見出し画像

オイカワ釣り

オイカワという魚はどこの河川にも生息する魚で、釣り師にはハエとかヤマベとも言われる、15cm程度の小魚である。
昭和の終わりのことだが、家の近くの川にはオイカワとフナが生息していた。小学5年で釣りを始めたばかりの頃はオイカワもフナも釣れなかったが、ある日を境に釣れるようになった。ある日とは9月の小雨の土曜日だった。近所の川で工事をしているところがあって、そこで釣りをしていたらオイカワが釣れた。翌日も同じ場所で釣りをしたら、オイカワ、フナ、ツチフキ、ナマズが釣れた。
釣りをやっていると、この日を境に釣れるようになった、ということがある。ボウズが当たり前だったのが、数匹は釣れるのが当たり前となるときだ。私にとっては小学5年9月小雨の土曜日と翌日が釣れるきっかけとなる日だった。30年以上前のことでも印象に残る釣りは忘れないものだ。

翌年にはアンマ釣りを試してみた。アンマ釣りとは竿と糸と針だけの仕掛けで、竿を水中に突っ込み、前後させると、オイカワが竿を引いたときに掛かる釣り方だ。餌は米粒でも釣れたが、川虫の喰いが抜群だった。浮き釣りではなかなか釣れなかったオイカワが容易く釣れたが、小型が多い気がした。また、単調で飽きやすい釣りであった。
しかし、アンマ釣りを通してオイカワが浅瀬にも生息する魚であることを実感できた。当時はオイカワもフナと同様に浅瀬よりトロ場にいると思っていたのだ。

平成初期に中学生になってから、ヘラブナとブラックバスに夢中になり、オイカワ釣りは忘れていた。当時は大変なブラックバスブームだったのだ。
大学入学から私は実家を離れた。オイカワ釣りを本格的に再開したのは社会人になってからだ。西野弘章氏の書籍「川釣りの極意」に出会い、何度も読み返した。
釣れたオイカワを触ることなく針から外せる中央に糸を張ったビク。練餌に触ることなく針に練餌がつけられる餌付け器(ハエジャッカー)。高感度の発泡浮きを使用する多段シズ仕掛け。片手で容易に振り込める軽量のハエ竿。このスタイルがかっこよく思え、道具を一通り揃えた。
子供の頃に数匹しか釣れなかったオイカワが入れ掛りで釣れた。特に大型のオスの釣り味は格別であった。釣ったオイカワは場所移動の際にオールリリースだ。
オイカワをヘラブナやヤマメの外道として釣っても面白くはない。竿がオーバーパワーなのだ。しかし軽量のハエ竿で釣るとこの釣りの面白さを実感できる。釣り味でいえば、上位にランクする魚であると思っている。同じ大きさの魚でウグイやカワムツもいるが、釣り味は良くない。かかった瞬間に底に突っ込む釣り味がいいのだ。
オイカワ釣りはある程度やり込んだつもりだが、「川釣りの極意」ほどには釣れなかったし、冬には全く釣れなかった。渓流釣りや鮎釣りを覚えてから、オイカワは晩秋の釣りとなり、やがて、晩秋にもオイカワを釣ることは少なくなった。まして実家の近くの初めてオイカワを釣った川で釣りをすることなどは無くなった。この川は今では水量が減り、細流となってしまったが、オイカワはこの川で子孫を残していることと願いたい。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?