新しいインドへ旅に出る vol.1 〜旅の準備〜
僕がイタリアにいた頃、いやおそらく今もそうだと思うけど、日本料理といえば寿司、ラーメン、刺身、天ぷらのイメージが強かった。どれもイタリア料理にはない味と調理法で人気が高く、イタリア全土に広がっている日本料理と言えるだろう。そんなポピュラーな料理以外にも定食や焼き鳥なども知名度が上がっているが、実際に日本に住んでいる僕が驚いた料理は、意外にも「カレー」だ。
カレーに使われるようなスパイスは、実はイタリアにもないことはない。ターメリック、ナツメグ、唐辛子などは存在している。主な使い方としては、ある料理にスパイシーなアクセントを加えるために、かける。非常にシンプルだ。
そんな国から日本に来て、日本料理の一つと言えそうなほどに人気のある「カレーライス」を食べてから、僕の人生は変わった。そして、カレーについて深く知りたいと思い始めた頃、インド料理と出会った。
日本料理が大好きな僕が、この頃はカレーをはじめとするインド料理を週一で食べるようになった。すると今度は、お店で食事を楽しんでいるうちに、インドの各地域における食文化の違いや地域料理、さらには周辺国の料理などにも少しずつ興味が湧いてきた。
カレーとナンしか載っていないメニューでは、実はまだインドの旅が始まっていないということもわかってきた。分厚いメニューに細かな料理の説明、お店や料理に関係する地域のことも書いてあれば間違いなく最高に美味しさが増す。神戸市六甲で食べたインド料理はまさしくこれだった。未だに忘れられない味で良い思い出にもなっている。僕が住んでいる ”地元” 金沢のインド料理店「アシルワード」(金沢市長町)もそんなお店だ。
僕はインドへ行ったことがなく、インド料理の現地の味はわからないけど、自分にとって現地で経験のある人が作る料理の魅力は、そこから会話が生まれたり、お土産話までもらえたりすることだ。日本に住み始める以前、イタリアで日本人シェフのレストランに行った時には、お店に入る前からテンションが高まり、日本人がいるというだけで店内での満足度も上がって、まるで日本に行ったような気分になった記憶が今も残っている。
そして今、ここ金沢では「アシルワード」のおかげで、お店にお邪魔するたびにインド旅行が始まる。現地で料理を勉強して10代のうちから料理人として働いてきた「アシルワード」のシェフたちが現地と同じ感覚で作る様々なメニューを通して、金沢にいながらインドの食文化を楽しめるのだ。
本人もまだ信じられないけど、金沢に移住してからこんなにインド料理にハマってしまった結果、今では「アシルワード」の日本人オーナーと仲良くなって、そこで働いているインド人シェフの仲間もできた。 この出会いを活かして、僕はインド料理を間近で見て研究していくことにした。「アシルワード」のオーナーにも快く協力してもらえることになったので、「イタリア人目線のインド料理」「イタリア人目線のインドと周辺国の食文化」をテーマにしたシリーズを、ゆっくりと1年かけて月一本のペースで執筆していこうと思う。
イタリア人である僕から見たインド料理と食文化。「アシルワード」のシェフたちについても深く取材してみたいし、僕の料理の知識が増えてきたら、イタリア風アレンジのカレーやインド料理などユニークな執筆もできるかもしれない。
僕にとって、食べることは旅をすること。マッシが熱心に研究するインド料理シリーズを読めば、きっとカレーが食べたくて仕方なくなるだろう。
では、続きをお楽しみに。
Massi
みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。