蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇など…

蒼乃真澄

26歳。三郷の執筆屋。小説、詩、エッセイ、随筆、ブログ、散歩録、語り、駄弁り、寸劇などなど。  だいたい月〜金曜日の20時に更新します。

マガジン

  • アオマスの小説

    どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。

  • ミスチルが聴こえる(短編小説)

    Mr.Childrenの曲を聴いて浮かんだ小説を創作します。 ※歌詞の世界観をそのまま小説にするわけではありません。

  • アオマスの独り言

    蒼日向真澄の個人的な想いを連ねていきます。読んでいただけると幸いです。

  • アオマスのエッセイ

    日常の出来事を言葉にするには、簡単なようでややこしい。だが、美しい。

  • アオマスの詩集

    フワフワと頭に浮かんでいる言葉たちを一本の糸にするように紡いでいき、詩にしてみました。様々な感情に揺さぶられながら、それでも言葉にしてみたい愛や希望などを詩にできたらと考えています。  読んでいただけると幸いです。

最近の記事

  • 固定された記事

沈黙の赤ワイン(小説)

「結婚してほしい」  僕がこの言葉を放つのは、これで三回目だった。一度目は横浜の海が一望できるフレンチレストラン、二度目は東京タワーが見えるイタリアンレストラン、そして三度目の今回は、浅草にある老舗の洋食レストランだった。二度目までが非現実的な場所だったから、今回はあえて手ごろな場所にした。  しかし、彼女は場所など関係なく、「ごめんね」と言って赤ワインを飲んだ。 「どうしてダメなの?」  僕はどうしても諦めきれなかった。彼女と付き合って三年が経つが、これまで彼女とは

    • 君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

         僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる季節が来る。海を見ても虚しくなる季節が来る。冷たい風が吹き、寒くなるこれからが、僕は嫌いだ。 「何聴いてるの?」  放課後。君はイヤホンをした僕の肩を叩いて、訊く。 「言っても知らないよ、君は」  それでも君は僕を離さない。 「いいじゃん、教えてよ」  小さな子供みたいにせがむ君。仕方なく、僕は教える。 「『君がいた夏』」 「『君がいた夏』? 誰の曲?」 「Mr.Child

      • 『4年前の輝き』

         かつての俺は、普通という栄光を掴むべく大学に入り、安定という幸福を手に入れるために新卒で就職した。  しかしこの世は、誰もが普通と安定を獲得できるわけではない。  かつての俺は、真面目で何の個性もない男だった。つまらない、平凡な、だけど普通と安定を欲しがった男。  だからこそ、俺は道を踏み外すべきではなかった。とはいえ、たとえば俺は最中くらい脆いやつだから、崖から落ちてあっという間に粉と化した。  かつての俺はそれなりに希望を持っていた。みんなと同じように生きること

        • 原点回帰

           私には、日向は眩しい。  元々小説家を目指したとき、私は『蒼乃真澄』をペンネームにして書き始めました。それからしばらくして、より運気が高いという『蒼日向真澄』に変えました。それがちょうど二年半前のことです。  しかし、二年半も使っていたとはいえ、どうもしっくりこない。それに、私には『日向』という文字が妙に眩しく感じるのです。2021年11月8日時点では、より明るく生きようと思い改名しましたが、今はそこまで明るく生きたいとも思えない。それよりも、小説を書きたいと願ったあの

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        沈黙の赤ワイン(小説)

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        • アオマスの小説
          151本
        • ミスチルが聴こえる(短編小説)
          64本
        • アオマスのエッセイ
          6本
        • アオマスの独り言
          109本
        • アオマスの詩集
          244本
        • アオマスの日常
          104本

        記事

          何処へ行く?(ショートショート)

           この車、何処へ行く?  行き先は、不明。  しかしどうして行き先が不明なのかさえ、不明。  外観が見えれば良かったけれど、窓の外は何故だかブラックアウトしている。だからここが都会なのか、田舎なのか、それすらもわからない。  もっと言えば、僕は助手席に座っているのだが、運転手がいない。しかしアクセルは踏まれていて、ハンドルは動いている。これはあれか、幽霊の仕業だろうか。  この車、何処へ行く?  行き先は、不明。  面白いのは、赤信号に引っかかればドアを開けて外へ出て確認す

          何処へ行く?(ショートショート)

          それだけで、青春でした。

             喉が渇いた。君は百十円で苺ミルクを買う。  新聞部がスクープ探して駆け抜けていく。  吹奏楽部の情熱音色をBGMに帰宅するあいつ。  僕はもう、スーツを着てしまった大人。  陸上部が走る。なぜか演劇部も走る。  サッカー部が蹴る。バレー部は空を仰ぐ。  科学部がネモフィラを探して散歩する。  君はまだ、制服を着た子供。  入道雲を目指して自転車を漕いだり、  帰りにガリガリ君を買って食べたり、  定期テストに襲われて滅入る、青春。  それだけで、青春でした。  

          それだけで、青春でした。

          池袋にて、一人語り。

           皆さんこんばんは、蒼日向真澄です。  最近は忙しく、いや、ただ怠惰なだけかもしれませんが、noteの更新が滞っています。  実は今、それほど書きたいという気持ちがないというのが本音です。現実が充実していて、気持ちが鬱屈しているわけでもないから、文章にして吐き出す必要がないといいますか。それは精神的に安定していることを意味するわけですからハッピーかもしれませんが、文章を書くことで生きがいを得ている人間とすれば望ましくないかもしれませんね。  とはいえ、小説はボチボチ書い

