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極寒の年内最終レース。全日本レースラフティング選手権大会振り返り

2021年も年末が近づきレースラフティングのシーズンも最終戦です。
本来は既にシーズンオフとなる時期ですが、今年は最終戦がこのタイミングとなりました。

そんな最終戦は来年の日本代表を決める全日本レースラフティング選手権大会です。
どの競技でも「全日本」「日本選手権」などと呼ばれる国内最高峰の大会が存在しますが、レースラフティングにおいても本大会はその位置付けです。

ただ、悲しいかな多くの選手はこの大会を「選考会」と呼んでいて、日本代表になりたい人が参加するレースという認識を持たれている人が多いかなといったそんなレースだったりします。
この辺りは過去の背景とか諸々あるので、一概に言えませんが大会の打ち出し方の問題だったりするかもしれません。

事前の部分は簡単ですが、別で書いたので良かったらご覧ください。

まずは大会以前の状況から

今大会は5月にレースの開催が予告されていました。
新型コロナウイルスの影響で2020年、2021年と世界大会が2度の延期に見舞われたこともあり、代表選考レース自体も開催されていませんでした。

吉野川での代表選考レースも約2年ぶりの開催となります。

この全日本レースラフティング選手権大会自体も当初10月の開催を予定していましたが、9月の新型コロナ第5波の影響を受けて延期となり、11月27日、28日という通常はシーズンオフを迎える時期に開催となりました。

世界大会が延期に次ぐ延期となっている以上、2019年に認定した日本代表チームがスライドで代表で良いのでは??という声も聞こえましたが、これはレースラフティングにおける日本代表の認定システムが絡んできます。

レースラフティングでは通常のスケジュールだと毎年世界大会が開催されています。
選考レースはその大会向けに日本代表を選出していると認識されている側面がありますが、実は〇〇年度日本代表となっていて、1年単位で有効な日本代表を選考しており、その対象となる大会が世界大会であるという立て付けのようです。

なので、本来であれば世界大会が延期となっても日本代表の選考レース自体は有効なのはその対象年度内のみであって、選考自体はやり直す必要があります。

ただ、2020年に関しては世界的なコロナ問題の中で日本でも選考レースが開催出来ない状況だったため、前年の代表チームを特例として認定する対応をしていました。

今回の認定証にも令和4年度との記載

その後、2021年の大会に関しては延期が発表されますが、2022年世界大会開催の機運が高まったこともあり、日本代表選考レースとなる本大会も開催を発表していた流れです。

緊急事態宣言も明けて大会へ向けて各チーム準備を進めていた矢先ショッキングなニュースが流れます。

2022年世界大会の開催地が中国からボスニアへ変更となりました。

過去2度延期となった中国大会は3度目の正直での開催を目指していましたが、中国国内における渡航者に対する厳しい検疫の規定が2022年半ばまで延長されたことを受けて開催を断念、代替での開催地として元々中国大会の翌年に世界大会の開催を予定していたボスニアで2022年の開催が発表されることとなりました。
それに伴い開催時期も当初の8月から5月末に変更となっています。

この経緯だけでも大分長いです。。
ただ、幸いなことに2022年の開催自体は希望が持てる状況になってきました。

今大会から運営体制の大きく変わった全日本レースラフティング選手権大会

やっと本大会の話になってきました。

全日本選手権は、一般社団法人日本レースラフティング協会が主催しています。 
過去のレースではイベントの運営も本協会が取り仕切ってレース運営をされていたと記憶しています。

細かい立て付けは情報としては出ておらず、間違いがあったら申し訳ないですが、今回は大会開催地である吉野川にベースのある現地の運営チームにより運営がされておりました。

本体制でのおそらく初回の運営ということもあり、気になる点はありましたが、印象的だったのが各担当分けがされている分業での運営スタイルでした。

大会、競技、レスキューのディレクター、チーフジャッジなどがしっかり別れていて、且つエントリーなどの受付を行う案内担当など結構役割が細分化されている印象でした。

この運営の良い点としては、今後の大会を運営する際に属人的になり難い点や次回”ある部門”の担当が変わることがあったとしても他の担当が継続できていればフォローが出来やすいといったメリットがあります。

