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【秦基博】寒くて心が終わりそうな夜は、オーガスタの弾き語り名手を聞いて泣きながら寝たい【さかいゆう】



こんにちは。考える犬です。
突然ですがあの、最近寒すぎません??



秋口までは比較的暖かかったのに…なんだかここ最近で帳尻を合わせるように冬将軍がスパートかけてきたような印象がある。

いらすとやより冬将軍。思ってたのと違う。


勘弁してほしい。寒いと困る。
何が困るって、寒いと心が弱るのである。


人のメンタルは体感温度と密接に関係しているので、寒いと特に何がなくとも気持ちが沈んでいくし、ましてや職場で何かあった日には誇張でも何でもなく心が終わっていくのを感じる。


いやいや、こんなんじゃだめだ!
そうだ、大好きな音楽を聴こう!!


…で、「そんなとき何を聴いたら良いの?」という話である。


「心を慰めるために聞く音楽」…そうだなぁ。
定番は、ZARDの「負けないで」マッキーの「どんなときも」とか?

…と思っているあなた。
これはあくまで私見だがやめておいた方が良い。


なぜならこれらの楽曲は応援歌である。
「負けないで!」「大丈夫だよ!」と勢いよく言ってくる歌である。


「病んだ人に一番言っちゃいけない言葉は、『がんばれ』」
と聞いたことがある。



少し凹んだ程度なら良い。でも、「心が終わりそうなとき」にこれらの歌を聴くとマジで生命に関わる。その場で崩れ落ち、二度と立ち上がれなくなる恐れがある。「坂井泉水も、もうこの世にいないんだよな…」などといらんことを考えてしまったりする。


そんなわけで、僕がおすすめしたいのが弾き語りの音楽。


というのも、心が弱ってる時ってドラムとベースの入った曲がちょっとしんどい時ないですか??


ドラムとベースといえばリズム楽器を呼ばれ、楽曲におけるリズムを決定づける要素。リズムとは、「リスナーをノせよう」という意志だ。
ちょっと待ってほしい。こちとら落ち込んでいるのである。ノりたくなんかない。やめろ!やめてくれ!!僕に何も強要するな!!!!



というわけで、弾き語り。
これは良いですよ。


何より、彼らはこちらに何も強要しない。
音楽はただそこに流れているだけ。


ついでにいうと彼らシンガーソングライターも皆、孤高の存在である。
彼らはずっと暗い部屋で一人ギターを弾いて、曲を作ってきた(偏見)。
その事実が、僕の心をよりいっそう落ち着かせる。

…前置きが長くなり恐縮だが、そんなわけで最高の歌うたいたちと、珠玉の演奏をいくつか紹介したい。

しんどいあなたも、心に平穏を取り戻してほしい。
我々はそうやって寒い季節を乗り越えるしかない。


1.エンドロール(秦基博)

僕には ただひとつ 小さな温もりも守れなかった

エンドロール / 秦基博

ねぇ いつもなんで 僕はどうして 肝心なことだけが言えないで
ねぇ 今になって もう遅いって ずっとあの日のままで

エンドロール / 秦基博


喪失と、後悔と、思慕の歌。


それでも最後は「歩いていくよ」と言ってくれるのが救いでもあり、一方でどこか諦観のようでもあり、切なさを増幅させる。


今更語るべくもないが、秦基博は弾き語りの名手だ。


多くのファンから「楽器はいらない、もう彼のギターと声だけで良い」と言わしめる実力は、ただごとではない。


それを物語るかのように、彼は「Green mind」という弾き語りツアーを定期的に開催しており、その名を冠するライブアルバムを何枚もリリースしている。


全ての秦基博ファンは、心の深い場所にこの「Green mind」シリーズを保管しており、時折ふと聞いては心のクリーニングを行う。


このアルバム、これまで一体どれだけの心を救ってきただろうか。マジで誇張なしで何人かの命を救っていると思う。そんな弾き語り界の至宝、秦基博。


近年はおそらく喉の疾患が原因で声が不調だなんて言われるけど、そんな最近の「ガラス細工を守るように丁寧に歌う声」も、非常に味わい深いものがある。「昔の方が上手かった」なんて意地悪なこと言わずに、どうか聞いてみてほしい。


