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ハンドの存在確率について考える


はじめに

過去にトップペアはトリプルバレルを打てるのかという記事で、相手のレンジ上位6.25%を考えると良い、ということを書きました。

そして記事内で「トップペアを持っている確率は大体10%と考えましょう」という話をしましたが、正確にはトップペア以外にもセットが何%、2ペアが何%、ということも考える必要があります。ボードによってはストレートの確率も考えないといけないでしょう。

これらの確率は戦略を考える上で非常に重要なのにも関わらず、実践中に計算することは不可能で、感覚で何とかするしかないと思われている気がします。しかし実践でこれらの確率を計算するのは本当に不可能なのでしょうか?何とかざっくり計算できる方法ないでしょうか?

今回はこのハンドの存在確率について感覚で済ませるのではなく、現実的なレベルで実践中に計算できないか考えてみます。

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具体例の確認

まず具体例として、以下の状況でBUのレンジに2ペア以上のハンドがどれくらい存在するか考えてみます。

・6maxCashgame
・2betpot BU(2.5bb open) vs BB
・BU側のプリフロップオープン頻度は43.5%
・ボードAKQr

まず、2ペア以上のハンドのコンボ数を考えてみます。
・ストレート(JT)、16コンボ
・セット(AA,KK,QQ)、3*3=9コンボ
・2ペア(AK,AQ,KQ)、9*3=27コンボ

仮に100%オープンしている場合、ボードの3枚のカードを除くと、BUは49*48/2 = 1176コンボのハンドを持っている可能性があります。
一方でBUオープン頻度は43.5%ですから、確率は

・ストレート:16/(1176*43.5%) ≒ 3.1%
・セット:9/(1176*43.5%) ≒ 1.8%
・2ペア:27/(1176*43.5%) ≒ 5.3%

となりそうです。実際にGTOwizardで見てみましょう。

実際にはBUのオープンレンジがハイカードに偏っているので少し誤差が出ていますが(実際はもう少し分母が少ない)、大きくは外していないことがわかります。

今回提案する方法

今回の記事では、私はこの考え方をベースに2つの計算方式を提案します。

方式A
ストレート:4.5%
セット:0.8%*3組 (≒2.5%)
2ペア:2.5%*3組
をベースに考え、最後に(30%/参加率)倍する

方式B
ストレート:8x(ただし、スーテッドのみの場合は2x)
セット:4x
2ペア:4x*3組=12x(ただし、スーテッドのみの場合はx*3組)
をベースに考え、最後に24x =15%*(30%/参加率)と考える

ストレートや2ペアが少ないボードでは方式Aで考え、多いボードでは方式Bで考えます。
これだけだと何を言っているのかわからないと思うので、実際にこれらの方法を使い、特定のシチュエーションで2ペア以上のハンドがどのくらい存在するか見てみます。

方式Aを使う場合

ストレートや2ペアが少ないボードでは方式Aを使います。
例えば以下の状況において、2ペア以上のハンドを持っている確率をIP,OOPそれぞれ計算してみます。

・6maxCashGame
・2betpot CO(2.3bb open) vs BB
・CO側のプリフロップオープン頻度は約30%
・BB側のプリフロップコール頻度はどちらも約30%
・ボード KJ2r

CO側
ストレートが存在しないボードなので、セットと2ペアの確率だけ考えればよいです。そしてセットは全コンボ(KK,JJ,22)存在し、2ペアが1組だけ(KJ)存在するので、2ペア以上の確率は、0.8%*3+2.5% ≒ 4.9% となります。

BB側
BU側と比べると、以下の違いが考えられそうです。
①KK,JJは3betしているので存在しない
②KJの一部は3betに回している
③K2sについてはコールしているかもしれない

ここで②と③について厳密に考えるのは難しいので、KJの3bet頻度≒K2sのコール頻度と考え、2ペアの確率を考える上では②③を無視して考えると、2ペア以上の確率は、0.8%*1+2.5% ≒  3.3%となります。

GTOwizardの結果を見てみます。

COが2ペア以上のハンドを持っている確率:2.5%+2.7%=5.2%
BBが2ペア以上のハンドを持っている確率:0.9%+2.0%=2.9%
と、先ほどの計算で大きくは外していなそうです。

ちなみに、これがMP vs BBだとどうなるでしょうか?

