何故potbetに50%以上降りていいか
はじめに
GTOの基礎としてよく話に上がるAKQゲームでは、「pot betに対しては50%コールする」というのがGTO戦略ということは広く知られています。またpot betに対しては「50%以上コールしないと搾取される」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
しかし実践ではリバーでpot betを打った場合、相手は50%より降りているという気がしませんか?実際その感覚は正しく、データをとると殆どのプレイヤーのリバーのフォールド率はAKQゲーム上の理論値を大きく超えます。
もしこれがGTOから外れている戦略であるならば、我々は全力でエクスプロイトプレイをするべきです(かなりブラフレンジを広げるべき)。しかし実際はGTO上でもAKQゲーム上の理論値よりフォールドすることは多々あり、理論値よりフォールドしているからといって即搾取可能というわけではないのです。今回はその仕組みについて述べようと思います。
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[0,1]game(half street)
まず、自分のレンジが強すぎる場合は相手は50%以上降りて良いということはわかると思います。例えばこちらのレンジにナッツが80%あり、エアーが20%しかない場合(そうなることは稀ですが)、こちらのpot betに対して相手は全てのハンドをフォールドするのが正しい戦略です。
しかし、相手と自分のレンジの強さが同じ場合でもGTOは50%以上降りるのです。ここで例として以下のようなゲーム([0,1]game, half street)のGTO戦略を考えてみます。
ここで、相手と自分のハンドの強さを0~1の数字で表すことにします。(数字が大きいほうが強いハンド。例えば強さ0.9のハンドは上位10%の強さのハンド)
OOPは強いハンドから順にコールするという仮定を置いて問題ないでしょうから、このゲームは以下のように考えることができます。
ここでIPはどのハンドをベットすべきか、そしてその結果OOP,IPのGTO戦略がどうなるか、次章で考えてみます。
[0,1]game(half street)GTO戦略の計算①
まずIPのバリューベットから考えると、上位X/2 【(1-X/2)~1】のハンドについては相手にコールされたときに50%以上勝っているのでベットすべきです。
次にIPのブラフベットについて考えると、ブラフ失敗時と成功時に得る額が同じことから、(ベットした時に降ろせる自分のハンドより強いハンドの数) > (ベットした時にコールされるハンドの数) となるハンドはブラフしたほうが良いことになります。
ここでIPの強さYのハンドについて考えると、(1-X-Y)>Xであればブラフした方が良く、これを解くとY<1-2X、つまり【0~(1-2X)】のハンドはブラフが利益的です。
まとめるとIPは【0~(1-2X) ,(1-X/2)~1】のハンドをベットすべきとなります。この時、IPは【0~(1-2X) ,(1-X/2)~1】のハンドについて、チェックした場合よりも利益を得ることができます。
IPのこれらのハンドについて、具体的にどの程度追加利益を得られるか、次章で考えてみます。
[0,1]game(half street)GTO戦略の計算②
IPがベットした際に得られる追加期待値について、いくつかのハンドをピックアップして考えます。
これを整理すると、IPは【0~(1-2X)】のハンドを持っている場合は(1-2X)~0の追加期待値を得ることができ、【(1-X/2)~1】のハンドを持っている場合は0~Xの追加期待値を得ることができます。
つまりIPは、(1-2X)の確率で平均(1-2X)/2の追加期待値を、X/2の確率で平均X/2の追加期待値を得ることができるので、IPは全ハンドチェックした場合よりも、(1-2X)*(1-2X)/2 + X/2*X/2= (9X^2-8X+2)/4 の追加利益を得ることができます。
一方OOPはこの追加期待値を最小にするようなXをとる(最小にするような確率でコールする)のがGTO戦略で、この場合X=4/9、つまり半分以上降りることがGTO戦略となります。
※この場合IPのベットについてもバリューベット頻度2/9,ブラフベット頻度1/9となり、バリューブラフ比が最適のGTO戦略になります。
※厳密には1-2X>0の確認や、平均が÷2でいいのか、互いの戦略がナッシュ均衡になっているのかの確認も必要ですが、ここでは厳密な証明はしません。
何故potbetに50%以上降りていいのか
GTO戦略の計算についての話はここで終わりですが、最後にお互いが上記のGTO戦略をとっている場合の、IPの強さ(1-2X)のハンド(=強さ1/9のハンド、ブラフする上限のハンド)について考えてみます。
IPはこのハンドをチェックすれば1/9の期待値を得ることができます。一方OOPはこのハンドのブラフ期待値をチェック期待値と等しくするようにするようにコールしており、結果としてコールする確率は4/9になっています。
つまりブラフ期待値を0にするようにコールするのではなく、ブラフ期待値が1/9になるようにコールしているのです。
ここから分かることは、ベット側がブラフをする際にある程度のショウダウンバリュ―を捨てなくてはならない状況ならば、コール側は相手のブラフ全ての期待値を0以下にするようなブラフキャッチ戦略を行わなくて良い。ということです。
更に言うと、コール側は相手のブラフ全てのEVを0以下にするようなブラフキャッチ戦略(つまり50%以上でコール)を取ると逆に搾取されてしまいます。これがpotbetに50%以上降りていい理由となります。
補足
また、このゲームの面白い点は、相手がGTO戦略であったとしても(搾取的に動かないとしても)IPのハンドは必ずベットした方が良いハンドと必ずチェックしたほうが良いハンドに明確に分かれる点です。
一般的には相手に搾取されないならばブラフはしてもしなくても良いという状況が多いと思われていますが、そうではなく、相手がGTO戦略であっても特定のハンドは必ずブラフしないと期待値が減る状況があるのです。
この最適な割合のベット判断は人間には非常に難しく、多くの人がミスを犯します。つまりGTOに近づけば近づくほど、(搾取されることが減るだけでなく)明確に期待値を上げることが出来ます。(なので、コンピューターが強いわけです)
最後に
以上で何故pot betに50%以上降りていいかについての説明を終わります。
これはpot betではなくても適用され、例えば50%pot betに2/3以上コールする必要がない場面も多いのです。
pot betに対して50%以上降りているから相手を搾取できそうだとか、あらゆる状況でMDF(minimum defence frequency)を意識してしまっている方は、是非考え直してみるといいと思います。
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