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なぜFlopCBにガットショットでコールできるのか


はじめに

GTOソルバーが一般的になった今、Flopの小さいCbet(例えば30%potCbet)に対してガットショット(以下、GS)は殆どがコールできるということは広く知られるようになりました。

一昔前はGSでコールしてストレートを引いた場合、相手プレイヤーに「なんでそんなハンドでコールしているんだ」と言われることがありましたが、今はそういうことは減っているでしょう。いい時代になったものです(?)

前置きはさておき、Flopの30%potCbetに対してGSをコールするというのは一般的になっていると思いますが、それが何故かということについて説明した記事・資料はあまり見かけません。そこで、私なりの視点でこの理由を考えてみたいと思います。

前提

まず以下の前提(前提A)で、フォールドとコールの期待値を比べることを考えます。なお今回はチェックレイズとの期待値比較は行わず、あくまでフォールドとコールの2つの選択肢のみを比較します。

・6maxCashGame
・BU2.5bb open, SB fold, BB call (Hero:BB)
・Flop(pot5.5bb), BB check → BU 1.65bb bet(30%potCbet) → BB?
・BBはGSを持っている
・レーキは考えない
・カード除去効果は考えない

前提A

ここでアクションがフォールドではなくコールになるということは、フォールドの期待値<コールの期待値であるということです。それはすなわちフロップで1.65bbを追加投資したとしても、コール後のpotのうち1.65bb以上は将来的に回収が見込めている、つまりコール後potのうち1.65/(5.5+1.65*2) ≒ 19% 以上の回収が見込めているということになります。
以下、コール後pot(すなわち5.5bb+1.65bb*2 = 8.8bb)をsとおきます。

ここで更に以下の前提(前提B)を置いた上で、上記で示した「コール後potの19%が本当に回収可能か」について調べてみます。

・ストレートが完成しなかった場合は、全くpotを取ることができない
・ストレートが完成した場合は、必ずpotを取ることができる
・ターンでストレートが完成していない場合、ターンの相手のベットにはすべてフォールドする
・相手のターンベット頻度(ダブルバレル頻度)は45%
・ターンドンクは行わない

前提B

結論

上記の2つの前提を置いた場合、potをとれる可能性があるのは以下の2パターンとなります。
①ターンでストレート完成
②ターンでストレート完成しないが、相手がダブルバレルを打たずターンチェック、そしてリバーでストレート完成

それぞれのパターンの発生確率は以下の通りです。
①4/47 ≒ 8.5%
②(1-4/47)*(1-45%)*4/46 ≒ 4.4%

ここでパターン①②において、どの程度の額を最終的に得ることができるか考えます。様々な考え方があると思いますが、私がよく考える方法は以下です。
・自分からpot betすることを考える。
・相手はMDF(minimum defence frequency)でコールしてくると考える。相手のレイズは考えない。
※実際にはどちらも現実において正しい仮定ではありません。前者についてはドンクになりますし、後者については相手の頻度は通常MDFとは異なるからです。ただ概算としてはこの方法でも十分かと思います。
※SPR的にはpot betではなくdouble pot betを打つと考えてもいいですが、実際はdouble pot betを2回打った場合はフラッシュ、フルハウス頻度がかなり上がることを考えると(バリューがとれず負けている)、pot betで考えておくのが無難かなと思います。

この場合、potbetのMDFは50%ですので、それぞれのパターンで得られる額は以下の通りとなります。(前述のコール後pot:sを使います。)
①もともとのpot(s)が確実に得られることに加え、25%でs、25%で4sが追加で得られるため、s + 25%*s + 25%*4s = 2.25s
②もともとのpot(s)が確実に得られることに加え、50%でsが追加で得られるため、s + 50%*s = 1.5s

以上を踏まえると、GSにコールした場合に回収できるpotの期待値は
8.5%*2.25s + 4.4%*1.5s ≒ 0.257s
つまり、コール後potの約26%が回収できます。これは前述の19%という数値よりも大きいため、GSはフォールドするよりコールしたほうが良いという結論になります。仮にストレートを引けなかった場合にギブアップになるとしても、Flop30%CbetにGSはコール出来るのです。
これが「Flopの30%potCbetに対して何故GSはコール出来るのですか?」に対する、私なりの回答です。

発展

もう少し発展させて考えます。前提Bの以下の点については少し現実と離れた前提になっていると思われた方がいるのではないでしょうか。

・ストレートが完成しなかった場合は、全くpotを取ることができない
・ストレートが完成した場合は、必ずpotを取ることができる

前提B抜粋

これはその通りで、実際はストレートが完成しなくとも、ペア完成かつ相手がハイカードチェックバック等の場合はpotが取れる可能性がありますし、逆にストレートが完成した場合にも上ストレート、フラッシュ、フルハウス等に負けてpotを失うこともあります。

そこで、GTOwizardで各ガットショットが完成した場合のEVや、ストレートが完成しなかった場合のEVを見てみます。

Board: Ts6h2d Hand:9c8c
Board: AsKs7h Hand QcJc

前提A,B上ではターンでストレートが引けなかった場合のEVは、(1-45%)*4/46*1.5s ≒ 0.07s 程度になると予想されますが、GTO上はもう少しEVが高く、0.1s~0.2s程度のEVがあることがわかります。

また、ストレートが引けた場合でも、相手にフラッシュの可能性がある場合はかなりEVが下がることもわかります。
(なお、フラッシュがない場合にターンでストレートを引いた場合のEVは2.0s~2.4s程度であり、前述の2.25sという見積もりがある程度正しそうなことが確認できます)

そのため、実際に回収できるpotの期待値を計算する場合は、上記も算式に組み込むことでより正確なアクションを行うことが可能となります。例えば、以下のような補正が考えられます。
・ストレートが引けない場合(約8~9割で発生)でも、potの10%程度は回収できると考え、前述の前提数値からpot回収率を+8~9%する。
・フロップがツートーンボードの場合、ストレート完成カードの一部が相手のフラッシュを完成させるものなので、ターンでストレートを引いた際のpot回収率を2.25sより低く見積もる。

これらの補正については細かい話になるので今回はこれ以上は触れませんが、実際に手を動かして計算してみると色々発見があり面白いと思います。

最後に

ここではフロップGSの例を上げましたが、今回の考え方はターンやフラッシュドローの場合でも同様に使うことができます。また相手に特定のリークがある場合のエクスプロイトにも使用できます。

プレイ中にこの記事のような細かな確率・期待値計算を行うことは難しいと思いますが、事前に時間をかけて数値を理解しておけば、それだけでミスプレイが減らせるような内容だと思います。ぜひ皆様のプレイの参考になれば幸いです。

こちらの記事に人気がありましたら、この話をさらに発展させてた記事も書こうと考えていますので、是非noteのいいねとTwitter のフォロー、RTをよろしくお願いいたします。励みになります。

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※GTOwizardの使い方についてはAmuさんのnoteが参考になると思います。


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