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夜更かし【エッセイ】六〇〇字

朝カル「エッセイ講座」10月の課題、「夜更かし」。初めて夜更かしした日の記憶があります。興奮していました。そんな頃の想い出ありますよね。(「たしなみ」の二作目は、次回以降に)
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 多くの子たちは、母親の「読み聞かせ」にいざなわれ夢の中となるのだろうが、私にはその記憶が、ない。話の前には、寝落ちしていた。
 昭和三十年前後。小一までの四年、「北の国から」の舞台、麓郷にいた。父は、米の検査をする公務員。仕事柄、小さな町が多いので事務所と住まいが、一緒。なので、父が戻るのが、なんせ早い。五時過ぎには居間に座っていた。自ずと、夕食も早くなる。食後の大人の娯楽は、ラジオ。子供向けの番組はなく、夏場は、その後も外に出て日没まで遊ぶ。が、冬は四時には暗くなり、父との、挟み将棋や将棋崩し。片付けが終わった母も加わった、花札やトランプ遊び。弟が三歳、私が五歳。飽きてきて徐々に瞼が重たくなり、七時過ぎには蒲団に潜り込む、そんな日々だった。
 ところが、異変が起きる。食品店を営むお隣に、テレビが入ったのだ。幼稚園の時だったので、たぶん、町で初。向こう三軒両隣は、そのお裾分けとなるのだが、人気は栃若時代の大相撲。大人は酒を呑みながら、子らは、食べながら。場所中は、夕方が一変する。
 そして、なぜか「日真名氏飛び出す」だった。探偵物の三〇分の連続ドラマ。時間帯は、土曜の夜九時過ぎ。いつもは夢の中。大人が観るため、家に子を残しておけず、連れられていったのだろう。しかし、眠たくなるどころか、目を輝かせていた。ご近所さんとも、一緒。夜遅くまで起きていることに、ちょっぴり、大人になれた気がしたのかもしれない。

TOP画像:ドラマ「日真名氏飛び出す」 70代以上じゃないとご存知ないかも・・・💦



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