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6maxプリフロップ分析②-IP抵抗レンジ編(vsオープン)

はじめに

 (こちらの記事の続きです。)

 この記事は6maxCashgameにおいて、オープンした際に相手がIPからどれくらい(+どのようなレンジで)抵抗するか、について調べた記事になります。
 例えばCOからオープンした時に、BTNがどれくらいの頻度で、どのようなレンジで3bet/Callするか、といったことについてRec/Reg別・レート別に調べて記載しています。
 ※レートは2NL, 10NL, 100NLの3つを比較し、調査にはPokerTrackerの集計機能とHand2NoteのRangeResearch機能を使用しています。

この記事には、以下の内容が書いてあります。

・UTG,MP,COからオープンした際、相手がIPから3bet/Callする頻度
(Reg/Rec別・レート別に調査、GTO頻度とも比較)

・相手がIPから3bet/Callするレンジのおおよその構成
(Hand2NoteのRangeResearch機能を使い、UTG,COオープン時のBTN抵抗レンジを調査。Reg/Rec別にも調査)

・上記からわかる考察

 
 ポーカーにおいて、相手の3bet頻度(Call頻度)が分かっていれば、それに対して適切な対応がとれ、利益が上がりやすくなるのは言うまでもありません。
 例えば、相手の3betレンジが4%程度の場合、こちらの記事を参考にすれば、QQ未満のハンドで抵抗するのはかなり厳しいことがすぐにわかります。一方相手の3betレンジが8%程度の場合、JJやAQsは抵抗すべきだろう、といったこともわかります。
 このように相手の頻度を調べるだけで相当有利に勝負を進めることができるのですが、今回は加えて相手のショウダウンハンドについても調べ、そのReg,Recのレンジ構成がどういったものかについても触れています。

 IPから3bet(Call)された場合の相手のレンジについて見当がついていない方や、Reg/Rec別・レート別の傾向についてご存じでない方は、是非読んでいただければ成績向上の助けになるかと思います。
 (この記事の3bet頻度と上記の記事の抵抗レンジ表を組み合わせることで、具体的な戦略がある程度固まるところまで持っていけると思います。)


以下、調査に関する補足です。

補足
・「Reg」はハンド数が多いプレイヤーを、「Rec」はハンド数が少ないプレイヤーを意味しています。

・今回分析したハンドは友人らに頂いたもので、2020~2021年のPokerStarsのRingGameのものです(大体各レート100万ハンド程度を分析に使用)。

・今回、GTO上の頻度と実際のプレイヤーの頻度を比較していますが、GTO頻度は販売中のこちらのソリューションから引っ張ってきている値になります(一部例外有)。そのため、レーキや3betサイズ等の問題で、必ずしも文中の「GTO頻度」が理論上正しい頻度であるとは言えないことにご注意ください。(レーキや使用するベットサイズが変われば、GTO頻度も変化します)

・オープンサイズが2bbの時と3bbの時で、IPのプレイヤーの3bet率は異なることが予想されます。今回はそれを防ぐため、2.5bbオープンした場合のみをフィルターして頻度を調査しています。そのため、ただ頻度を調べた記事よりは精度が高いデータが取れているかと思います。
 (25NLは2.5bbオープンが生じないので、今回は100NL,10NL,2NLの3つを比較しています。)



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IP3bet/Call頻度 vs 2.5bb Open

 いずれかのプレイヤーが2.5bbオープンし、IPのプレイヤーまでFoldで回ってきた際の、IPプレイヤーの3bet/call頻度一覧は以下になります。

画像8

 また、3bet頻度とCall頻度を足し合わせた頻度一覧は以下になります。

画像7

 ※主観ですがGTOから大きくずれていそうな個所を赤背景、少しずれていそうな個所をオレンジ背景、ずれているかも?といった箇所をピンク背景にしています。

 以下、読み取れることです。

①全体的に3bet頻度はGTOよりも低い。
②レートが上がるにつれ、3bet率が上がり、GTO頻度に近づく。
(=低レート程、3bet頻度が低い)
③オープン時と同様、Recはコールでついてくることが異常に多い。
特にその傾向は低レート程強い。(IP3bet+Call頻度を見ても明らか。)

 たまにtwitterで、レートを挙げると3betが多く飛んでくるようになった、というツイートを見ますが、それは統計的にも正しいようです。
 また、低いレートでの異常な3bet率の低さが読み取れます。2NLにおいてUTGに対するMPの3betレンジは4%未満、BTNに対するCOの3betレンジはなんと6%未満です。
 こちらの記事を参考にして頂きたいのですが、IPから6%程度のレンジで3betされた場合、AQoはFoldが推奨されます。一般的な戦略としては、COからオープンしBTNに3betされた場合、AQoはCallか3betが鉄則ですが、2NLでは降りるという選択肢が有力なのです。これを知らずにIP3betに対して、いわゆるGTOチャートやsnowieチャートをそのまま使用することは損失につながります

 また、前回の記事と同様、Recはコールでついてくる傾向があります。
リンプの場合とは異なりRegもコールで参加してくるのですが、その参加頻度は倍くらい違うので、当然レンジもかなり違うものになることが分かります。(Recの方がレンジが広いため、少々強引なブラフキャッチが正当化される場面が増えるでしょう。)


