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iBasso DX160で音の旨味を引き出そう

消費税増税を控えた2019年の秋、ミドルクラスのポータブルプレイヤーを購入しようとするユーザーにとって悩ましい事態となりました。FiiO M11がその性能の高さと全部盛りというインパクトを与え、HiByからはGMS認証を通しているR5がリリース、SONYからA100系ウォークマンが発表され、iBassoからはDX160と、ポータブルオーディオ界隈はざわめいていました。

DX160は数値上のスペックの高さと増税後でも4万円を切るという価格から話題となり、予約開始してすぐに1次販売分は完売してしまいました。自分はHiBy R5と迷いに迷った結果、DX160を2次販売分で手に入れることが出来たのでした。

DX160はこんなDAP

最近のiBassoといえば、DX220,200,150に搭載される交換可能なアンプモジュールといっても過言はないでしょう。しかし、交換可能にしたために発熱や回路の制限が問題となっていました。DX160はアンプモジュールには対応してはいませんが、自由度の上がった設計により、上位機種にも引けを取らないスペック上の数値を達成出来たということらしいです。

DX160は次のような特徴があります。
・DACにシーラスロジックCS43198を2基搭載
・DX220と同等の5インチ1080p(1920×1080)の液晶画面
・4.4mm5極のバランス端子
・ラインアウト・同軸出力兼用の3.5mmアンバランス端子
・5GHz/2.4GHz対応のWiFi、Bluetooth5.0の無線規格に対応
・USB Type-Cポート、QC3.0、PD2.0の急速充電に対応
・Android8.1を搭載
・384kHz/32bitのPCM、DSD256までネイティブ再生
・MQAの再生に対応

そんなことよりも、個人的には6.4Vrmsという最大出力に、0.00022%の歪み率、S/N比が130db、クロストークも-125dbというスペック値にとても興味を惹かれました。数字だけではA&ultima SP2000と対等という凄まじい内容です。数字だけでは音の善し悪しは判断できませんが、これは一体どういうことなんだ…と気になりませんか?なりますね?なりました。

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音について

DX160のためにDX120を手放してしまっていたので比較は出来ないので、その辺はご容赦ください。といっても、自分が聞こえる音と他人が聞こえる音は同じではないので、この人はこう感じているんだな〜程度に受け取ってくださいまし。また、有線至上主義なので無線接続のイヤホンは持っていないのでその辺は無評価です。

プレイヤーの設定は次の通りです

プレイヤー:Mango Player
ゲイン:High
フィルター:Fast Roll Off

HIFIMAN RE800Jで聴いてみる

まず感じたのが空間の広さ、解像度の高さと定位の良さです。音の奥行き、上下の高さ音の位置が掴みやすいです。楽器や音のレイヤーがハッキリとしているといいますか、頭を中心にしてボーカルが中央前方、下側に低域、周囲を囲むように高域が位置している感覚です。

RE800Jの広い空間の表現とキレの良い高解像度な音という特徴が、DX160ととてもマッチしていますね。RE800Jは感度は105dBですがインピーダンスが60Ωと高く、少々パワーを必要とする機種です。DX120でも出力は問題ないと思っていましたが、DX160は余裕の音だ、出力が違いますよ。いやほんと、出力って大切なんですね…

次に感じたのが、バックグラウンドの黒さ…なんというか…音と音の間がダラダラとしていないというか…例えると、液晶TVの黒がちゃんと黒いっていう感じ…

えーと、一般的な液晶TVって液晶パネルの画面の後ろからライトで照らしているじゃないですか。液晶自体は発光しないので。それゆえに、液晶は黒になっていたとしても、バックライトの影響で完全な黒ではなく、明るい黒になってしまうのです。

DX160は液晶の黒が引き締まった黒、つまり、無音な状態がハッキリしていると感じるのです。静まり返ったホールで静かに演奏が始まり、ふっと音が湧き出てくる。それは静かで優しいけど、聴衆の耳にしっかりと届く…そんな感覚を覚えます。これがS/N比の良さ故、なんでしょうか。

バランスとアンバランスでも比べてみましたが音の傾向は似ています。バランスは左右の広がりが増え、全体的にスッキリします。広いスクリーンで映画を見ている様な感じです。アンバランスはバランスに比べると中央よりです。低域が中央でどっしりと構えているので安定感があります。バランスだから優れている、と言うものではないですね。

final E3000で聴いてみる

おれはまだ、本当のE3000を知らなかった…

E3000は低中域重視で柔らかな響きを持つという特徴があります。DX160はそこにキレの良さと空間の広がりを加え、柔らかくも歯切れよい心地よい響きを与えてくれます。特にアコースティックな音源との相性は抜群です。
タイトで質感豊かな低域、艶やかで余韻たっぷりな中域、存在感を増した高域とE3000の魅力が削がれること無く増幅されています。

