中島亮

あなたの「オモシロイ」は僕が創ります!

中島亮

あなたの「オモシロイ」は僕が創ります!

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    あの世に送り届けるのが運転手の役目。 死んで終わりではないと思いたくなくて、こんな物語を書いています。

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記事一覧

考える事が危険なのは、それまでの日常を否定するようになるから。肯定も否定もしない。観察者であり続ける事が大事。どれだけ飛躍しても、どれだけ深くなっても、それを観察し、それを表現する事だけに留める事。

中島亮
19時間前
6

作家の仕事って、絶望に屈せず、人間存在の救いを見出す事。それと、考える事。危険な事も考えないといけない。一線を越えてしまっても、日常と均衡を保たないといけない。表面的な事ではない。その先にある、無限の可能性を勇気を出してみ出す事。そんな気がする。

中島亮
1日前
7

黄金猿

山の中のサルタの屋敷に、カワタの使いがやって来た。港にヒトが現れたそうだ。それで、どうすればよいかと指示を仰いできたのだ。そんな報告を受けたサルタは、しばらく考…

中島亮
2日前
4

個人が簡単に死ぬ事は許されない

生きる事が最も大事な価値観だとされている。 生きていれば、いい事がある 生きていれば、そのうち チャンスがある そういう、いい事とか、チャンスは、生きていれば、個…

中島亮
3日前
10

大宮人

「そのおっさんって、真っ白い顔しとったやろ?」 後輩のヒサシが、変なおっさんを見たという話をしていた。俺も、西院駅の近くで、おそらく同じおっさんを見たんで、その…

中島亮
4日前
9

廃室の誕生日

嘘だと思うのなら、そう思えばいい。 俺は、学生時代にしていたアルバイトを除けば、一度も働いたことがない。 引きこもりの人間が多い世の中、そんな事は珍しくないのか…

中島亮
5日前
6

白い部屋

ここがどこかはわからない。 どうやって来たのかも。 白い天井と、白い壁の境い目がない。何も聞こえない。 ただ、わかっているのは、わたしが苦しかったという事。 気管…

中島亮
6日前
5

勇敢タイム

料理ぐらいはできた方がいい。 そんな事はわかっている。しかしながら、料理を作ったところで誰に食べてもらう訳でもない。サナコは、そう思ってある意味、諦めとも言い訳…

中島亮
7日前
5

学校の熊

振り返って見上げた姿は、影になっていた。 9月の太陽は、まだまだ遥か彼方の空の高いところにあったから。 「そんなに珍しい?」 学校の檻の前でしゃがみこんでいたとこ…

中島亮
8日前
9

その若者が住んでいる街が見える山道の中腹に差し掛かった辺りに、男が1人崖を見下ろしていた。 絶景というには程遠い景色。わざわざ見にくるような場所ではない。うすら寒…

中島亮
9日前
8

こども

「お父さんかお母さんに宿題を手伝ってもらっただろ?」  威厳と慈悲を声色で演出しながらも、根底にある義務感が子供にもバレていた。教師という職業の難しさは、教師に…

中島亮
10日前
7

男のいいこと

男はコンビニに立ち寄った際に、小学生の男児がキャンディーバーを万引きする様子を見てしまった。 見なかったふりをしようと思ったが、男児の為にならないと思い、彼の後…

中島亮
11日前
3

人間関係

新人から、誰もいないところで話がしたいと言われた。 女性ばかりの職場は気を使うのだ。 「皆さんいい人ですが、その人の事だけは無視していて、いたたまれないです」 人…

中島亮
12日前
10

カネやん

「俺、褒められたんや」 カネやんは、嬉しそうに言っていた。 どんなに年を取っても、褒められることは嬉しいんやろなと思いながらも、俺は蔑みの目で見ていた。 カネや…

