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不要不急【エッセイ】

 吉田拓郎の「結婚しようよ」。 学生時代の思い出の歌だ。拓郎をまねて髪を肩まで伸ばすのが流行りだった。当時の長さまではいかないまでも、かなり伸びてきた。カットしてから四か月になろうとしている。が、店に行くのは不安がある。担当のIくんは、若い。若い人は感染していても無症状が多いと聞く。だからといって、コロナ禍の終息まで我慢していたら、肩をはるかに超えてしまう。
 料理なら、店に行けなくても、「もどき」は、作ることはできる。江戸川橋「はし本」の鰻重。四谷荒木町にある「今井屋本店」の親子丼。同じく荒木町「鈴新」のカツ丼。思い出してもよだれが出る。特に「かけかつ」。サクっとしたトンカツの上に卵とじがかかったもの。すでに店は開いているようだが、やはり不安がある。そこで、「かけかつ」重を作ってみた。「さぼてん」の三元豚カツをサトウのご飯に乗せ、ツユダクにならない程度にとろとろの卵とじをかけてみた。いける。
 が、料理と違って、髪は、「もどき」ではすまない。そろそろ「不要不急」じゃなくなってきた。いっそ、「感染対策コース」と銘打って短時間でカットしてもらおうか。洗髪は家でするので、不要。顔剃りも要らない。ただ、お公家さんの麻呂眉のようになっている眉毛だけは、整えてもらわなければ。ということで、意を決し出かけることにした。

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