まさか梅雨を忘れてしまったかのような夏のような日々が続いたが、雨の季節が、きちんとやってきたのだ。


安心すると同時に、不安にも襲われる。

2、3週間もすれば、このうつくしい雨たちは行ってしまう。たまらなくなって、ひとりの友人にメッセージを送った。遠い海の向こうは夜だ。Good evening, How was your day?と添えて。

「日本では雨の日々が始まりました。シアトルが恋しいよ。」

「そう。こっちは雨ばかりでやになるけどね?シアトルで待ってるね。」彼は言った。


幾度となく書いているが、私は、雨とコーヒーの街、シアトルと恋に落ちている。
特筆するような絶景があるわけでもなく(いや、私的にはときめきポイントがいくつもあるのだが)旅人が目指し集まるような場所でもないが、好きにならずにはいられなかった。

そこに住む人たちは静かに降る雨のように穏やかで、かしこい。街を取り囲む大きな山々のおかげか、自然を愛している。


彼らは、雨の街ということを、ときどき自虐的に、ジョークとして使う。
私も最大で2週間ほど滞在していたことがあるが、驚くほど雨の日が続くのだ。
空港のおみやげやさんには、大きな傘が覆うシアトルの街を模したマグネットが売っている。

でもそれをどこか自慢げに思っている気がするのは、私だけだろうか。

自分たちは、雨のうつくしさをよく知っていると。


濡れたコンクリートは光をよく映すし、雨に起こされた木々は甘やかな香りをはなつ。

さんぽにも出られない大きな図体を持て余した犬を撫でてやることも、デリバリーのピザを食べながら映画を見る夜もやってくる、雨の街。

スターバックス発祥の地となり、コーヒーカルチャーが繁栄したのもきっと、雨の日をやさしく過ごすためなのではないだろうか。

晴れているシアトルも好きだが、雨が降っていてこそシアトルはシアトル然と、美しく穏やかな街として完成する。雨を待ちわびている。


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シアトルカテゴリーが一番充実していて、愛が溢れてます。大好きなコーヒーショップをたくさんご紹介しているので、読んでもらえたら嬉しいです☕️
AyakAmerica

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