ただ、欠点もあって役割が明確な分、どちらが担当するのか曖昧な業務や担当に関しては、お互い知らなかったという”間にボールが落ちる”現象が起きる可能性が出てきます。
そこを大会全体を仕切る大会ディレクターがどの程度対応できるのか問われる所だと思います。

吉野川という特殊な環境もあって、参加している側としては、非常に満足度の高い大会だったと思います。

11月末の吉野川は極寒、あられも降る中のレース

気候的には晴れ間が除く場面も多く比較的恵まれた日程でしたが、風が強く日が当たってない場所は相当に寒く感じる状況でした。

特に初日は、3種目目のダウンリバーのスタート前に通り雨があり、あられに変わるという珍事もありました。

そんな中で、競技終了後の競技外の区間の降下中に一部のチームがフリップ(ボートの転覆)してしまい、選手が低対応症状になる事態もありました。

その選手は幸い迅速なレスキューとその後の的確な応急処置のお陰ですぐに回復し、翌日もレースに参加出来ましたが、レースに臨む上でのウェア、道具の選び方に関しての知識不足、レスキュー技術の不足は業界的な問題だなと見ていて感じました。

コロナ禍で綿密なコミュニケーションが取り難くなる前からの問題として皆認識はしていたものの特に何もせずに来てしまった現状があるかと思いますので、この辺りは全体として取り組みべきことなのだと思います。

長くなりましたが、レース自体の振り返りをしたいとおもいます。

レース初日。3種目を詰め込んだハードデイ

初日は、スプリント、H2H、ダウンリバーと詰めに詰めたスケジュールです。

レースラフティングのフルセット(4種目)を2日間で行うのはやや無理があると思うのですが、祝日を含む3連休も状況的には限られていてどうしてもこうなってしまいます。

本大会の注目はJr男子部門とOpen女子部門です。
どうしても実力が拮抗している部門の方が面白く見えてしまう部分が残念ながらあります。
競技性はOpen男子のラフティングチームテイケイが圧倒的に高いのだけれどもそこに迫れる人がいない、何をしているのか理解できる人も少ないといった状況で好タイムを出しても「ですよね」的な感じで盛り上がりがありません。

過去には当て馬的に競合チームとしてOBやレジェンドチームが立ち上がりましたが、一時的なものでした。

個人的には彼らが注目を浴びるには、競争相手が出てくることも大事ですが、彼らがプレーとして何をしているのか伝えて理解される必要があると思っています。

そのジャンルの人気は”それ”が凄いと理解できる人の数で決まると思っていて、僕らが子供の頃「ダンス」がクラブやストリートといったちょっと影のあるジャンルだったのに、徐々にポピュラーなものになり小中学校で必修科目になったことでパフォーマーという方々が多く世に出た様に”わからないもの”を”わかるもの”にする理解度を上げていくことで彼らの凄さが伝わることもあると思います。

脱線しましたが、初日の結果はこちらです。

Jr男子

Jr男子

TAMAが1位で初日を終えました。
ハイライトはH2Hの準決勝、決勝です。

フィジカル差を活かして圧倒的にな初速を見せるテイケイJrと安定した実力と勝負強さを持ったTAMA、ここ半年でかなり実力をつけてきた鳥取大学HAKUTOの3つ巴の戦いでした。

準決勝は、HAKUTOvsテイケイJrで、先にゴールしたのはテイケイJrでしたが、ボートが接近した場面で進路妨害のプロテスト(抗議)入ります。

テイケイJr的にはここで順位を落とすと厳しい展開となる中でこのプロテストが認められます。そして決勝がTAMAvsHAKUTOとなり、テイケイJrは3位決定戦に回りました。

決勝でも波乱がおきます。
TAMAが後ろから突かれてHAKUTOに敗れました。

やはり、以前リバベンの時の記事でも書きましたがTAMAは接近戦になった時の対応にやや弱点があるかもしれません。(その前までの戦いで疲弊してしまったのかもしれませんが)

ただ、ダウンリバーがすごかった。
2位テイケイJrに1分近く差をつけてゴールします。

レースラフティングを質量の戦いだとすると特にTAMAはこれまで積み上げた量で勝負を決めた様な気がします。

OPEN女子

地元の注目度が非常に高いカテゴリです。
それもそのはず3チーム全てが地元チームです。

これまでのTHE RIVER FACEが作り上げた環境、実績の元に成り立つ地元の知名度注目度は大きくて、少なからずレースラフティング選手は皆恩恵を受けています。
吉野川でこんなに良い環境でレースができるのも一つの恩恵だと僕は思います。