IP3bet/Callレンジリサーチ vs 2.5bb Open

 頻度自体は上記の情報で十分把握できるかと思いますが、実際には4%の3betレンジと言っても、リニアなレンジなのかポラーなレンジなのか、強いハンドがどれくらい含まれているのか等によって、我々が取るべき戦略も変わってきます。
 そこで、今回Hand2NoteでReg,Rec別のショウダウンハンドを調べましたので、その結果を以下に載せます。(全4枚)
 ※レート別にもショウダウンハンドを調べたほうが良いのですが、一度手元で比較したところ、頻度は変わるもののレート毎にあまり有意な傾向差は見られなかったので、今回はレート別の分析は省略しています。
 ※ショウダウンまで行ったハンドを集計して表示しているので、厳密な3bet(Call)レンジとは少し異なります。


・UTGオープン者に対し、BTNのRegがプレイしたレンジ
(それぞれのハンドの左下の数値が3betし、ショウダウンまで行ったハンドの数で、右上の数値がCallし、ショウダウンまで行ったハンドの数です。以降の画像も同様です。)

画像3


・UTGオープン者に対し、BTNのRecがプレイしたレンジ

画像4


・COオープン者に対し、BTNのRegがプレイしたレンジ

画像5


・COオープン者に対し、BTNのRecがプレイしたレンジ

画像6


 このショウダウンハンドの数だけを見ても、何が読み取れるかわかりにくいです。そこで、これらのレンジのうち特定のハンドの割合を計算してみました。その結果が以下です。
 ※これらの数値はRegとRecのレンジ傾向を比較する上では十分価値がある数値ですが、あくまでショウダウンまで行ったハンドの中での割合であるため、実際のCall/3betレンジとは頻度が異なることに注意して下さい。

画像7

読み取れることは以下です。

3betレンジに関して
Reg:リニア寄りなレンジ。
Rec:COvsBTNの場合、3bet頻度はRegよりも若干タイトであったが、実際にはレンジ中のAA,KK率はRegとほぼ変わらない。(AA,KK,QQ,AK率はむしろRegよりも低い)

Callレンジに関して

Reg:AA,KKはコールレンジにほぼ存在しない(キャップされたレンジ)。また、ミドル~スモールポケットペアの割合がRecよりもかなり多い。
Rec:AA,KKの一部をコールに回しており、AKやQQ等もかなりコールに回している。(正確な頻度を割り出すのは難しいが、少なくとも2~3割はコールに回しているように見える)


 前述の頻度だけを見ると、例えばCOvsBTNの場合にRecの3bet頻度はRegよりも低い→Recの3betはタイト、と考えがちなのですが、実際にはRegと比較して、Recの3betレンジ内のプレミア率はそこまで変わりません。それはRecはプレミアムハンドの内かなりの割合をコールに回しているためです。
 また、RegとRecではCallした際のミドルポケットペアの割合が大きく異なるということもわかります。Reg相手にはミドルポケットペアを狙った薄いバリューはかなり有効になります。
 上記のような情報はただ3bet(Call)頻度を調べているだけでは見逃しがちです。ただ相手の頻度だけを見て戦略を考えていた方は、上記を参考に是非戦略を修正することをオススメします。


結論

・全体的にIP3bet頻度はGTOよりも低い。
・レートが上がるにつれ、3bet頻度が上がり、GTO頻度に近づく。
(=低レート程、3bet頻度が低い)
・オープン時と同様、Recはコールでついてくることが異常に多い。
特にその傾向は低レート程強い。
・IP3betレンジに関して:プレミア率はRegとRecでほぼ変わらない。(=3betレンジ自体の強さは、そこまで変わらない)
・IPCallレンジに関して:Regはマージナルなハンドが多く、いわゆるキャップされたレンジである一方、Recはキャップされていないものの、広いレンジになっている。また、99-22の割合はRegとRecでかなり異なる。


 個人的に、特に重要だと思うのは以下の3点です。今までこれらの事を知らなかった方は、是非プレイ中に意識してみることをオススメします。

・3bet率は低レートの方が低く、特にCOvsBTNの場合等では一般に推奨されるようなレンジとは程遠い。そのため、いわゆるバランスが取れたレンジ(GTOレンジ)を用いると不利益が生じる可能性が高い。(アジャストした抵抗戦略を取ったほうが良い。)
 ※具体的な戦略はこちらの記事を参照。

・プレミア率はRegとRecでほぼ変わらない。そのため、Recに対して無理に抵抗レンジを狭める必要はない。

・RecはAKやQQの内、2~3割はCallに回している。そのためRecにIPからCallされた場合、そのようなハンドが無いと想定したベットは危険になる。特にオーバーベットを使う際は注意したほうが良い。


おわりに

 相手の3betレンジがタイト、ということは何となく知っていたとしても、ここまで状況によって頻度(レンジ)が異なることは知らない方が多かったのではないでしょうか。
 相手の頻度とレンジ構成を理解することでバリューレンジやブラフターゲットが明確になり、プリフロップだけでなく、ポストフロップの成績も向上します。
 相手のIPの抵抗レンジを見積もる際には、是非この記事を参考にして頂ければ幸いです。



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