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カカオの木の下にある小さな物語

赤道の太陽を浴びて、カカオの木は力強く成長してきた。その証拠に、木の下に小さなチョコレート色の種が堂々と転がっていて、拾ってくれるのを待っている。その種は、いつか誰かを幸せにするチョコレートになることを夢見ていた。

小さな種は、まだ何も知らず、ただ暖かい土の中で眠っていた。その中には大きな可能性が秘められていた。ある日、小さな種は雨に打たれ、土の中を流れ始めた。川を下り、海を渡り、知らないうちに遠くの国へと旅立った。

旅の途中、小さな種は様々な生き物と出会って、色んな風景を見て、様々な経験をした。時には危険な目に遭うこともあったけど、持ち前の生命力で乗り越えていった。そして、ついに小さな種は、チョコレート工場のある港町にたどり着いた。

やっと、着いた。

チョコレート工場は甘い香りに包まれた魔法の場所で、最初からずっとここにいたような気分になり不安感がなかった。熟練の職人たちが、カカオ豆を丁寧に焙煎して香り高いチョコレートへと作り上げている毎日。小さな種は、チョコレート工場の中で様々な人と出会って、たくさんのことを学んだ。そのうちに自分の中で持っている秘密に気がついた。

いつか自分もチョコレートになる。そして、誰かを幸せにすることを決意した。

小さな種は、夢に向かって成長し続けると決めたのだ。

小さな種は、チョコレート工場で大切に育てられた。
温室の中で、太陽の光をいっぱい浴びて、長くゆっくりと成長してきた。毎日、職人たちは小さな種に水をやって栄養を与えている上で、自分の夢も大切にした。

「あなたは、いつか誰かを幸せにするチョコレートになるんだよ」

小さな種は、職人たちの言葉に耳を傾けて、日に日に大きくなった。
ついに、小さな種は芽吹いてきた。小さな緑色の芽は、希望の象徴のように、力強く成長していった。芽は、日に日に大きくなり、やがて小さな苗木になった。苗木は、たくさんの葉をつけて、さらに成長を続けた。

順調に成長。

ある日、苗木は初めて花を咲かせた。白い花は、太陽の光を受けて、美しく輝いていた。花が散った後、小さな緑色の実がついて、時間が経てば経つほど、大きくなって、チョコレート色へと変化してきた。

実が熟した。
職人たちは、丁寧に実を収穫してチョコレート作りへ。

熟練の職人たちは、カカオ豆を焙煎して粉砕。それをやっとの思いで練り上げた。
板チョコ、トリュフ、ボンボン…どれも美しく、美味しそうな輝きを放っていた。

小さな種は、夢を実現した。誰かを幸せにするチョコレートになった。

チョコレートは、人々の手に渡り、様々な物語を生み出す。誕生日のお祝い、大切な人への贈り物、疲れた時の癒しなど。チョコレートは、いつも人々のそばにある。いつもある。

Massi


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