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8㎜フィルムレンズのデジタルカメラを作った

カメラを作った。正確に言うとカメラのセンサーモジュールとコンピューター部分は既製品なので「カメラの外装とレンズマウンターを作った」が正しい。

完成品

レンズについて

使用したのは8㎜フィルムカメラ用にかつて生産されていたレンズ。Dマウントレンズと呼ばれる種類。
今回購入したのは「National Anastigmat 12.5mm f/2.5」というレンズ。詳細はわからないが50年以上前のレンズと思っていいだろう。

直径は2センチほど

Dマウントは非常に小さいのが特徴で、あまりに小さすぎて一般的なデジタルカメラに取り付けることが難しい。そのため、オールドレンズとしての需要が少ない。
値段は数千円で買えてしまうほど安いが流通量も少なく、あと10年かすれば世の中から消えてしまうんじゃないかと心配になる。

なぜ作ったのか

カメラが趣味というわけではないが、8㎜フィルム撮った映像を見ていいなーと思っていた。しかし、フィルムの入手性が絶望的だったり現像もできる所が限られていたりと、素人には壁が高くてあきらめていた。

ある時、Raspberrypi(電子工作趣味者に人気のシングルボードコンピュータ)のカメラモジュールの仕様を眺めていたところ、8㎜フィルムのサイズとセンサーサイズが近いことに気が付いた。
センサのサイズが近ければ8㎜フィルムのレンズも使いやすいだろう。うまくいけばカメラ本体も含めて低価格で自由度の高いカメラが作れるかもしれない。

カメラモジュールとRaspberrypi zero2

レンズアダプタの製作

技術的な話になってしまうが誰かの参考になるかもしれないので書いておく。

Dマウントレンズの仕様
Dマウントレンズは最近の一眼レフとは違ってねじマウントになっている。おかげで精度の良い3Dプリンタを使えば簡単にマウントを作ることができる。
Dマウントのねじは直径5/8インチのユニファイネジ(ピッチは5/8-32)。3DCADソフトのAutodesk Fusionを使うと以下の設定でモデリングすることができる。ジャストサイズでプリントするとねじがはまらないことが多いので、「面をオフセット」を利用して0.1㎜くらい小さくしてやると良い。

Autodesk Fusion360でのねじ設定

カメラモジュール(Raspberry Pi High Quality Camera)の仕様
カメラモジュール側はCレンズマウントになっている。これはDマウントレンズより二回りくらい大きいが、フランジバック(レンズからセンサまでの距離)も近いので容易にアダプタが作れる。
Cマウントのねじは直径1インチのユニファイねじ(ピッチは1-32)。Autodesk Fusion360で以下の設定。「面をオフセット」を使うのも同様。

Autodesk Fusion360でのねじ設定

フランジバックについて
CマウントレンズとDマウントレンズではレンズからセンサまでの距離が異なる。アダプタを作る場合はここを調整しないといけない。
正直フランジバックは思った通りに行かなくて現物合わせをした。

Dマウントのフランジバックが12.29mmに対して、Cマウントが12.50㎜であるからちょっとだけセンサーに近づけてあげればよい。アダプタの厚みはほぼなくて良いということだ。
だがカメラモジュールを測ってみると、CSマウントなのに実際は10㎜ちょっとしかない(センサを傷つけないように測ったので正確な値がわからない)。現物合わせしたところ、アダプタの厚みは1.5㎜がちょうどよかった。これは使うレンズにもよるかもしれない。
カメラモジュール側でフランジバックを調整する機構もあるので、1.0㎜程度で作成して調整したほうがより汎用的かもしれない。

このフランジバックの調整機構はピント調整にも使うことができる。今回手に入れたレンズにはフォーカス調整機構が存在しなかったため、この機構でピントを合わせて使っている。

ボディの製作

むき出しのカメラモジュールやコンピュータボードの状態では、カメラとして実用的ではない。Raspberrypiとカメラモジュール、タッチパネルを組み合わせることのできる筐体を製作した。

黒色の樹脂を使うことでそれっぽい感じになった

アダプタもだが、3DプリンタにはJLCPCBを利用した。この筐体でも6ドル程度で高品質にプリントしてもらえて正直驚いた。

現物合わせで何度もプリントを繰り返して試行錯誤しようとすると自前のプリンターがあったほうが良いが、そうでなければこうしたサービスを使ったほうが手軽に高品質なものが手に入って良いだろう。

もろもろの3Dプリント用データは記事の一番下に公開(予定)場所乗っけてるので是非作ってみてください。

ソフトウェア

基本的にはカメラモジュールのサンプルスクリプトだがタッチパネルのみで写真撮影・動画撮影ができるように改造した。

タッチパネルは2.8インチ

完成品

ソフトウェア中心に改善点は多々あるが、何とかギリギリ実用的なものができたと思う。実際に旅行に一度持って行ったが、小さくてかさばらないのは非常に助かる。
このレンズは一体どんな風景をこれまで撮ってきたんだろう。そんなことを考えながら、上着のポケットにUSBバッテリーと一緒に突っ込んで、街を歩くのは新鮮で楽しかった。今のところは間違いなく世界に一台だけのカメラであるから愛着もひとしお。

動画を撮ることもできるので、どこかでまとめて公開してみたい

作例

芝生がすっごく柔らかそう
カモと白鳥
ボートに木を植えていて豪快

mososom(@mososom2016) • Instagram写真と動画

製品データ

  • レンズアダプタ

  • ボディ

  • ソフトウェア

準備中

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