そもそもハイゲインで音量40超って…E3000、なんて恐ろしい子なの…

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いろいろ聴いてみた感想

解像度の高さ故か、ボーカルの表現力がとても良いです。Aqoursの様に多人数のボーカルがDX120だとうまく聴けなかった(分離が悪く、薄っぺらい感じ)り、男性ボーカルがなんか迫力がなくイマイチだったり(録音が悪いのかもだけど)していましたが、DX160はAqoursの9人の存在感がしっかりあり、ボーカルは前面で主張してきます。

楽器の響きが兎に角良いし、エロティックなんですよ。金管楽器の弾けるような響きや、ギターを爪弾く感じが耳元でくすぐったく感じたり、乾いた金属の響きがいちいち脳を刺激してくるんです。音を聴くのが楽しいし、気持ち良いんです。

電子音だって負けていません。音の粒立ちが良く、空間が広いので音がごちゃつかず聴きやすいです。ゲームのサントラを聴いていると、ゲームの世界に入っているかの様に思えます。

DX160の傾向をまとめると

・空間が広く(左右に広い)、定位が良い
・音のバランスは低域がやや多いカマボコ型な感じ
・全域に渡って解像度は高く、量感がありタイトな低域、艶やかな中域、ドライで硬めな高域
・ノイズも少なく繊細な表現も可能
・パワーこそ正義
・フィルターの変更による音の変化が分かり易い

DX160は高い解像度と広い空間表現を持ち、イヤホンの素性をそのままに、強力な出力で潜在能力を引き出すのではないかと感じます。中庸な味付けに思えますが、素材の味をしっかりと引き出した旨みたっぷりな聴き応えのある音だと思います。やはりカタログスペックは伊達じゃない!

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音以外にも良いと思っている所

・ボリュームがダイヤル式で調節しやすい
・SDカードのスキャンが結構早い
・Android機にしては起動が早い

あまり好ましくないと思っている所

・起動後、再生アプリを起動しないと音楽が再生出来ない
・電池の持ちは良くない
・OSがAndroid
・microSDカードがちょっと出し入れしづらい

こうなったらいいなという希望

・Mango OSモードが欲しいな(Androidに余計な処理をさせたくない)
・プレイリストの並び替えをしたい
・シャッフル再生の開始ボタンが欲しい

いろいろやってみた

Google Play Storeの導入

ファームv1.02.109に更新したからか、APK PureからGoogle Play Storeをインストールしたところ、普通にログイン出来ました。アプリの購入も問題なく出来ました。
何となくですが、ストアを入れてから電池の減りが早くなったような…?

HiBy Musicを使った遠隔操作

DX160をサーバー、iPhone XRをクライアントとして接続出来ました。iPhoneからの操作も行えました。電車内では全然繋がりませんでした。
個人的には遠隔操作はどうでも良くなったので、そりゃそうだよねという程度の感想です(お仕事でBluetooth関連には苦しめられたので、Bluetoothは基本的に信頼しないマンなのです)

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購入までの葛藤

DAPを変えようと思ったのは、DX120では限界を感じることが多くなったから、というのが大きな理由です。限界というのは、とあるハイエンドなイヤホンを試聴した際に「痩せた」とか「貧弱な」鳴り方をしたという印象を受けたからです。実際、DX160で同じイヤホンを再度聴くと、まったく違う良い印象でした。これが「鳴らしきれていない」ということなんだろうなぁと思ったが最後、気になって気になってとまらなくなってしまいました。かと言って高級機種には手が出せず…

そんな最中、HiBy R5の話が出てきました。DX120と同じくらいのサイズで出力は向上、DX120と同じくらいのバッテリーの持ちと、HiBy Link(Bluetooth)での遠隔操作が行えるというのが良いなと思っていました。DX160はR5比で横幅が大きくポーチに入らない、バッテリーの持ちも悪く、遠隔操作が出来ないという所が引っかかっていました。

価格は両機種ともインターナショナルで$399の価格を付けていましたが、日本での価格(10%の税込み)はR5は約5万円、DX160は約4万円と1万円の差が出ていました。1万円の差は大きい…DX120とほぼ同じ価格じゃないか…どういうことなの…と、これには心が動きます。

実際にDX160とR5を比べられる機会があったので比べてみました。

大きさはR5が圧勝です。その反面、画面が小さくて細かな操作がしづらく、操作感が悪く感じました。iPhone XRに入れたHiBy MusicでR5と接続して操作感を試してみようと思いましたが、iPhone XRからR5が見つけられなく断念しました(所持しているAndroidタブレットにHiBy Musicをインストールして試してみると遠隔操作出来たんですけどね)

そしていちばん重要な音質。R5はウォームで密度がありエネルギッシュな感じ。悪くはない。DX160は響きが広く、解像度が高い感じ。自分が求めていた音は…DX160でした。輸入代理店であるMUSINの対応も良い感じだし、これだけの音が得られるのであれば、デメリットなぞ消し飛びますよ。

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