MASAMI

長編小説を分割して投稿していこうかなと考えております。kindle出版やブログ、You…

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長編小説を分割して投稿していこうかなと考えております。kindle出版やブログ、YouTubeも展開中。人間が面白いです。

マガジン

  • 破壊の女神(完結・小説)

    自分の世界でしか生きてこなかった女が、人間社会に存在する常識の矛盾点をあぶりだし、この世の真実を覆い隠すその生皮を興味本位で剥がし取っては常識人たちを泣かせるお話です。

  • 悪魔の子供たち(完結・小説)

    自分の正体を誰にもバレることなく、事件の裏側を知られることもなく、自然発生的に平和を混沌に変えてしまう存在。ある高名な僧がそのような性質の子供たちを称して「悪魔の子」と呼んだ。「悪魔の子」は人のフリをするのが上手いだけで、実はどこにでも潜んでいるのだとその僧は言う。  舞台は立て続けに事件に見舞われている呪われた学校。事件を裏で操る「悪魔の子」は誰なのか。そしてその予想だにできない目的とは。是非その目でお確かめください。

最近の記事

妹は知らない③

  3  令和四年7月7日。  朝の報道番組にまた零の会代表の熊田記理子が出演していた。零の会運営の資金調達にネットを通じて資金を募るクラウドファンディングを利用しているだのなんだの説明していたが、そんな風に色々上手くやりくりできる能力があるなら、記理子さん、この兄もなんとかうまく道筋をつけてくれませんかねと、心の中で訴えていた。  珍しく私と一緒のテーブルで一緒に朝食をとっている兄は、テレビには目もくれず、パンにもコーヒーにも目もくれす、行儀の悪いことに顎をテーブルの上

    • 妹は知らない②

       2  令和四年7月4日。 「ミキちゃんがね、お兄ちゃんにお礼言いたいって」  蜃気楼の中から、昔聞いた声がする。 「きっとね、ミキちゃんお兄ちゃんに気があるんだよ」  このキュートな声は、きっとキュートだった頃の私の声だ。 「お礼? 律儀だなあ」  かっこよかった頃の兄の声までする。 「リチギー?」 「ちゃんとしてるってことさ。マンガ読んでりゃそのくらいの日本語なんていつの間にか覚えちまうよ」 「あのね、私とミキちゃんにいじわるしてくる、私のクラスの子がね、何もしなくな

      • 妹は知らない①

        あらすじ  定職に就き真面目に働いている妹。部屋に引きこもりニート生活を謳歌している最低最悪の兄。他に身寄りのない二人きりの兄妹なので、そんな兄でも妹は自分のマンションに住まわせ、厄介者扱い、お説教は日常茶飯事なれど、追い出すこともせずに面倒を見ていた。  昔は妹の知らない間に彼女を取り巻く難事や面倒事を、本人に知られることなく解決してくれる頼りがいのある兄だった。  そしてそれは現在も続いていた。  兄は引きこもるふりをしながら、妹が知らず巻き込まれている変事を当人に知ら

        • 破壊の女神 11

           11 「しかし先生も不思議な方ですね。これほどまでに著書の中で女性の身勝手な面を浮き彫りにしてらっしゃるのに、口では逆のことを言う。何かお心変わりがあったのでしょうか」  別に何ともない人間にカウンセリングのようなことをする音々。 「もしや、娘さんに説教でもされたのですか。お見受けするに娘さんは先生以上にしっかりした方でしたので」  照れるぜ、と娘さん。  音々の悪意の無い本音の急襲を受け、ようやく先生が自分の沸点を思い出した。 「あなたって人は! あなたこそ女性の敵です

        妹は知らない③

        マガジン

        • 破壊の女神(完結・小説)
          11本
        • 悪魔の子供たち(完結・小説)
          9本

        記事

          破壊の女神⑩

           10  こちらには勝利の凱歌を上げるカエルがいる。だが相沢氏は腕を一本折られたくらいで止まるタマではないようだ。 「あ、あなたの仰っていることは、女性の実情の、ほんの、そう、一部でしかないのです。わたくしは、違います。女性の不遇を訴えて、女性全体の地位を向上させたいだけなのです」  徐々に威勢を取り戻していった先生。理屈はむりくりのような気もしないでもないが。 「あら、そうでしたか。てっきり著書には女性休職者を糾弾する意図があるのだと思っていたのですが、そうではないとい

          破壊の女神⑩

          破壊の女神⑨

           9  相沢華蓮は母親の百合子に辟易していた。 「もうホント勘弁してほしいよ」  斜陽差し込む教室の窓際。三者面談の後のことだ。 「自分の本の中じゃあ女性はこうでなきゃならない、みたいな決めつけは敵だとか言ってるくせにさ、自分の娘に関しては「自分の娘像」をハッキリ押し付けてくんのよね」  窓の傍に立つその茶髪の女性に茶色い光線が容赦なく突き刺さり、髪の色を無かったことにしている。  しかめ面が似合う女は嫌いではない。ただしこの年齢でその特性を身に着けてしまっていることにど

          破壊の女神⑨

          破壊の女神⑧

           8  ドアを開けると、そこにはテレビで見たままのその人がいた。アラフォーには見えない中年の女性。 「あら、テレビでお見かけするよりスマートなんですね」  逆に向こうから言われてしまった。 「失礼します」  僕は勧められた椅子に座り、弦吾君はドアの前で待機していた。カメラマンや編集者もその辺の位置についている。  部屋の中はテーブルクロスやカーテンのレース感がやたらとよく目につき、四方八方からエレガントな雰囲気が顔を覗かせていた。テーブルの上には西洋の花が生けてあり、紅茶の