          池袋にて、一人語り。

          池袋にて、ホルモー。

           みなさまこんばんは、蒼日向真澄です。久々の投稿です。  今回の舞台は池袋。最近、訪れる機会が増えつつある街です。  前回はジュンク堂書店を訪れましたが、今回は池袋駅にある三省堂書店へ。本屋大賞発表後ともあって、店先にはノミネート作品が並んでいました。いつか、私の作品が置かれていたらいいですね。  今回は気になっていた恩田陸さんの『灰の劇場』を購入しました。読むのが楽しみです。    ちなみにこの日の天候は晴れ。雨マークがあったのですが、思ったより天候に恵まれました

          池袋にて、ホルモー。

          墓、桜、月、それから猫 『春の歌』

           四月十日は祖母の命日。だから毎年、その近くになると墓参りへ行く。  墓というのは鳥の囀りが響き渡るほど静かで、蝶が気になるほど気配がない。  だからこそ、訪れに気づく。  わずかな耳鳴り。それからすぐに、一匹の猫が僕の足に寄る。  そうか、今年は猫の姿で来てくれたのか。  僕は祖母が眠る墓に手を合わせ、線香の煙を纏って消える。  今年は桜が長い気がする。開花が遅いだけだろうか。  桜の木をじっと眺めていると、先ほどの猫が呑気に鳴く。  しかし、もう祖母の気配ではない。ただ

          墓、桜、月、それから猫 『春の歌』

          アマテラス、日向ぼっこ 『春の歌』

          日向ぼっこする休憩中 宙ぶらりんな思考回路だが 桃色の風が吹くなら どうでもいい、どうでもいいんだ ひとりぼっち鬱辛いです 新入生の哀れな言葉には 明け方の陽が効くから 大丈夫、大丈夫だから 長続きする必要はないよ 人生とはいえ気軽に進もう 桜を憂う気持ちもわかるよ それでもね、気楽に生きよう 日向ぼっこするアマテラス ルンルンルンなプラス思考で 金色の稲穂を待つから なんとかなる、なんとかなるさ

          アマテラス、日向ぼっこ 『春の歌』

          同級生 『春の歌』

          ガラガラとスライド式のドアを開ける。 綺麗に区画整理された机たち。 ピカピカにされた黒板。 窓は、開いている。 僕は指定された席に座る。 わずかばかり居る生徒たち。 それから続々と来る生徒たち。 彼らとは、これから同級生になる。 話しかけようか、しばし迷う。 しかし吃る癖があるから避けたい。 読書でもして壁を作ろうか。 そんなとき、隣の人が声をかけてきた。 「おはよう」 僕も返す。 「おはよう」 彼はニカっと笑う。 「どこから来たんだ?」 「僕は、北の方から」 「へえ

          同級生 『春の歌』

          食べ記録(3月)

          三月も色々食べました。 ・サンマルク サンマルクはお手頃価格な上に雰囲気も好きで、よく利用しています。この日はお昼ご飯も兼ねていたため、チョコクロとウインナーパンを購入。チョコクロ、好きなんですよね。コーヒーも変な癖が無くて美味しいです。 ・ちゃんぽん あんまり脂っこいラーメンだとお腹を壊すので、ちゃんぽんを食べます。この日は北海道のアンテナショップで買ったガラナサワーを一緒に。なんというか、デカビタみたいな味がしました。 ・神戸元町ドリア 家族でつくばに行ったときに食

          食べ記録(3月)

          『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

           ガラパコス携帯に、一通のメールが来た。 『今日バイトサボったから。これからそっち行く!』    彼は中華屋で調理のバイトをしていて、いつも脂ぎった床を踏みしめて、ほっぺがぼうっと火照るほどの熱さの中でフライパンを振っている。    そんな彼が、バイトをサボる。きっと「熱が出た」なんて嘘でもついて。    二〇分後、彼が私の元へやってきた。 「悪いな、待たせた」 「待たせたって、ここ私の家だけど」 「そうだよな。待たせた、が癖になってて」 「何それ」 「ああ、そうだ。これ

          『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

          つくばにて。

           随分と遠回りしたが、元の場所に戻ってきた。そんな気がする。  思い返せば、俺はほんとに不器用で、どうしようもない人生を送ってしまった。それでも、死ぬことはしなかった。それだけは褒めてほしい。  これからは、惑わされることもなければ、期待することもないだろう。それでいい。これからはとことん内側にいる自分と向き合うだけだ。  それにしても、ここは空気が美味い。東京よりも、ずっと美味い。そんな気がする。東京も好きだし、いまだに憧れている。東京で輝ける男になりたかった。それを

          つくばにて。

          路地(ショートショート)

           一人、路地を歩く。何も考えず、ただひたすらに。  一匹、猫が通る。彼もまた、何も考えずひたすらに生きる。  彼らはお互い黙っているように見える。しかし、挨拶している。 「おはよう、白い猫」 「おはよう、暇人」  一人、路地で煙草を吸う。バレないように、ひっそりと。  一匹、猫が近寄る。彼は吸えないが、たむろする。 「やあ、白い猫」 「よう、暇人。今日も暇か」 「暇だ。社会は騒がしいってのに、俺は暇だ」 「お前も忙しくしてみるといい。そしたら、暇人なんてあ

          路地(ショートショート)

          箱庭の箱を壊す (ショートショート)

           僕が生きる世界は狭い。わずかな人間関係、インスタントばかりの偏食生活、趣味もダラダラYouTubeみたりする程度で、つまらない。  だから、箱庭の箱を壊すように、僕の周りにある壁を壊してみた。  一人の男と出会った。彼は革命。ペティナイフを後ろポケットに忍ばせて、いつだって「チェンジ・ザ・ワールド」が合言葉。  僕は彼と友達になった。僕も「チェンジ・ザ・ワールド」と叫んでみた。心の中にあったモヤモヤが霧消していく感覚が、愛おしかった。  ほどなくして、革命を起こした

          箱庭の箱を壊す (ショートショート)