このカテゴリのハイライトはH2Hの決勝です。
最初の攻防で2位となったはちゅり(Sirius)に刺されます。
後手に回ったTHE RIVER FACEですが、通過するブイの選択を変更して勝負にでます。
ややはちゅりにミスが出た所で巻き返し、僅差での逆転で勝利となりました。

準備期間が少ない中で仕上げてきたはちゅりは相当しんどかったはずです。
ある意味MVPのチームだったと思います。

OPEN男子

ラフティングチームテイケイの圧倒的勝利でした。

僕たちHORUは2位についていますが、この太い線の間には相当な壁がありまして、ポイント差以上の差があります。

HORUとしては、最初のスプリントで2位を取れなかった所など反省点は多々ありまして、2位とはなりましたが達成感というよりなんとかこの位置に残れたといった感じでした。

まだまだやるべきことは多いです。

そんな感じで2日目を終えました。
日本代表の選考としてはJr男子以外のカテゴリはほとんど初日で勝負が決しました。

2日目勝負のスラローム

コースセットがされてみて驚きました。
意図したものだと思いますが、全体的にゲートが高くボートでの接触はほぼ起き得ないセッティングでした。
特徴としては、コース区間となった堂床の川幅をフルに活用した左右に大きく振るゲート、最後の瀬を利用した連続するアップゲートです。
パッと見てかなり立ち上がりのスピードを要求される出力勝負のコースだと思います。(レース後にコースデザイナーが話されていた内容を聞くにはそれだけではないそうですが、)

ここは逆転のチャンスが残っているJr男子のみ行きたいと思います。

この勝負はテイケイJrがTAMAに勝りました。
これはコース設定の妙というか運も味方した形だと思います。

前述の通り、ゲートが高く接触ペナルティのリスクが低いコースでトップスピードで漕げる時間が長い方が有利に働くセットであったため、立ち上がりの初速に分のあるテイケイJrが取りました。

ただ、テイケイJrは攻めの姿勢が強いのですが、粗いというかスピードを求めるが故のミスをしたりします。
特に2本目の10番でタイムを削りにいって接触するところとかはそんな感じかと思います。

対するTAMAは堅実なレース運びでミスが少ない点で好感が持てます。
ただ、爆発的な結果が出ることも無い様な気がするので、ここから世界大会までの半年間での過ごし方に期待したいです。

総合順位

4種目の総合成績です。 この後、14:30より認定式が開催されます。

Posted by 一般社団法人日本レースラフティング協会 on Saturday, November 27, 2021

全カテゴリの総合順位はこちらをご覧ください。

今大会ではテイケイ、THE RIVER FACE、TAMA、そしてPentasが日本代表に認定されました。

PentasはJr女子という1チームしかエントリーの無い中での勝負で気持ちを作るのも難しいレースだったと思いますが、各種目で安定した記録を出し日本代表に認定されています。

以前彼女たちとレースで当たったとこがありますが、今回のレースを見てスタート後の初速が上がっていると感じました。
スラロームも以前は、様子を見ながらスタートしていた印象だったのが、最初からスピードを上げて進入していたので、自信を付けてきているのだと思います。

いずれのチームもボスニア大会まで残り約6ヶ月、頑張って欲しいです。

長くなりましたが、2021年シーズンオフを迎えます

思えば長いシーズンでした。

3月にプレリバベンという草レースからスタートして、約8ヶ月間に及ぶシーズンです。
来年はおそらく2023年の世界大会に向けての戦いがスタートするかと思いますが、今回は6人乗りです。

2019年以来約4年ぶりの6人乗りでの世界大会です。
日本国内も長らく4人乗りでのレースが続いていたので、6人乗りを念頭に置いた練習を積んでいるチームは少ないはずです。
これを勝機と見るのかどうかはチーム次第ですが、6人となるとメンバーを集めるだけでも難しさがあります。

来シーズンどうなるかまだわかりませんが、冬に良い練習を出来るチームこそが勝てるという言葉もありますので、ここからが静かなる戦いです。
皆さん共に頑張りましょう。

今回は超大作になってしまいましたが、読んでいただいてありがとうございました。
それでは!



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