・6maxCashGame
・2betpot MP(2bb open) vs BB
・MP側のプリフロップオープン頻度は約20%
・BB側のプリフロップコール頻度はどちらも約40%
・ボード KJ2r

MP側
先ほどとは異なり、セットについて22がオープンしているか微妙です。また重要なのが、MPのオープン頻度は約20%程度ということです。

「今回提案する方法」で記載した数値は、プリフロップで30%の確率で使用する場合に使う数値になります。一方で、プリフロップの参加率がこの数値と異なる場合、最後に補正値(参加率/30%)をかけることで計算します。
※100%オープンの数値を覚えて補正しても問題はないですが、個人的には30%をベースにするほうが計算量が少なく済むことが多く、楽だと思っています。

22のオープン頻度が仮に半分程度と考えると、
2ペア以上の確率は、(0.8%*2.5+2.5%) * (30%/20%) ≒ 6.8% となります。

BB側
COと比べて、以下の違いが考えられそうです。
①KKは3betしているので存在せず、22はほぼコールしている
②QT、Q2s、J2sはほぼコールしている

ここでスーテッドの確率は、1/4であることを考えると、2ペアの組数は
1+1/4*2 = 1.5組程度とみなせそうです。(KJの3betを考えるともう少し小さいと思います)

これを踏まえると、2ペア以上の確率は、(0.8%*2+2.5%*1.5) * (30%/40%) ≒ 4.0% となります。

MPvsBBのほうは少しややこしかったかもしれませんが、この程度の足し算・掛け算であれば、実践中でも何とか暗算できる気がしてこないでしょうか?
考え方として重要なことは、最後にオープン率の補正を行うことです。
たとえストレートや2ペアの組数が多いボードでも、相手のプリフロップレンジが広ければ、強いハンドを持っている確率は下がるのです。

方式Bを使う場合

基本的にドライなボードで確率を計算する場合は方式Aでいいと思いますが、方式Aだと計算がややこしくなる状況があります。
例えば以下の状況において、BUが2ペア以上のハンドを持っている確率を計算してみます。

・6maxCashGame
・2betpot BU(2.5bb open) vs BB
・BU側のプリフロップオープン頻度は約45%
・BB側のプリフロップコール頻度は約30%
・ボード T96r

BU側
方式Aで考えてみると、ストレートは87sだけ、セットは3組ともオープンしており、2ペアはT9とT6s,96sなので、2ペア以上の確率は
(4.5%/4+0.8%*3+(2.5%*(1+1/4+1/4))) * (30%/45%) ≒ 4.9%
となりそうです。

これでも計算自体はできているのですが、暗算でやるのはちょっと厳しくないでしょうか?

こういったボードは方式Bで考えます。
方式Bではまずストレート、セット、2ペアの係数(8x,4x,12x)に、存在頻度をかけたものの合計を計算します。その後、24x=15%というベース数値を参加率に応じて調整し、計算した値にかけて求めます。

今回の場合だと、前述の式から存在頻度は1/4, 1, 1.5/3=1/2なので、
(8/4 + 4 + 12/2)x = 12xという数字をまず計算し、
その後、24x = 15%*(30%/45%)=10%であるため、
10% * 12x/24x = 5%、が2ペア以上の確率であると計算します。

複雑なボードだと、方式Bのほうが計算ミスを起こしづらいと考えており、私はこの方式Bをかなり気に入っています(数値は若干不正確になりますが、誤差の範囲内だと思います)。この方式のいいところは、小数点以下の計算が起きにくいところと、全体の%をベースにするので大きな計算ミスが起きづらいことです。

BB側
方式BでBB側の計算を行ってみます。それぞれの役の存在確率について、
・ストレート:87oが読みづらいが87sの3bet率と近い程度と推測するとスーテッドのみ考えればよく、2x
・セット:半分くらいは3betしていそう、2x
・ツーペア:T9o,T6s,96sはありそう。この場合の係数は4+1+1=6x
と考えると、2x+2x+6x = 10x
ここで24x=15%なので、およそ6%程度が2ペア以上の確率と求めることができます。


最後に

もっと具体例を挙げて書きたかったのですが、字数も多くなってきたので今回はここで終わりにします。書ききれなかった情報をAppendixに載せておいたので、もしご興味があればご覧ください。

ハンドの存在確率については計算することを諦め、感覚で処理される方が多い気がしていますが、人間は確率をうまく捉えられない生き物です。そのため相手のハンドを強く見積もりすぎてバリューを取り逃したり、あるいはバリューを取れないベットをしてしまうことが多々あります。

上記のような理論が頭にあれば少しは学習が楽になるもしれない、そしてミスが減らせるかもしれない、そう思います。

Appendix①

3betpotではオーバーペアの確率も重要になってきます。この場合はオーバーペア3組でセットの倍と考えるといいと思います。

例:SB vs BB、3betpot、ボード:JT8r
SBがオーバーペア以上のハンドを持っている確率
→8x/4+x+3x/12+2x = 3.75x
6x = 30%くらいだから、18%程度

3betpotのレイザー側が特定のオーバーペア1組を持っている確率は3%~5%程度である、という感覚があるといいと思ってます。

Appendix②

各スポットの参加率と、ペア/スーテッドカード/オフスートカード/各カードを持っている割合を調べたデータを以下に記しておきます。

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