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final MAKE2に挑戦してみた

イヤホンの沼にはまり込んでしまった方にはお分かりでしょうか、好みの音や好みの曲にベストマッチなイヤホンを探し求め、はたまたどんな曲でも気持ち良く聴ける万能なイヤホンは何処かと、気がつけば沢山のイヤホンに囲まれていた!
しかし、それでも体は、耳は更なる音を、未知なる音を求めてしまうのです…宿命…
(えっ、DAPもアンプもケーブルもイヤピも増えるですって!?あなや!なんて恐ろしい!)

そんな果てしない旅路の途中で我々は出逢ったのです。救世主となりうるのか、更なる沼へ誘い込む甘い囁きか…

その名も final MAKEシリーズです。

新しい挑戦

MAKE…作り上げると言う事です。好みの音を自分自身で作り上げてしまおうという、finalからの提案…もしくは挑戦なのかもしれません。

finalは「自分だけの音を見つける」というスローガンを掲げ、クラウドファウンディングサービス「Makuake」において、2017年12月14日(木) 11:00から2018年3月30日(金) 18:00まで出資者を募りました。
その結果、1053人のユーザーと34,955,600円を集めたのです。 市場に出た時点で未完成だというものを製品とするというのは難しい決断だったと思います。
時間は掛かりますが、クラウドファウンディングを使うというのは良い試みだと思いました。

私はMAKEシリーズの試聴会に数回参加してきました。試作機の時点でもMAKE1はかなりの完成度でしたね。
私としてはE3000が好きな事とfinalの作るハイブリッドイヤホンにかなり興味があったのでMAKE2を支援する事にしました。

finalにとってもマルチドライバーとハイブリッドのイヤホンは初めての試みです。(マルチドライバーとしてはLAB1が初ではありますが、フルレンジ2基の1WAYなので、高中低の3WAY3BAは初めてです。)
シングルドライバー製品を作ってきたfinalですが、技術の進歩と蓄積から納得いく物が作れるようになった為、MAKEシリーズで挑戦するという話をイベントか何処かで聞きました。finalとしても挑戦の一手だったのでしょうね。

聴いてみましょうか

まずは、素の状態で聴いてみます。

が…音量が…取れない!パワーには定評のあるSuperMiniをもってしても、ボリューム22/32も必要としたのです。これは只事ではないですよ!それもその筈、インピーダンスは13Ωなのですが、感度が92dB/mWとかなり低いです。

角張った見た目ですが、耳に入れてみると装着感がとても良いんですよ。耳に当たる感じはほぼないのではと思えます。重量もあるのですが、保持力も高く安定した装着感を維持してくれます。これは素晴らしい!
遮音性は結構高いですが、音漏れはそれなりにあるようです。静かな部屋で1mくらい離れていても何を聴いているかがわかると言われました。
(イヤーピースやボリュームの状態に左右されるとは思います)

出荷状態では、音導管の開口部にA-8のフィルターが付いていました。他の箇所にフィルターはありませんでした。
この状態では低域の量感が支配している感じです。根本的に性質の違うドライバーが存在しているので、柔らかさとスッキリさがハッキリ分かれている奇妙な違和感がありました。
開封直後はかなり強く感じられましたが、半日ほど鳴らしたところ違和感はかなり減りました。半日〜1日程は鳴らしてみた方が良いかなと思います。
(個人的にはエージングはほどほどにして、早く遊ぼうぜ!って思います)

音のバランス
高域★★
中域★★★
低域★★★★

ゆったりと豊かな低域にしっかりと存在する高域という印象です。低中域を担当するダイナミックドライバー(DD)と高域を担当するバランスドアーマチュアドライバー(BA)の役割がハッキリとわかります。
低域はルーズ気味である程度の粘度を保ちながら周囲に広がっていくような感じです。

場の広さ
上下★★★
左右★★★☆
定位★★★

中央にまとまっている印象です。中央からふわっと広がる空間の使い方が、あー、finalの音だなぁと安心させてくれます。

解像度・表現力
高域★★★☆
中域★★★
低域★★★

DDに比べてBAはスッキリと鳴るので、低域の質量にも埋もれないですね。低域は柔らかいですが形を判別することは出来ます。
フィルターで動きを抑えてどう変化するかが楽しみでもあります。

音の質
響き・余韻★★★
抜けの良さ★★★
柔らかさ★★★☆

BAとDDで分かれるのが難しいところですね!
finalのDDらしい柔らかさと丸い空間に響く、高域が気持ち良いですね。BAらしい抜け感は少なく、A-8フィルターで抑えているのでしょう。

チューニングだ!

