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リフトアップ美容液「V フレーム セラム」リリースまでの1年4ヶ月(その2

――前回は、ブランドネーム『EMIRISE』の考案とロゴデザインの制作までをお聞きしました。

今回は、具体的なプロダクトの制作過程を聞いていきたいと思います。その前におさらいですが、『EMIRISE』のメインターゲットを改めて教えてください。

森岡 メインターゲットは、30代後半から40代の女性です。購買者のペルソナとしては「夫と子どもの3人家族で共働き、一定の可処分所得がある人」を設定しました。美容に興味があって、エステやクリニックにも行ったことがあるけれど、頻繁に通うほどの時間的・金銭的な余裕はない。通販で商品を購入したことはあるけれど、もっと良い商品があるのではないかと常に探している美意識の高い人。そういうイメージですね。

――過去の提案書を見ると「商品開発の方向性」として4つの項目が挙げられていて、その最初に「機能も見た目も、手に取りたくなる」という項目が掲げられています。プロダクトの制作は、そのようなターゲットの方々が「手に取りたくなる商品」を目指したわけですね。

森岡 はい。高機能でしっかりとリフトアップ効果があることはもちろん、自宅や外出先でも気分が上がるような見た目であることを大切にしました。それを菊池と新名が具体的なプロダクトに落とし込んでいったという流れです。

菊池 デザイナーとしては、商品そのものが「楽しく年齢を重ねる人の美しさ、強さ、気品を感じさせるもの」になればいいなと考えました。その上で大切になるのが、商品としての高級感です。美容液にはきらびやかな高級感を演出する商品もありますが、「V フレーム セラム」はそちらの方向性ではなく、高級感の中にも気品と上品さが備わった商品であるべきだと考えました。

ご提案資料より「商品開発の方向性」

――実作業としては、どこから着手したのですか?

新名 最初に決めたのはボトルの形状です。容器メーカーの選定、サンプルの製造依頼から発注まで弊社で担当させていただきました。私は以前、包装資材を扱う会社に在籍していたので包装関係のデザインの経験はあったのですが、ボトルのデザインは初めてでした。菊池もボトルのデザインは経験がなく、自分たちにとっても良い機会になったと思います。

――ボトルの形状もゼロからデザインしたのですか?

菊池 今回は容器メーカーにある商品のサンプルの中から適したボトルを選び、カスタマイズするという方法でデザインしました。もちろんゼロからデザインされたボトルを採用する美容液もありますが、オリジナルで型を起こそうとするとかなりの金額がかかってしまいます。今回は販売価格を考慮して既存のサンプルから選びました。

新名 内容量は32mLと決まっていたので、そのサイズに合ったサンプルの中から最終的に商品として採用された形状のものを選びました。決め手になったのは、キャップ部分の仕様です。美容液のキャップは、多くの場合がスポイトと一体になっていて、天面に吸い上げ用の帽子と呼ばれるパーツが付いているのですが、このサンプルは帽子の部分がワンタッチ式のボタンで、よりスマートな印象だったんです。ご提案したところお客様も気に入ってくださり、この形状をベースにすることが決まりました。

今回採用したボトルのサンプル

――グレーのすりガラスのボトル+明るいブロンズ色のキャップというカラーリングもこのときに決まったのですか?

菊池 それはもう少しあとだったと思います。ボトルとキャップの形状が決まってすぐにボトル表面と化粧箱のデザインに入って、デザインを詰めている途中の段階でこのカラーリングに決まった記憶があります。

新名 先ほど森岡がお話ししたように、「V フレーム セラム」のメインターゲットは30代後半から40代の女性ですが、お客様には「できれば男性にも使ってほしい」という思いがありました。だからユニセックスなイメージのグレーを選ばれたのだと思います。

森岡 グレーを選ばれたのは少し意外でした。でも、ロゴ部分のゴールドの箔押しが引き立ってSNS映えもするので、結果的に良かったと思います。

新名 1年4ヶ月という長期間にわたるプロジェクトでしたが、すべてのクリエイティブ業務をワンストップで担当させていただいたこともあり、こういった調整も全体の進行を見ながら柔軟に対応することができました。

――では、化粧箱とボトル表面のデザインはどのように固まっていったのでしょうか。

菊池 ブランドネームやロゴと同じようにお客様の好みを探るところから始める必要があったので、まずは様々な方向性のデザイン案をお出ししてお客様に選んでいただきました。具体的には「王道+モダン」「グラデーション」「イラストとの組み合わせ」「マーブルやバイカラーとの組み合わせ」「質感のある加工との組み合わせ」という5つのカテゴリに分けて、それぞれバリエーションも含めて3〜5案をお出ししたと思います。