中島亮
13日前
7

さきっぽが苦手

 人に指をさされる事が僕は苦手です。指だけでなく、先っぽを見るのが苦手で、注視できません。  車を運転していて、前を走るトラックが、何かの管を運んでいて、その先…

中島亮
2週間前
8

君に贈る火星の

 その一団は、独特の赤みを帯びた隣の惑星、火星からやって来た。二足歩行ではあるが、腕の形状が異なっていた。イカやタコを思わせるような触手を複数有しており、それぞ…

中島亮
2週間前
6

考える事が危険なのは、それまでの日常を否定するようになるから。肯定も否定もしない。観察者であり続ける事が大事。どれだけ飛躍しても、どれだけ深くなっても、それを観察し、それを表現する事だけに留める事。

作家の仕事って、絶望に屈せず、人間存在の救いを見出す事。それと、考える事。危険な事も考えないといけない。一線を越えてしまっても、日常と均衡を保たないといけない。表面的な事ではない。その先にある、無限の可能性を勇気を出してみ出す事。そんな気がする。

黄金猿

山の中のサルタの屋敷に、カワタの使いがやって来た。港にヒトが現れたそうだ。それで、どうすればよいかと指示を仰いできたのだ。そんな報告を受けたサルタは、しばらく考えあぐねいた。

この島の猿は、2種類。山に住む猿と、港に住む猿がいる。山の猿は、木の実や山菜、時には、鳥やウサギを捕まえる事もある。天候に気を付ければ、比較的安全な日々を送ることができる。対して港の猿は、山の猿を、臆病者だと揶揄している。

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個人が簡単に死ぬ事は許されない

生きる事が最も大事な価値観だとされている。
生きていれば、いい事がある
生きていれば、そのうち チャンスがある
そういう、いい事とか、チャンスは、生きていれば、個人的にはあるかもしれない。しかしながら、全体で考えたら、人間が生きる事は本当にいい事なのかなと思う。

生きる人間が多すぎていないかと思う。
八十億人ぐらいが、地球にいて、僕達は毎日、何かを食べる為に行動している。
僕らは色々なものを食べ

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大宮人

「そのおっさんって、真っ白い顔しとったやろ?」

後輩のヒサシが、変なおっさんを見たという話をしていた。俺も、西院駅の近くで、おそらく同じおっさんを見たんで、その答え合わせをしていた。

「そう!それです!そんで、そいつ、眉毛ありませんでしたよね!?」

ヒサシの口元から、ご飯粒がポロリと落ちた。
昼過ぎに練習が終わった時は、俺は、チームメイトと定食屋で飯を食べる。そこは、ご飯と味噌汁のおかわりが

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廃室の誕生日

嘘だと思うのなら、そう思えばいい。

俺は、学生時代にしていたアルバイトを除けば、一度も働いたことがない。
引きこもりの人間が多い世の中、そんな事は珍しくないのかもしれない。しかしながら、昨日が、俺の誕生日だった。自分の人生が60年も経ったのだ。

いわゆる還暦というやつだ。職歴無しの還暦。他にそんな人はいるのだろうか?もしも、そういう人がいて、俺だけじゃないと知る事ができたのなら、俺は、少しだけ

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白い部屋

ここがどこかはわからない。
どうやって来たのかも。

白い天井と、白い壁の境い目がない。何も聞こえない。

ただ、わかっているのは、わたしが苦しかったという事。
気管に水が入り込んで、むせるような息苦しさ。
それなのに、咳がでない辛さ。
そんな苦しさの後にわたしはいて、まだ苦しさは続いている。

たった今目覚めたところ。それも、わかっている。

「やっと目覚めた」

音がある。
人の声。
若い。

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勇敢タイム

料理ぐらいはできた方がいい。
そんな事はわかっている。しかしながら、料理を作ったところで誰に食べてもらう訳でもない。サナコは、そう思ってある意味、諦めとも言い訳ともつかない理由で、敬遠していた。
料理ができない事が、結婚できない原因でなく、結婚しないから、料理をしないだけ。
料理できる女じゃないといけないなんて、時代遅れだ。