いろいろ考えたんですけど、好きな曲に合わせるのが良いかなと。万能な音を求めると底なし沼だし、HIFIMAN RE2000(20万くらい)とか買おうぜ!って話なので。
高域の広がりを持たせて、低域は少し締めて広がりすぎないように、というイメージを意識しました。

最初に試したのは、
・音導管開口部:A-1
・音導管:B-1
・ドライバー開口部:A-1
という組み合わせです。

結構イメージ通りに行きました。ただ、高域にチリチリするノイズが混じったり盛大に刺さるので、これはもう少し抑えなくては。ただ、この尖った感じ、嫌いじゃない!
この時にかなり音量が出るようになっているのでビックリしました。
(ヘッドホン祭2018秋でこの話をしたところ、音導管のフィルターで音量も変化するとの事です)

次に試したのは、
・音導管開口部:A-1を2枚
・音導管:B-1
・ドライバー開口部:A-2
という組み合わせです。音導管開口部のA-1が2枚というのは、ドライバー開口部のフィルターをそのままくっつけました(笑)

最終的には
・音導管開口部:A-2
・音導管:なし
・ドライバー開口部:A-2
としました。音導管開口部をA-2にしたのは、なんだか気持ち悪かったからです(笑)
音導管部分のフィルターを無しにしたのは、最初の尖った感じに戻したいけど、刺さりは抑制したいなーという所でこうなりました。

チューニングレシピ公開!

・音導管開口部:A-2
・音導管:なし
・ドライバー開口部:A-2
・ベント:なし
・イヤーピース:Sedna EarFirを深めで装着
・ケーブル:LZX47191(※)
(※LZ製 8芯6N単結晶銅&銀メッキ銅線ミックスケーブルの3.5mm4極)

高域寄りのセットにしました。女性ボーカルをメインにして高域の広がりと伸びをイメージしました。低域のボワつかず締まりのある量感がポイントです。
また、音の広がりが増えました。特に高域の広がりが顕著です。頭の外からの音を感じるレベルです。それでいて音の位置はシッカリとしています。

音のバランスはこんな感じに変化しました。
高域★★★★☆
中域★★★
低域★★★☆

場の広さ
上下★★★☆
左右★★★★
定位★★★

レシピ改良その1

・音導管開口部:A-2
・音導管:なし
・ドライバー開口部:A-2
・ベント:A-2
・イヤーピース:Sedna EarFirを深めで装着
・ケーブル:LZX47191

音のバランスはこんな感じに変化しました。
高域★★★★
中域★★★
低域★★★☆

場の広さ
上下★★★☆
左右★★★☆
定位★★★

ベントにA-2フィルターを追加しました。なんだよ全部A-2じゃねーか手抜きかよなんて思わんといてな!
微妙な変化ですが、この微妙な変化がうまくハマった感あります。

ベントにフィルターを追加すると、音の広がりを減らして低域の密度が上がる印象です。これで低域の量感、質感が強調される様になるのかなと思います。

何故ベントにフィルターを追加したのかをお話しておきましょう。

やや高域が広がりすぎたと感じてきた事、低域をもう少し欲しいと感じて来るようになったからです。
ここまで来たらイヤーピースでの補正かなと思い、サイズ変更や手持ちのイヤーピースに交換してみましたがどうにもしっくり来ません。結局元のSedna EarFitに戻ってきてしまいました。
ならばとドライバー開口部をA-1に変えたり音導管にBフィルターを追加したりしましたが、前にも試した結果が今のセッティングなので、やっぱり元に戻りました。
で、じゃあベントにフィルターを追加してみるかとなりました。まずはA-5です確かに低域の主張が増えますが、全体的に音の抜けが減り、息苦しい感じになりました。
これじゃいかんとフィルターの番手を下げようとしたところ、ここはA-2だろうと私の中のゴーストが囁いて来るのでA-2にしました。
変化としては微妙ですが、final的な空間の丸みになり、いい感じに収まりました。
A-2フィルターは最高だな!