彼が今日もギターを弾き、歌っている。


それだけで、何かが救われる感覚がある。
きっと僕だけではないはずだ。


2.Amaging Grace(竹原ピストル)


紹介します。魂の歌うたい。
ぴーちゃんこと竹原ピストルである。


弾き語りの名手といえば、彼を忘れてはならない。


ライブ会場で叩き上げたその歌声とギターの音色は、非凡であり異質。
音楽を奏でるというよりは、まさに弾き+語るを体現したような、まるでギターを携えた野武士のような存在だ。


他の誰にも似ていないそのスタイルから発せられる言葉の数々は、まるで抜き身のナイフみたいに、容赦無くズバズバと心にぶっ刺さってくる。


そこには「上手い」とか、「声が良い」とか、
そうしたあらゆる理屈を飛び越え、ただ「刺さる」という事実だけがある。


断言できる。

どんなに偉大な歌手も、彼のように歌うことはできない。
どんなギターの名手も、彼のように弾くことはできない。

ミジンコくらいに小さくなって
あなたの頭の上を探検したい
こっそりとこっそりとあなたの白髪を
勝手に黒くそめてあげたい

Amazing Grace / 竹原ピストル


この曲はもう、分析や解説するのも野暮だろう。
とにかくまず聞いてほしい。


自分がこの曲を初めて聞いたのは音源じゃなくて、小さな地方のお祭りのライブステージだった。その衝撃を今でも覚えている。


あんな原っぱみたいなステージの、たった一人の弾き語りで、危うく泣かされそうになるとは思わなかった。プロのシンガーってすげーと思った。


今思えば竹原ピストルが異常だったのだ。この曲をあの場所で聴けたことは、最高の幸運だったと思う。祈りと、怒りと、慈愛に溢れた歌。


余談だが、彼のMCは達者なわけではないけど、その人柄で全部持っていかれるような魅力に溢れている。どちらかというとコワモテな彼なのに、どこか可愛らしくて、最高に愛おしくなる。機会があればぜひライブ会場に足を運んでみてください。



彼のライブを見た人は、一人残らず彼のことが大好きになります(断言)。


3.藍(スキマスイッチ)


常田真太郎の繊細なピアノと、大橋卓弥の伸びやかな歌唱。
二人で一つとすれば、広義で弾き語りに含めても良いよね。


お待たせしました。我らがスキマスイッチである。


2005年に全力少年でブレイクした彼らも、今年でデビュー25周年。
その間、数えきれないほどの楽曲を、信じられないほどの高水準で生み出し続けてきた彼ら。あんなに初々しかった若者二人が、今では紛うことなき日本を代表するポップス職人だ。


スキマの音楽と言えば、軽快にして緻密なアレンジがその真骨頂だが、彼らが何よりイカすのは、究極この2人だけでも十分に最高の音楽を成立させられるという点である。


先日放送された「モニタリング」でも、正体を隠した上に二人のギターとピアノ、そして声のみという最低限のステージにも関わらず、ひとたび音を鳴らせば通行人は足を止め、あっという間に聴衆を集めてみせた。控えめに言って格好良すぎた。


二人が二人とも、音楽のツボを心得すぎているのだ。それは決して高尚な音楽ではなく、日本人なら誰もが「良いな」と素直に感じてしまう、良質なポップソングの文脈である。


この二人がステージに立つと、そこには「自分たちの音楽一つでここまでやってきた」という、まるでベテランの漫才師のような貫禄と蓄積、そしてミュージシャンとしての自信を感じる。

「愛」どこで誰が
創造したものなんでしょうか
難解なんだね

藍 / スキマスイッチ

どうかいなくなれ
こんなんなら存在自体よ消えちまえ
来週はいつ会えるんだろう

藍 / スキマスイッチ

上記の楽曲「藍」は、3rdアルバム「夕風ブレンド」の1曲目を飾る楽曲で、長年にわたりファンから人気の高い曲でもある。


内容は、ここにいない誰かを想う歌となっている。その状況は終始一貫して変わらないまま、悶々と思いを巡らし、「ねぇ僕らいつ会えるの?」という問いを残し、曲は収束する。