          破壊の女神⑧

          破壊の女神⑦

           7 「だ、だからと言って、日向さんが光政大学を志望しているのは事実です!」  魔法の解けた先生は大慌てで遅れを取り戻そうとしてきた。 「今のままでは絶対に志望校に受かることはできません! それでもよいというのですか? あなたは妹さんの希望を何でも叶えたいのではなかったのですか?」  さすが百戦錬磨のネズミ先生。すぐに立ち直り別の手段を講じてきた。これはいわゆる誘導尋問というやつだろう。音々を言葉巧みに操り、別の角度からうまいこと丸め込むつもりらしい。一度敗北を喫したことで

          破壊の女神⑦

          破壊の女神⑥

           6  進路相談室に入ると、フォーマルスーツを着込んだネズミのような顔のオバサンが作り笑いであることが一目瞭然の笑顔で出迎えてくれた。  コイツとは話が合わない。一瞬で私はそれを悟った。  笑顔を見せると人とのコミュニケーションがスムーズになるというのは本当だろう。ただし極端に作為的な笑顔の場合は話が別だ。作為的であると私が判断してしまうほどに演技の度合いが強い笑顔、と言い換えてもいい。他者とコミュニケーションを図るときに、相手を嫌な気持ちにさせないための礼儀として見せる笑

          破壊の女神⑥

          破壊の女神⑤

           5 「――以上が僕の考える生涯学習の今後についてでした」  頭を下げ、壇上を後にする僕を万雷の拍手が襲った。僕はそれから逃げるように観客から視界を隔てているステージ横の幕の中へと逃げ込んだ。持っていたマイクをスタッフに預け、空いているパイプ椅子に落ち着いたところでようやくため息を吐けた。  名前が売れ、注目度が上がると要らぬプレッシャーが発生してしまうことを最近知った。あの夢路響の講演だということで見ている側の期待度も勝手に上がってしまうのだ。  あの拍手喝采は一体どうい

          破壊の女神⑤

          破壊の女神④

           4  校舎の取材と称して美琴ちゃんの学校に潜り込み、そこでモンペ捜索をやろうと目論んでいた私たちを、他でもない美琴ちゃんが止めた。  まあ、正確には止められてはいないのだが。 「止めたって止まらないのがあなたたちなんだから、私は止めない! けどやるなら私の目の届くところでやって!」  なんと信頼されていることか。監視付きで許されることになるとは。美琴ちゃんとしてはただ白石君に復讐したいだけなのかもしれないが。  こうして冒険に旅立つ前に強力なメンバーがパーティに加入するこ

          破壊の女神④

          破壊の女神③

            3  光政大学社会学部の研究室は第三室まであり、僕ら下っ端研究員の詰め所は一でも二でもなく第三の研究室となっていた。第一はゼミで使う演習室で、第二は学生諸子の詰め所となっている。しかし第二と第三の垣根はほとんどなく、僕はいつも忙しそうな学生たちと肩を並べて研究員としてのノルマの処理に追われていた。教授や准教授が出席し発言するシンポジウムの資料作りや、僕が出席するわけでもない会議の下準備といった理不尽極まりないメニューが目白押しだ。ひどい時には事務処理的な機械作業も回って

          破壊の女神③

          破壊の女神②

           2  閑静な高級住宅街など、夜になれば単なる犯罪の温床にすぎなくなる。金持ちしか通らないこと請け負いのこんな道、盗賊どもの格好の標的ではないか。武家屋敷みたいな家屋の防犯設備だけが完璧で、お出かけの際の自分らの対策がザルではどうしようもない。  マンション暮らしからの脱出に成功した成金共がここに城を建て定住する。この御時世、マイホーム購入など不道徳で生きてきた世渡り上手たちの専売特許でしかないはずだ。真面目に生きているスーツ姿の百姓らは昨日も今日も外れくじばかり引いている

          破壊の女神②

          破壊の女神①

           あらすじ  人はただ生きているだけで先入観を獲得してしまう呪われた生き物である。それはやがて常識という名の欺瞞となり人間社会を万遍なく覆い隠すこととなる。果たしてそれが正しいことなのか、効率的なことなのか、ためになっているのか、不幸を招いてはいないのか……、誰も疑問に思うことなく、人はその欺瞞の薄皮の上を盲目的に歩き続けるほかない。  夢路音々(ゆめじねね)という女性は「創作物」と「自分の世界」の中だけで生きてきた奇妙な人物だった。彼女は一度として現実世界に触れてこなか

          破壊の女神①

          悪魔の子供たち 終

           9 共食い 「信用と、情報力?」 「ええ」  竜胆氏は頷いた。 「あの子は大人顔負けの類まれな情報力の持ち主です」  これはあの「悪魔の子」についての話だ。 「実際にあの子の告解を聞いていてそれに気が付いたんですよ。あの子が誰かを不幸な目に遭わせようとする時、その持ち前の情報力をいかんなく発揮していると」  何故か竜胆氏はこれを嬉しそうに言うのだ。私は悪魔の所業を糾弾こそすれ容認する姿勢など持ちたくないというのに。 「ああ、失礼。情報力というのは私の造語です」  説明が必

          悪魔の子供たち 終

          悪魔の子供たち⑧

          8 印象操作  あっという間に時間が過ぎていく。 この二日間、新聞部は我らの成すべきことの事前準備の為に奔走していた。  ハルが立案し、ハルが実行するのが新聞部のモットーだった。だが今回はそうはいかなかった。色々と出かけるところがあったので、俺もスマホ片手に市内を駆けずり回った。  俺の頑張りもあり、新聞部会心の一作は決行予定日の前日に仕上がった。もうすでにそれは大量にプリントアウトしてしまっている。  あとは明日の授業参観日の早朝、これを学校中に貼りまくるのみ。その下準備

          悪魔の子供たち⑧