レシピ改良その2

・音導管開口部:A-2
・音導管:B-6
・ドライバー開口部:A-2
・ベント:A-2
・イヤーピース:Sedna EarFir
・ケーブル:LZX47191

音のバランスはこんな感じに変化しました。
高域★★★
中域★★★
低域★★★★

場の広さ
上下★★★
左右★★★
定位★★★

DAPを変更したら音が散らばる感じになってしまい(特に高域)、落ち着かせるために音導管にフィルターを追加してみました。とりあえずB-6を入れてみました。派手な高域は減りましたが、全体的にいい感じに落ち着きました。低域が多い感じもあるので、B-4に変えてみるのもいいかも。

レシピ改良その3

・音導管開口部:A-2
・音導管:B-6
・ドライバー開口部:A-2
・ベント:なし
・イヤーピース:Sedna EarFir
・ケーブル:final シルバーコートケーブル

音のバランスはこんな感じに変化しました。
高域★★★★
中域★★★☆
低域★★★☆

場の広さ
上下★★★★
左右★★★★
定位★★★

finalのシルバーコートケーブルを手に入れたので装着してみましたらこれがめっちゃイイ!!求めていた最後のピースがバッチリとはまった感じですね。
全体的に情報量が増え、特に中高域の伸びや広がりが向上します。低域の質感が良くなりすぎたので、ベントのフィルターを外しました。このケーブルは凄いですね。
E3000-Tでケーブル変更の威力を体感したのですが、MAKE2ではそれをも上回る衝撃です。

コツみたいなもの

一晩耳を寝かせるということですね。
1.出荷状態で聴く。(半日〜1日鳴らすと良し)
2.印象をメモしておく。
3.逸る気持ちを抑えて寝ます。
4.聴きながら、どういう音にしたいのかをイメージする。
5.その思いを抱きながら寝ます。
6.少しいじってみます。
7.2でメモした印象と比べながら今の印象メモします。
8.その日はそのまま聴きながら寝ます。
9.7でメモした内容に沿って少しいじります。
 (このとき、大きく変えないほうが良いかもです)
10.7〜9を繰り返します。

やたらと寝ていますが、耳と脳は休ませたほうが良いと思います。
finalのイヤホン講座でのお話で、脳内には音のデータベースが構築されていて、そのアップデートは寝ている最中に行われる(だったかな?)というお話がありました。
finalの音響学講座(http://snext-final.com/acoustics/)にもあるように、短期記憶内での比較となりますので、チューニングするときは集中して、でも、どうせ分けがわからなくなるので、焦らずにね!という感じで良いと思います。

チューニングは楽しかった

チューニングできるイヤホンとしては、finalの組み立て体験会専用モデルのTANEがあります。私も持っていますが、正直なところTANEはあまりチューニングの効果が分かりづらくていろいろやってみたのですが、何となく飽きてしまいました。
MAKE2は音が良いのもあり、どう変えていこうかというイメージがしやすかったのが良かったのかなと思います。それにチューニングの違いを結構感じ取ることが出来たので楽しめました。
我々が普段から行っている(?)イヤーピースの交換や、ケーブルの違いを楽しむのと同じ方向性ですね。それが、もう少し深く行えるというものです。そりゃあ楽しいですよね!

finalのおかげ

私のイヤホンに対する考え方というのはfinalから教わってきたと言っても過言ではありません。finalは高級機メーカーという印象がありますが、組み立て体験会や、Eシリーズの価格帯等、幅の広いユーザーに向けての取り組みを何度も行ってくれます。過去にはイヤーピース講座やイヤホン講座を開催したり、音響学講座も公開しました。このお陰で、音の評価軸を自分の中で持つことが出来ました。
幅広いユーザーを獲得することは、ビジネスとして大切なことです。嫌らしく言えばお金儲けの手段です。だとしても、ユーザーを大切にしてくれるfinalには感謝の言葉がいくらあっても足りません。MAKEシリーズという取り組みに出会えて本当によかったです。

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