このメロディだからこそ、この言葉選び。音としての心地よさと、結局全ては僕の考えていることに過ぎないという歌詞の切なさのバランスが絶妙だ。


二人のポップス職人が紡いだ、時を超えて愛される名曲である。


4.君と僕の挽歌(さかいゆう)

最後に紹介するのが彼、さかいゆうである。

これまでの面々に比べるとメディアの露出が少ないので、もしかするとご存知ない方もいるかもしれない。


はじめに言っておきたい。
彼は天才です。


彼のライブをはじめて見たのは、2012年のオーガスタキャンプ。正直それまで僕は、彼の名前も存在も知らなかったけれど、数十分間にわたる彼のパフォーマンスが終わる頃には、もう既にファンになっていた。


「ああこれは天才だ」と思った。


天使のように滑らかでかつ強さも感じさせるその声に、日本人と思えないようなグルーヴ。都会的なポップスでありながら、日本のメジャーシーンで聴くことがないほどテンションノートを多用した音づかいは、あまりに多くのジャンルを内包していて、その時は彼の辿ってきた音楽的背景が全く見当つかなかった。少なくともジャズやR&B、ゴスペルなど、ありとあらゆるワールドミュージックを彼なりに受け止め、咀嚼し、そして自己の作品として昇華する、底知れぬセンスと音楽的教養を感じさせた。


そして何より重要なことに、彼は持ち前のユーモアと柔らかさで音楽の楽しさを全身全霊で享受し、さらにそれを120%余すことなく観客と共有することができた。

淋しさは続くだろう この先も
思い出増えない でも輝いてる

君と僕の挽歌/さかいゆう

How's it going?  How's it going?
調子どうですか?
こちらはツラいこともありますが
キミへと届く気がするから
こうして歌っているよ

君と僕の挽歌/さかいゆう

この曲もまた前述のオーキャンのステージで演奏していて、当時最も衝撃を受けた曲だ。間違いなく万人に刺さるのに、一方でどこまでも個人的な音楽にも感じられる、不思議な楽曲。


それもそのはずでこの曲、さかいゆうが失った親友を思い書いた曲である。リリースされた2012年当時は、奇しくも東日本大地震の直後。日本中が「身近な誰かの死」について考えることを余儀なくされた時期でもあった。


そんな時代に、いなくなってしまった大切な人へ「調子どうですか」と優しく語りかける彼の歌唱は、きっと多くの人を慰めた。一種の救いとなった。


原曲はさかい自身のピアノを中心にシンセやストリングスを緻密に配置され、楽曲をドラマチックに引き立てるが、上記にあげた弾き語りのバージョンも素晴らしい。なんだか彼が自宅で親友のためだけに歌っているようで、よりプライベートな雰囲気がある。



何より、極上なアレンジを全てそぎ落としピアノと声だけとなっても、楽曲の魅力は全く色褪せず、むしろより感情に迫ってくる気さえする。さかいゆうが本物のミュージシャンであることの証明である。


今後時代がどう変わろうと、彼は素晴らしい音楽を生み出し続けるだろうし、彼が歌う限り、彼の音楽を心待ちにする人は増え続けるに違いない。


5.終わりに


ということで書いてきたが、いかがだっただろうか。
ちなみに今回はオフィスオーガスタに所属するアーティストに絞って解説したが、上記で語れなかったアーティストもまだまだたくさんいる。

孤高の弾き語りスト山崎まさよしに、大きな身体にハートフルな歌唱の浜端ヨウヘイ、キュートなメガネの松室政哉に、ナイフのような声を持つ長澤知之、さらにかつては我らが兄貴、スガシカオもいた。本当に日本の宝のようなレーベルなのである。

最近はやや所属アーティストに声の疾患が見られるのと、あとなぜかみんな体型がぽっちゃりして首がなくなる傾向にあるのが気になるが、まぁそれはそれとして、今後も素晴らしい音楽とステージを作り続けてくれるだろう。非常に楽しみである。


さらにはオーガスタ以外にも、弾き語りが素晴らしいアーティストはたくさん存在するので、いずれ心ゆくまで語る機会を持ちたいですね。


この寒い時期、彼らの素晴らしい演奏を聞いて、みなさんの心が少しでも温まってくれたら良いなと思います。



え?僕ですか?



えーと、なんというか…
音楽を聞こうが、寒いもんは寒いですね。




それでは!(逃亡)


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