いつか、理想的な男性が現れて、いつの間にか幸せになると思っている。

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学校の熊

振り返って見上げた姿は、影になっていた。
9月の太陽は、まだまだ遥か彼方の空の高いところにあったから。

「そんなに珍しい?」

学校の檻の前でしゃがみこんでいたところ、ヒロトは、急に話しかけられた。
見上げた影は、6年生のリエだった。日焼けしていない白い肌が透き通っていた。

「人の話す言葉がわかるから、気を付けてね。この子の事は『ぼっちゃん』と呼んであげて。間違っても『熊』と呼んではいけないん

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その若者が住んでいる街が見える山道の中腹に差し掛かった辺りに、男が1人崖を見下ろしていた。
絶景というには程遠い景色。わざわざ見にくるような場所ではない。うすら寒いものを感じて一度は通り過ぎた。
けれども、最近2人が行方不明になった事件があり、自殺ではないかとも言われていた。
一応男に声をかけた方がいい。そう思い、彼は引き返した。

夏の終わりにはまだ早い黒い上着を着ている。顔は虚ろだった。
近づ

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こども

「お父さんかお母さんに宿題を手伝ってもらっただろ?」
 威厳と慈悲を声色で演出しながらも、根底にある義務感が子供にもバレていた。教師という職業の難しさは、教師にしかわからないという諦観が、その教師の怠惰を助長しているようだった。
「まさか。そんな事をしてません」
 教師はどこで折れるかを決めかねているところに、少年はこう続けた。
「全部やらせていますよ」

男のいいこと

男はコンビニに立ち寄った際に、小学生の男児がキャンディーバーを万引きする様子を見てしまった。

見なかったふりをしようと思ったが、男児の為にならないと思い、彼の後を追いかけ、声をかけた。

「ポケットに入っているものを出しなさい。私がお店の人に言って返しに行く」

はじめ、しらを切っていた男児であったが、男に圧倒され、だんだん目に涙が浮かんで来て 「ごめんなさい」と言いながらポケットから菓子出して

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人間関係

新人から、誰もいないところで話がしたいと言われた。
女性ばかりの職場は気を使うのだ。
「皆さんいい人ですが、その人の事だけは無視していて、いたたまれないです」
人間関係の事ではさほど驚かないつもりだった。
ただ、私がみる限りそんな陰湿な環境ではない。
「どの方の事ですか?」
「名前は知りません。確かに、その方は挨拶しても返してくれない、クセが強そうな人です。年は私とおなじぐらいで、店のエプロンをつ

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カネやん

カネやん

「俺、褒められたんや」

カネやんは、嬉しそうに言っていた。

どんなに年を取っても、褒められることは嬉しいんやろなと思いながらも、俺は蔑みの目で見ていた。

カネやんの声は、低くて小さい。俺は「はい?」と大袈裟な声を出して聞き直す事が多かった。
それも、カネやんの事を心の中でバカにしているから、俺はそんな態度をしていたんやと思う。

カネやんは帰ってくるのが一番遅い。

配達件数が一番多いわけで

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さきっぽが苦手

 人に指をさされる事が僕は苦手です。指だけでなく、先っぽを見るのが苦手で、注視できません。
 車を運転していて、前を走るトラックが、何かの管を運んでいて、その先っぽがこっちを向いていたら運転に支障が出ます。
 なんで先っぽが僕は苦手なのかわかりません。それが、自分の眼を刺すのではないかという恐怖ではなく、とにかく指や、ペンなどの先っぽを向けられたら、体をのけ反らします。
 尖端恐怖症という程大袈裟

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君に贈る火星の

 その一団は、独特の赤みを帯びた隣の惑星、火星からやって来た。二足歩行ではあるが、腕の形状が異なっていた。イカやタコを思わせるような触手を複数有しており、それぞれの用途がある。それを使って文字を書く事も、道具を使う事もできるそうだ。また、状況によっては伸び縮みもするらしい。
「ようこそ。地球へ」
 有人探査に成功した国の大統領が、彼等を出迎えた。大統領は手を伸ばし、友好の証として握手を求めた。まだ

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