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設計者は人間の可能性を伝えようとしているのではないかの妄想をしながら建築を見る

今日は長野県塩尻市にある木曽アルテックさんを訪問。朝6時30分に会社を出発して、関越自動車道から圏央道を通り中央道諏訪インターを降りる。少し時間があったので藤森照信先生設計による神長官守谷資料館他の建築群を見学した。この建築は鉄平石の屋根を持つ土壁の展示場である。内部展示室では、諏訪大社で行われる御頭祭で供えられた神饌の再現展示や、武田信玄の古文書を中心にした守矢文書などがある。本物の剥製など最近ではあまり見ることがなくなってしまったが、人と獣との関係の中で当たり前に行われてきた儀式から目を背けることはするべきではないと思う。昨今熊による被害がとても増えているけれど、こういうことも人と獣との関係性が変化してしまったことによるものなのかもしれない。

少し歩くと空飛ぶ茶室などの3つの茶室群がある。茶道をやらない人でも一度はメディアで目にしたことがあるだろう。藤森さんの建築はブリコラージュ(器用仕事)である。これは
・ありあわせの材料
・古材の再利用
・粗い仕上げ
・現場のデザイン
を大切にしながら設計を行うこととも言える。この設計手法は利休の茶室作りと同じとも言える。さらにセルフビルドにとても向いている手法でもある。そしてこれは昨今の人間が失ってしまいつつあるものでもあるような気がするのである。

人が自然と向き合いながら逞しく生き抜かなければならなかった太古の昔から身につけてきたものをまだ持っている藤森先生が、その力技の設計を通して僕たちに人間の可能性を伝えようとしているのではないかの妄想をしながら建築を見る、まるでジブリの映画のような考えさせられるひとときであった。

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