見出し画像

言葉のおまじない「とりあえず」

どうしよう。
今日、着て行く服が決められない。
もう時間がないのに…。

急遽実家に帰ることになり、2泊3日ほどの荷物をまとめていた今日の午前中の話だ。
午後から仕事があるため、何としても今、支度を完了せねばならない。
メイク道具や眼鏡など、必要な日用品の準備はすぐにできた。
問題は、洋服である。

「最近急に冷えてきたから、長袖がいいかな。」
「いや、半袖に上着を羽織ってちょうどいいくらいかな。」
「でも朝と夜は冷えるし、厚手のカーディガンを上着代わりにしようかな。」
「あ、ワンピースなら一枚で済むかも。」
「でも最近このワンピースばかり着ているから、少し恥ずかしいかな…。」

こんな風に、私は洋服ひとつ決断できずに、右往左往してしまうことがしばしばある。

永遠に自分と対話しており、永遠に終わらないと断言できる。
理由は、これまでの自分が統計を出しているから。
そこまでは自分を理解している。
そのため今回は、先手を打った。
実は“明日持って行く洋服”を、昨日の夜に一度考えたのだ。

しかし、今日の服装を考えるだけならともかく、
2、3日分の服装を考えることは、なかなか難題であった。
いかに着回しのできる服を選び、荷物を軽くして行けるか。
出掛け先の天気や気温はどうなのだろうか。

…そして結局決められず、睡眠を優先して今日の自分に託した。


どこかへ出掛けることになり、洋服選びで悩むことは旅の楽しみの一つだ。
「何を着て行こう」と考えるこの時間がワクワクする。

そんな風に感じる時もある。

また、すぐに「これにしよう!」と決められる時もあり、その際はワクワク気分をキープすることができる。

しかし、時に、これは。
真剣に困っている、私にとって深刻な悩み事なのだ。
もちろん最初は楽しい気持ちもある。
しかし、決まらないまま時間が迫ってくると、心に余裕がなくなってきてしまう。
にも関わらず、待てど暮らせど決断できない自分に嫌気が差してくるのだ。
体調や精神状態によっては泣きたくなるほどに、苦しい。

洋服選びに限らず、決断が必要な場面では高確率で起こる現象だ。

例えば
外食。何を注文するか。
書店。欲しい本が何冊もあり、全ては買えない。今日はどの本を購入するか。
…など。

そんな時、私が使うおまじないは…

「とりあえず、こうしよう。」


強制的に決断できる、最強の呪文である。
考えすぎて同じ思考が頭の中をぐるぐるしている時や
もはや思考停止している時。
けれど今すぐに決断が必要な場面で、大活躍なおまじないだ。

外食では、「とりあえず、麺類にしよう」
書店では、「とりあえず、一冊買おう」

このような具合に。
このおまじないのおかげで、注文に悩みすぎて数十分経過してしまうことや、書店の中を1時間も2時間もぐるぐると歩いて足が疲れることも減り、とても楽になった。

今日は

「とりあえず、ワンピースにしよう」

と唱えた。
すると、スカートやパンツ、Tシャツやブラウスなどは選択肢から消える。

次は、ワンピースの上に何か羽織るかどうか。

ワンピースさえ決まってしまえば、最初よりは簡単。
そのワンピースにカーディガンやらアウターを合わせてみて
しっくりくるものがなければ持って行かない。
あれば一応持って行く。

まず、ひとつ決断することが重要なのだ。

ひとつ決定すれば、次に進める。
仮にアウターで悩んでしまったとしても、
先に、履いて行く靴や、ヘアスタイルを決めてしまうとか。
そういった小さな決断をひとつひとつ重ねて行くことで、最終的にゴールできる。


人生は決断の連続だ。

洋服ひとつで立ち止まっている場合ではない。

しかし、
洋服選びにこんなに真剣に悩めることもまた、
自分の短所であり、長所であると信じている。


「温かいもの、もう一杯飲もうかな。」
「それとも寝た方がいいかな。」
「30分だけゲームして寝ようかな。」
「そういえばこの間のアニメ、まだ見てないな。」
「少しならお菓子食べてもいいかな。」

こうして悩んでいるうちに、夜が更けていく。
あっという間に、朝が来る。

「とりあえず、歯を磨こう。」

これで少なくとも食べたり飲んだりする選択肢が消えて
寝るかテレビかの2択にまで絞れた。
歯を磨いたらスッキリして何もしたくなくなったので
今日は寝ることにする。


2023.10.13

この記事が参加している募集

最近の学び

私は私のここがすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?