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道路は生活や経済の大動脈

 新年度になり新しいスタートをされた方も多いことと思われます。この時期は新社会人だけではなく小中高の新一年生など初々しい姿を街中で見かける季節です。新社会人や新入生、移動などでこれまでと違う通勤・通学路を利用する人が増えるために普段よりも増して交通事故に気をつけなければならない時期です。私たちが普段利用する道路のネットワークは、律令政府による七道駅路、徳川幕府による五街道、その後の明治・大正・昭和の国道網を経て、昭和 62 年に策定された第四次全国総合開発計画において、約14,000kmの高規格幹線道路網が計画され、現在の私たちの生活や物流等の経済活動を支えています。しかし交通事故や交通渋滞等の課題がいまだ残っていることから、今後も新たな課題や実情を踏まえた様々対策などを施していかなければなりません。また、日本は人口減少時代に突入しており、少子高齢化によって生産年齢人口割合が減少するため、日本の成長力の維持・拡大には、生産性向上や国際競争力の強化が必要不可欠となります。このために、AI・ICTをはじめとした技術革新、女性の社会進出や定年延長など、国民のライフスタイルは大きく変化していくことが予想されます。加えて、激甚化・頻発化する災害への対応が喫緊の課題となっているほか、中枢中核都市等を中心とする地域の自立圏の形成等の新たな国土構造の形成、インバウンド、国際物流の増加、自動運転などにみられる新技術活用等の新たな技術革新といった様々な課題とも向き合っていかなければなりません。このように私たちを取り巻く交通網は目まぐるしく変化が予測される中で先日興味深い研究発表をみかけたので掘り下げていきたいと思います。

中核都市等を核としたブロック都市圏

 「関係人口」「交流人口」という言葉をよく耳にしますが、人や地域の交流・連携は、地域や我が国の活性化に必要不可欠なものです。現在、1時間以内にアクセス可能な「30 万人都市圏」を形成できていない市町村はすでに2割を超え、本格的な人口減少や地方の過疎化が進んでいます。今後さらにそのような地域での交流人口は縮小していくことが懸念されるとともに、コンパクト・プラス・ネットワークの取組によって都市型の施設や行政サービスの集約化が進むことも予想されています。そのため、一定規模の都市を核としたブロック都市圏同士を道路ネットワークで結ぶことにより、ブロック都市圏同士の交流・連携を促進する必要があります。これららのブロック都市圏については、中枢中核都市、連携中枢都市圏、定住自立圏等を踏まえるとともに、物理的な都市間の距離だけでなく、都市同士が経済・生活圏として密接な関連性があるか考慮しながら、一つのブロック都市圏として整理する必要があります。また、公共交通機関が手薄な地方部等、高齢者の移動手段が十分に確保されていない地域もみられるが、更に高齢化社会が進んでいくと、社会全体における地域間の交流・連携の停滞にもつながる懸念があることから、自動運転等のモビリティ技術によって人々の移動を助け、高齢者だけではなく、地域間の交流・連携の維持・拡大への寄与も期待されます。そのためにも、広域道路ネットワークの検討には、新技術の発展を踏まえた上での検討が必要となります。

幹線道路の旅行速度

 ブロック都市圏を結ぶ道路ネットワークにおいて高速道路以外の一般幹線道路の旅行速度を確保する必要があります。旅行速度とは「調査単位区間延長を信号や渋滞等による停止期間を含めた調査単位区間の所要時間で割ったもの」とされています。つまり、移動に要した時間です。私たちが幹線道路を通過する際に信号や沿道への出入りなど様々な要因で速度を一定に保つことができない場合があり、一般道路における旅行速度にはこうした中央帯や沿道の出入りの有無、信号交差点間隔等が影響するとされています。国土交通省の国土技術政策総合研究所が、沿道の出入りに注目して旅行速度に与える影響を分析したところ、幹線道路からの流入より流出の方が走行車両の変化が大きく、交通量が多い場合に遅れ時間が多いこと、また、流出入の箇所数の減少が旅行速度の向上に寄与するという結果が見られました。

おわりに

 上記の研究結果は普段道路を利用していると感覚的に気が付くような内容ですが、こうしてしっかりとデータが出ることによって今後の道路ネットワークや沿道整備に大きな影響を及ぼします。例えば、田中角栄総理が唱えた「日本列島改造論」によって日本国中に道路網が整備された当時、幹線道路周辺の農地は守られることなく開発されたため、沿道の田畑はお店などに姿を変えたことから、日本の農地が最も減少した出来事と言われています。幹線道路の沿道にお店等が存在するのは非常に便利で助かりますが、沿道への流入流出の原因となっていることを考えると旅行速度の低下の要因として考えられます。ブロック都市圏で都市間を結ぶ幹線道路整備においてはアクセス時間の向上のためにも沿道の流入流出を考えた開発や道路整備の必要があるのではないでしょうか。また、激甚化・頻発化する災害に対応する避難道路の整備についても、沿道の流入流出からみる旅行速度への影響を踏まえた整備が必要なのかもしれません。道路ネットワークは生活や社会経済の大動脈、沿道整備を考えることが私たちの生活が大きく変わる要因にもなるのかもしれません。

おまけ

 沿道からの流入流出に関しては旅行速度への影響だけではなく無理な出入りによってトラブルの原因となることも考えられます。運転する人は常に譲り合いの精神を持つことでトラブルを避け、安全に移動をすることができます。車間距離をしっかり保っていれば流入流出による無駄なブレーキを踏むことも防げます。しっかりと車間距離を保ちながら常に安全運転でいきましょう。道路問題を考える上で、コンクリートの話題が出てきたので現在コンクリートについて少しだけ勉強中。

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