新名 制作当時は私たちの事務所とお客様のご自宅がすぐ近くだったこともあり、お客様に事務所までお越しいただくこともありました。やはり立体物の制作ではサイズ感や質感、重量感も含めて意見交換することが大切なので、お客様とボトルや化粧箱のサンプルを見ながら対面でお話しできる機会が多く持てたのはありがたかったです。

菊池 化粧箱は、お客様が目にする最初のビジュアルです。これが『EMIRISE』との出会い、「V フレーム セラム」との出会いになるわけですから、手に取ったときに心がときめくようなデザインになることを意識しました。シンプルだけどシンプルすぎない、高級感はあるけれどギラギラしていない。優しさや柔らかさ、気品が先立つもの。     最終的には、ピンクの肌にホワイトのベールをまとう、笑顔になる化粧箱というイメージで制作した案が採用されました。

ボトルデザイン案の一部


化粧箱デザイン案の一部

――リーフレットやWebサイトについても教えてください。この印象的なキービジュアルはどのように制作したのでしょうか。

菊池 CGクリエイターの方にご協力いただき、3DCGで製品とEMIRISEのある空想の空間を表現しています。私の手描きラフをお送りし、それを3D化していただきました。このキービジュアルについては自由度が高く、オリジナルの新しい空間をゼロから作り上げることができたという達成感があります。

――この空間にはどんな意図が込められているのでしょうか。

菊池 初めて世に出る「V フレーム セラム」という商品をどう見せるのがいいか、どんな空間に商品を置くのがいいかをまず考えました。例えば、慌ただしく時間が流れる自宅などの日常空間に置くのがいいのか。スペシャルな時間が流れるホテルなどの非日常空間に置くのがいいのか。様々なシーンでの空間を考えましたが、最終的には「駅」をモチーフに発想を広げていきました。このキービジュアルには「ここからはじまる。スタート地点としての駅。新しいときめきに出会うきっかけ。美意識を日常にしてくれるEMIRISE。もっと上へ、もっと前へ、気持ちを運んでくれる美容液。」というストーリーが込められています。駅には、エスカレーターやエレベーターなど、キーワードの「上昇」とリンクするモチーフや、地下鉄のように上に上がってくるイメージもあり、コンセプトとの親和性が高かったと思います。ビジュアルに登場するオブジェの多くが上に向かって傾斜していたり、球体や液体が宙に浮いていたりするのも「上昇」のメタファーです。後方に配置しているプレートは、空や雲のイメージを落とし込んだ飾りガラスをイメージしており、そういったところでさりげなく日常性も表現しました。

――コピーライティングは菊池さんが担当されたのですか?

菊池 そうですね。制作過程でお客様が大切にされていることを共有させていただく時間が多く持てたので、自分がご提案書に書いてきたことを抽出して言語化しました。これも、一気通貫でクリエイティブに携わることができたメリットだと思っています。

3DCG制作用のKVラフ

――WebサイトはブランドサイトとLPがありますが、棲み分けはどのように考えましたか?

菊池 ブランドサイトは商品とブランドの世界観を認知させるためのもの、LPは「V フレーム セラム」を購入してもらうためのもの。各サイトの目的を常に意識しつつ、色味や雰囲気的な部分では、乖離しないよう注意しました。

――Webサイトのデザインで気をつけたことはありますか?

森岡 「V フレーム セラム」は発売当初、店頭での販売は直近予定しておらず、ECのみの販売を想定していました(※)。そのため、Webサイトがお店の入口にあたります。Webサイト上での購入のみを想定しているので、言ってみればWebサイトがお店の入口にあたります。お客様にご提案したブランドコンセプト「30代から急激に変化する肌を諦めない。いま一番の自分で1日を過ごせる。未来の自分にも期待できる。明日が楽しみになる」からずれないよう気をつけながら、キービジュアルやサイト全体のデザイン感を詰めていきました。

※2024年4月現在は、ポップアップストアでの販売もおこなっています。

3DCGで制作した 花びらモチーフとボトルのビジュアル

完結編の第3回では、プロジェクトを終えた3人の感想、このプロジェクトを通じて学んだこと、マスクマンだからできたことについて聞きます。

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