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菅沼菜々選手が広場恐怖症を告白

精神疾患を告白

女子プロゴルフの3年目の選手、まだ二十歳になったばっかりの菅沼菜々選手はこのほど自身の Instagram において”広場恐怖症”告白しました。



昨年にも、長距離遠征を伴う試合を複数直前に欠場しており、おそらくこれが原因でないかと思われます。

 *広場恐怖症とは
ほぼ毎回恐怖や不安を誘発するため、公共交通機関や、あるいは広い場所や閉ざされた場所を避けていることが6か月以上持続している、不安障害に含まれる精神障害である。典型的な広場恐怖症は、繰り返されたパニック発作の結果としての合併症である。

実は僕自身、仕事として毎日精神障害を持つ方と接しています。医療関係の人間ではないですが、今日は僕なりに精神疾患などについて少し書いてみたいと思います。


精神疾患ってどんなもの??


普段接していて、彼ら・彼女らの悩みや苦しみは、それを等身大で分かってあげることが正直他人には難しい、ということだと感じます。同じ診断名だとしてもそれぞれの感情や感覚を完全に理解し合うのは難しいものなのです。

それは、これだけ時代や科学が進んでも”心”という領域に研究がほぼ入り込めず、”何もわかっていない”状態だからだし、おそらく今後ほぼ永遠に科学で解き明かされることはないくらい、複雑で・曖昧で・ 個人差の大きいものだからなのでしょう。

心の不調は、見た目で分からない事も多い分、本当に本人や周りで支えている人間にとって苦痛で恐ろしいものです。

鬱やパニック障害など精神疾患が一般的な認知度を得たのはつい最近、それまでは”さぼっている””弱い人間だ”などと言われてました。

鬱やパニック障害などの病気がどういうものなの?と聞かれた時、僕が話す例えがあります。
それは、ドリンクバー。

ファミレスなどでよく見るドリンクバーでは、ひとつの口からボタンひとつで色々な飲み物を出すことができます。でも時々、機械の不調やシロップが切れていたりして、コーラを押したのに透明な水が出てきたり、 お水を押したのに少し甘いシロップが入ってしまったりということがあります。
これがいわゆるうつやパニック障害などの精神疾患の状態。

説明すると人の感情とは、刺激により分泌される脳内物質の量や種類などにより決まります。
よく聞く幸せホルモンのセロトニンや興奮したり集中力を使ったりする時に必要なアドレナリンなど、我々は普段あまり意識せずとも必要な時に必要な脳内物質が分泌されます。だから僕たちはいいことがあった時に喜べるし、嫌なことがあった時に泣きたくなるわけです。

この脳内物質の分泌量や種類の調節がうまくいかなくなってしまうとどうでしょう。壊れたドリンクバーの状態。

コーラを押したのにオレンジジュースが出てしまい、オレンジジュースを押せばただのお水が出てしまう、お水を押した時には確かに水が出るんだけれども、コップを突き破るほどにものすごい勢いで出てしまう。
でも、一方でお茶やコーヒーは普通に出る。
本人からすると当然、うまく出ないことはすごく苦しい。でも普通にできることもたくさんあるのです。
コーラやジュースを飲む人からすればとんでもない故障ですが、普段からお茶やコーヒーしか飲まない人は、故障に気づくことすらありません。

つまり、普段は大丈夫なのになんで特定の場面だけそういう風になるの?って言われても、条件が違うから、ということなんですね。

雑かもしれませんが、これがとてもざっくりと精神障害の方をイメージするための僕がよく使う説明です。

伝えたいことは二つで、

・僕らでも全然あること
・自分と他人が同じだという前提は持たない方がいい

ということです。

”違う”ことを前提に

本当のドリンクバーだったらメーカーの修理を呼べばそれで済むでしょうが、心の蛇口はまだ誰にも治し方が分かりません。

でも、同じことは誰でも起きうるし、実際誰でも経験している。
例えば、見ず知らずの人に冷たい態度をとられても”感じの悪い人だ”で終わるでしょうが、あなたが学生の頃、好きな子にその扱いをされたらどうでしたか?夜中まで考え込み落ち込んでしまったのではないでしょうか。
事実を見れば、同じ一人の人間に冷たい態度を取られたというだけのこと。初めから人の心の蛇口はいい加減で曖昧に繋がれてるものなんです。

もっと言うと、おそらくそのセッティングも全然違うでしょう。それは個人差は当然ですがそれだけでなく文化や環境によっても全然違うもの。

個人的には日本人は感情の種類が多いんだと思っています。日本人の感情は喜怒哀楽たった4つではとても示すことができないもの。言葉にできない感情が何百個何千個何万個とあるから繊細で難しく、悩みやすいんだと思います。

文化の違いといえばそれまでですが、アメリカなどの国では実際に日本より感情の数が少ないように思います。例えば自分の住んでいる地域で連続強盗や殺人など恐怖や不安を感じる事件が多発しているとします。当然住人たちは眠れない日々を過ごします。

そして、数週間が経った日、犯人逮捕の一報、この時あなたはどう感じるでしょうか。おそらく一番最初に感じるのはほっとした、という気持ち。
さらにもしかすると、本当に大丈夫かな?だったり模倣犯が出ないかな、自分が見かけた人ではないだろうか、知り合いだったらどうしよう、といった複雑な感情が絡み合う何とも言えない気分になることでしょう。

しかしアメリカではそんな時、友達みんなで集まってパーティータイムになるそうです。つまり”僕らをずっと悩ませていた犯人が捕まったぜ!イエーイ”という喜びの感情です。

その文化を否定するつもりは全くありません。しかし、嬉しい気持ちがないとは言えないものの、喜びという感情ではない気がする。これが僕ら日本人にとっての一般的な感情ではないでしょうか。同じ場面で、日本でパーティーをしていたらちょっと変な人、と思われてしまうかもしれません。

このように同じ時代に生きていたとしても、少し場所が違うだけ少し環境が違うだけで同じ出来事に対する捉え方も感情も全く違うものになるわけです。
自分の感覚を相手に押し付け”普通はこうだ”という価値観を持つことは時に相手に対する”暴力”に近い行為にすらなることがあります。


本来、オリンピックとパラリンピックが分かれているように精神障害についても何らかの枠組みができればいいのですが、心はまだまだ何もわかっていない領域な上、定量的な判断が難しく、おそらく精神障害の方を分けた大会などの実現は難しいでしょう。

スポーツ界でルールにするとすれば、○○以上などといった”客観的な数字”が必要になるわけです。
それは、精神疾患においては最も難しいこと、病院の先生でさえも患者さんを観る時、顔色や表情、本人の訴えかけの内容が診断書の内容を決める90%以上を占めます。
悪い見方をすれば客観的に判断ができない以上”ごまかす”ことも”装う”ことも可能なんです。実際、これではスポーツは成り立たないでしょう。不正や”グレーゾーン”が多発してしまう可能性が非常に高いです。


菅沼選手、応援してます!

菅沼選手の話題に戻すと、ゴルフは”メンタル”がモロに勝負に直結するスポーツ。そういった意味で彼女はとても険しい戦いをこれまでずっとされてきたんだと思います。

心の蛇口の不調は決して本人や周りの人たちのせいではありません。また、治さなきゃ!と努力できるものでもないかもしれません。
 ひとつだけ言えるとすれば”自分を責めないで欲しい”ということです。

まだまだ若く、才能に溢れる彼女、特に若年の頃の感覚過敏型のパニック症害は年齢とともに、少しずつ緩和されていく例も知っています。

今後の活躍を心から期待しています。

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