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2023年の5/45冊

今年も残すところ2日。振り返りも含めて、今年、自選・他薦含めて、45冊の本を読んだ中から、特に面白かったという5冊を記事にしてみました。

最後には、TOP10も載せました。ご笑覧いただけると幸いです。


5.金閣寺・銀閣寺の住職が教える 人生は引き算で豊かになる 有馬頼底

知人の紹介で出会いました。臨済宗の僧侶の方の書いた一冊です。

人間関係、仕事、子育て、自分自身について色々悩みがあるときに、「執着を手放すこと」と、見方を変え「転ずる力」を養うことが大切であると説いた本。

1.執着を捨てる、2.足るを知る、3.今日を丁寧に生きる、4.捨てた分だけ楽になれる、5.気持ちをサッと切り替える、6.あたり前に気づくという6つのことを各章で、臨済宗の故事や教えを引き合いに語られていきます。どの故事もなるほどと思うことばかりで、臨済宗の教えの深さに薫陶を受けました。

4.おもしろい地域には面白い、おもしろいデザイナーがいる 新山直広、他

コロナによって止まった人の移動から、再び力強く遊動向かい始めた一年。自由に移動できる喜びをかみしめながら、国内でも色々、旅できるようになりました。

日本の各地域には、その土地らしいモノづくり、文化、装い、食、暮らしがあります。地方から、地域に根差した伝統産業、文化、食を新しい角度でデザインし直し、発信しているおもしろい人たちがいることを紹介した本です。

地域のデザイナーたちの事業展開の内容、デザインするようになったキッカケ、地域に対する思い、活動の軸にしている価値観等を各8ページで紹介されています。会いたい人、行きたい街がきっと見つかる一冊です。

この本キッカケで、地方をキーワードに活動したい人向けのお互い学び合うデザインスクールも今年から始まりました。これからますます注目の活動だと思います。

3.私とは何か - 「個人」から「分人」へ   平野啓一郎

近代以降の西洋哲学の中心にあるこれ以上分割できないものとしての個人(Indivisual)。色々な人間関係の中で本当の自分がわからなくなったり、本当の自分で過ごせいなかったり、不安や焦りを感じることが少なくないと思います。それに対し、平野啓一郎さんは対人関係毎に見せる顔すべてが本当の自分(分人=divisual)であり、その総和が自分であると説きます。

分人の考えを取り入れることで、好きな分人を中心に人生を肯定したり、何かうまくいっても半分は他者のおかげなので感謝できたり、自分自身の何かではなく自分の人間関係が個性であると思えたり、とても生きやすくなる感覚がありました。

人間関係や自分の個性について悩んでいる方にお勧めです。

2.忘れられた日本人 宮本常一

貴族や武士などの文字を持つ社会を中心に語られる日本史に対し、柳田国男は、民俗伝承など無文字の民衆の中に日本を探そうとしました。宮本常一は、さらに「見る聞く歩く」という合言葉に現地に行き、地域の人々の話を記録し続け、大きな民俗学からこぼれおちた庶民の暮らしを「忘れられた日本人」として記しました。
対馬の山を移動する人たちの民謡の話、今は橋の下の乞食の馬喰が女性遍歴を語る「土佐源治」、世間を知ることで山村での世渡りをうまくするため、易者と旅をする「世間師」など、大きな歴史や民俗学から取りこぼされた庶民の暮らしに胸打たれた一冊に、新しい日本の歴史を感じるとともに、宮本常一さんの優しさを感じました。いい本です。

1.低空飛行 原研哉

日本デザインセンターの代表、武蔵野大学教授で、オリンピックの閉会式、ジャパンハウスのディレクション、無印良品、蔦屋書店、G-Sixなどのデザインに携わった、日本のデザイン界の巨匠、原研哉さん。

原が数年前から取り組んでいる「日本の風土・文化にFocusを再び当てて、豊かな未来資源として大いに見立て直す活動=低空飛行」について書かれた一冊。

原さんは、デザインを「本質を見極め、可視化すること」と語っています。

「何かの種子を拾っている。どこにこれを播くか。自分のデザインは価値の美の落穂ひろいであり、種まきである」。

「低空飛行」原研哉

今、世界は通信技術や移動手段の発展に伴い定住から遊動へ向かっている。モノや情報や人が国境を越え動いている。実際に1964年に1.2億人だった越境人流は、2019年に14.6億人になっている。

人々はグローバルに移動し、地球、環境、文明の素晴らしさを、ひとつひとつの土地で味わう。「グローバル/ローカル」は対義語ではなく、一対の概念として新たな価値を生み出し始めているのだ。

「低空飛行」原研哉

失われた30年と言われた日本の状況の中で、今一度日本国土に目を向けると、明確な四季があり、国土の7割を覆う森林や列島を取り囲む海といった豊かな自然があり、火山から恵まれる温かい湯と豊富な水源があり、長くはぐくまれた歴史がある。
世界の文化の成り立ちや、アジアの他の国での自分たちの歴史・文化の見立て方の紹介を交え、日本の豊かな資源を活かし、世界に日本の文化・歴史の素晴らしさを伝える価値の種をわかりやすく示してくれています。

原さんの価値の見立ての力、語りの豊かさに感銘を受けました。日本って本当に可能性しかない国だなと思いました。

おまけ TOP10

今年は、日本の歴史、文化について感動した本が多かった印象です。コロナが開けて、ぜんまいをまかれたチョロQのように、心が遊動へ向かっているのかなと思いました。

では、良いお年を!

  1. 「低空飛行」                                          原研哉

  2. 「忘れられた日本人」                                      宮本常一

  3. 「私とは何か 「個人」から「分人」へ」                       平野啓一郎

  4. 「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」 新山直弘、他

  5. 「人生は引き算で豊かになる」                                         有馬頼底

  6. 「ナガオカケンメイの眼」                                     ナガオカケンメイ

  7. 「現代哲学入門」                                         千葉雅也         

  8. 「ナナメの夕暮れ」                                        若林正恭

  9. 「ブランディングデザイン」                                    西沢明洋

  10. 「青春ピカソ」                                           岡本太郎

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