マガジンのカバー画像

生活の詩

83
日常生活を切り取った詩です。
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】悔いよ己を

【詩】悔いよ己を

悔いよ己を 我が恥ずべき過去を
乱るる心を 偽りの行いを
後悔による賛美を 我が醜き身を

悔いよ己を 我が恥ずべき現在(いま)を
偽りの中の沈黙を 沈黙の中の偽りを
鏡の中の虚像を そのうそで固めた眼光(ひかり)を

悔いよ己を 我が恥ずべき未来を
偽才に溺るる弱身を またその過程を
怖れを知らぬ過信を 冷たく映るその影を

【詩】ひとりぼっち

【詩】ひとりぼっち

気がついてみれば いつもひとりぼっち
気楽につきあっていけそうな 皆さんですがね
振り向いてみれば 誰もいなくなってね
そんな毎日が ぼくをつつんでる

寂しいというのが 本音なんだけど
いつもひとりっきりで 強がってみてね
ひとりぼっちなんですね もともとが
そうそう どこへ行ってみたってね

だから 今だけは笑っていましょうよ
ね、今夜はとてもビールがおいしいんだから
ひとりぼっちの部屋で 乾

もっとみる
【詩】眠たくなる

【詩】眠たくなる

眠たくなるというのは神さまに
眠りを催促されているからで
精神がたるんでいるわけではない。

とにかく今のぼくには
睡眠が何よりも大切で
それ以外のことは意味を持たない。

たとえば今のぼくにとって
歩いたり体操したりすることは
疲れるだけの行為なのだ。

しかし睡眠はちがう
力の配分に偏りがなくなるので
体のバランスが充分取れる。

さらに眠ってしまえば
余計なことを考えなくてすむので
心のバラ

もっとみる
【詩】スカスカブルース

【詩】スカスカブルース

世の中スカスカ、壊れてスカスカ
時代はスカスカ、未来もスカスカ

現実はスカスカ、希望もスカスカ
夢見もスカスカ、理想もスカスカ

都会はスカスカ、田舎もスカスカ
会社はスカスカ、仕事もスカスカ

学校はスカスカ、勉強もスカスカ
お店はスカスカ、お客もスカスカ

自分もスカスカ、他人もスカスカ
お犬もスカスカ、お猫もスカスカ

人生スカスカ、スカスカスカスカ
スカスカ、とってもいい感じ──

【ソネット】眼下の自分

【ソネット】眼下の自分

何をいったいしょぼくれているんだろう。
とくにこれといった事件はなかったのに。
心浮かないというか、楽しめないというか。
けっこう面白くない一日なんですよ。

とはいうものの本来の自分はそんな
眼下の自分を観て楽しんでいるのですけどね。
『ねえ、いったい何を悩んでいるんですか?』
眼下の自分にちょっとそれを聞いてみる。

でも、なかなか答が返ってこないんですよ。
だって実体のない事象に実体のない心

もっとみる
【詩】コーヒータイム

【詩】コーヒータイム

誕生は前世の終わり
死去は来世の始まり
子供は捻くれた大人
大人は武装した子供

青春は人生の汚染期
老いは人生の異臭期
白髪は頭髪の進化形
ハゲは人類の進化形

恋人の会話は緑茶色
愛人の吐息は紅茶色
親子の生活は薄茶色
夫婦の空気は焦茶色

一生は未来の記憶を
散りばめた一本の道
人生は未来の記憶を
ひろいながら歩く旅

【エッセイ詩】六月の思い出

【エッセイ詩】六月の思い出

梅雨六月の思い出のひとつに
夜下駄の音がある。
雨が上がった夜更けの街を
二つばかりの音影が
カラコロカラコロ過ぎて行く。
何をしゃべっているのだろう、
夜下駄の響く合間から、
忍び笑いが漏れてくる。
ぼくはたばこを吹かしながら、
窓から聞こえる夜下駄の音を
煙とともに追っていた。

【詩】退職記念日

【詩】退職記念日

確かに何かやりたかったのだけど、
確かに嫌になっていたのだけど、
本音のところは
何も考えられなくなったからだ。
突然そうなったのではなく、
突然そう思ったのではなく、
十年と数ヶ月がその方向に歩かせたのだ。
人生がヤル気という人為を嫌ったのだ。
いろいろな事件があった。
いろいろな思考もあった。
だけどそれがいつだったかは忘れたし、
体系付けて思い出すことも出来ない。
今日はそんな日だ。
いつも

もっとみる
【詩】湿気ったダンヒル

【詩】湿気ったダンヒル

湿気ったダンヒルを口にすると
君がぼくの手から火を奪う。
そして指でワッカを作っては
ふうと彼方へ吹きつける。

だけど一度だけでは消えなくて
二度三度と続けるうちに
君のかわいい指がアチッと言って
思わずぼくの耳たぶをつかむ。

 とがめようのない君の行為が
 いつのまにかの暮らしになって
 ぼくと君の愛を彩る。

ぼくはダンヒルをくわえたまま
ほんのひとときの糧を味わっては
ふたつめの火を点け

もっとみる
【詩】砂漠

【詩】砂漠

それは、月に隈のない頃の話ですね。
旅はまだ続くのでしょうか。
砂漠も夜は寒いでしょうね。
 ──少なくとも昼間よりは
だけど、星も透き通っては、
月も色づく。
きれいでしょうね。

ああ、ぼくの心はちょうど砂漠、漠、漠と
君の面影もきれいですよ。
君の想い出もきれいですよ。
だけどまだ旅は長くて、
夜は寒いのですよ。
冷たい夜のオアシスですよ。

日々の生活は蜃気楼。
心は何かを求めているのです

もっとみる
【詩】犬のウンチを踏んだ日の人生

【詩】犬のウンチを踏んだ日の人生

基本は土を踏むのと何ら変わらないのですが、
それを踏んだとたん、
それまでの環境が一変してしまうものなのです。
そのことを見聞きした友だちからは馬鹿にされ、
あげくに好きなあの子に暴露され、ついには
「変なあだ名をつけられるのではないか・・」
といらぬ心配をしなければならなくなるのです。

元はといえばあたりかまわずウンチをしまくる
ノラ犬たちが悪いわけなのですが、
ウンチを踏んだという運命に思い

もっとみる
【詩】夜の声

【詩】夜の声

明日になれば、また今日も去り
夢の巷でひとりごと
時は過ぎて灰になり
夢の言葉で夜になる
 ひとり歩くこの隙間から
 寒々響く夜の声

月は枯れて星もなく
柳の道のひと休み
濡れた風が空に舞い
いつもの疲れた顔をする
 頬に紅をつけたひとの姿が
 恋のにおい残していく

ひとの谷間に道は消え
青いキネマに時は来る
うねりくねった虚ろな空の
ひとつの夢の物語
 ひとり歩くこの隙間から
 冷たく響く夜

もっとみる
【詩】雨を見ながら

【詩】雨を見ながら

みんなどうしているんだろうか?
やっぱりこんな雨を見ながら
呼吸をしているんだろうか?
家庭という言葉に安らぎをみるんだろうか?
幸せという言葉にいくつ出会ったんだろうか?
犠牲という言葉に潰されてはいないだろうか?
社会という言葉に振り回されてはいないだろうか?
仕事という言葉にごまかされてはいないだろうか?
疲れという言葉に甘えてはいないだろうか?
時間という言葉にいらだってはいないだろうか?

もっとみる