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人口減少と森林

 先日、有識者グループ「人口戦略会議」が、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに20代から30代の女性の数「若年女性人口」の減少率を市区町村ごとに分析し減少率が50%以上自治体を「消滅可能性自治体」、減少率が20%未満の「自立持続可能性自治体」として発表しました。茨城県内で見てみると「消滅可能性自治体」と指摘された自治体は全体の38%の17市町村。若年女性人口の減少率が20%から50%未満の自治体は26市町村。減少率が20%未満で100年後も若年女性が5割近く残っており持続可能性が高いと考えられる「自立持続可能性自治体」はつくばみらい市のみという結果になりました。10年前にも発表をされていましたが、この10年間で新しく消滅可能性自治体になった市町村、消滅可能性自治体から脱却した自治体など自治体ごとの取り組みの成果に差が出たようです。しかしながらこの分類に関わらず少子化による人口の減少は日本国内のあらゆる地域で予測されているため、人口減少は日本国内全体の大きな課題であると考えられます。

「消滅可能性自治体」

日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、潮来市、常陸大宮市、稲敷市、桜川市、行方市、鉾田市、城里町、大子町、美浦村、河内町、八千代町、五霞町、利根町

「若年女性人口の減少率が20%から50%未満の自治体」

水戸市、土浦市、古河市、石岡市、結城市、龍ケ崎市、下妻市、常総市、笠間市、取手市、牛久市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、守谷市、那珂市、筑西市、坂東市、かすみがうら市、神栖市、小美玉市、茨城町、大洗町、東海村、阿見町、境町

「自立持続可能性自治体」

つくばみらい市

人口減少と林業のこれから

 この消滅可能自治体は全国に分布をしていますが、基本的に中山間地域を抱えた自治体では減少率が高い傾向にあるように感じられました。かつては日本の貴重な資源として営まれていた林業。エネルギー分野においては木炭エネルギーから原油・天然ガスに変化をし、建築などの資材も国産から輸入材に変化をしてきたため衰退の一途をたどり森林の荒廃が問題視されていました。しかし最近では、森林は地球温暖化防止に貢献する地球環境保全機能等のほか、山地災害防止機能・土壌保全機能、水源涵かん養機能等を有し、山崩れや洪水を防止・軽減など降水量が多い我が国においては国土保全上重要な役割や、森林から搬出された木材を建築物等に利用することにより、森林が吸収した炭素を長期的に貯蔵することができ、また、CNFやリグニンといった木質バイオマスの新たなマテリア利用や地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築といったエネルギー利用の分野でも注目を集めています。

忘れてはならないエネルギー問題

 私たちが日常生活や社会活動をしていくために欠かすことのできないエネルギー。化石燃料等のエネルギー資源が乏しい日本はエネルギー自給率が低く2020年度は11.3%。1970年代のオイルショックを経験し化石燃料に頼らないようにエネルギーを分散化し安定的なエネルギー供給を図ってきましたが、まだまだ80%以上を化石燃料に頼っているのが現状となっています。東日本大震災前の2010年度は20.2%と現在よりは自給率が高かったが、原子力発電の停止などにより著しく自給率が低下した。近年は持ち返しているものの他の国々と比較をしてみてもエネルギー自給率は低い。地政学リスクにより資源の原油や天然ガスの輸入が困難になった場合に備えてエネルギー安全保障の観点からもエネルギー自給率の向上は不可欠な問題となっています。

 海外ではノルウェー:759.3%、カナダ:345.5%、アメリカ:106.0%、半島と島国という違いはあるがお隣の韓国では19.1%と日本よりもエネルギー自給率が高くなっている。

中山間地域は宝の山

 先ほど少しだけ紹介をしましたが、軽量ながら高強度で、保水性に優れる素材のCNF(セルロースナノファイバー)は、食品、塗料等に使用され、リグニンは高付加価値材料への活用が期待されており、スギから採れる改質リグニンの実用化に向けた製品の開発研究がなされています。地域の森林資源を熱利用・熱電併給により地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構築といったことが進められ「カーボンニュートラル」だけではなく「カーボンマイナス」も期待されています。林業から地域の森林資源を活用し産業を生み出すことで、雇用を生み出すことも可能となり働く世代の定着にもつながることが期待されます。まさに森林を有する中山間地域は“宝の山”となると言っても過言ではないでしょう。

おまけ

 木質バイオマス発電所にお邪魔した際に所長から「あの煙突から出ているものは何でしょう?」と唐突に質問を受けた。同じ質問を見学者にすると「煙」と答える方が多いそうだが、答えは「水蒸気」。つまりCO²を排出しているわけではないので環境に影響は全くない。中には火災だと思い電話してくる人もいるというから驚きだ。同じ理屈で原子力発電所から出ているのも「水蒸気」その辺がわからず危険だと訴える人たちもいるそうで、所長曰く「誤解なく理解されるような丁寧な説明がもう少し必要だ」そうです。

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