見出し画像

日本を軸としたグレート・リセットを構想しよう

1.中国の孤立とグローバリズムの終焉

 中国政府は、輸出による外貨を元に、軍事力を強め、一帯一路政策でアジア、アフリカ、ヨーロッパ等への浸透を強めました。
 やがて、「将来的にGDPで米国に追い越す」、という予測が出され、中国政府は自信を持ちました。
 このタイミングで、トランプ大統領が就任し、状況は一変しました。最初は貿易問題でした。米中貿易は一方的に米国が赤字であり、それを解消するために、「製造業を米国に呼び戻し、中国に米国の農産物を買わせる」、という方針が打ち出されました。
 貿易問題が解決する前に、安全保障問題が生じました。中国人民解放軍との関係が疑われる数十の中国企業をブラックリストに載せ、それらの企業への投資や取引等を禁止しました。
 更に、人民解放軍と関係があり、産業スパイ活動をする可能性のある留学生の受け入れを厳格化しました。
 トランプ大統領が退任する直前には、「新疆ウイグル地区における人権弾圧はジェノサイドである」と認定し、西側諸国の支持を得ました。
 中国の孤立は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、決定的なものとなりました。世界のサプライチェーンが止まり、改めて世界がいかに中国に依存していたかが明らかになりました。
 中国は自国の軍事力を誇示することで、周辺国の支配を強めようとしていますが、これは逆効果です。中国はますます国際的に孤立するでしょう。
 中国が孤立すれば、輸出ができなくなり、外貨不足に陥り、一帯一路等の海外対策もストップします。
 中国国内経済を牽引してきた不動産業も、バブル崩壊により崩壊しました。巨大企業の倒産と不良債権の増大は、金融機関にも大きなショックを与えています。
 世界が分断し、中国が孤立すると共に、グローバリズムは終焉を迎えました。

2.グレート・リセットは左傾化を招く

 2021年のダボス会議のテーマは、「グレート・リセット」でした。グレート・リセット(Great Reset)とは、いまの社会全体を構成するさまざまなシステムを、いったんすべてリセットすることです。

 グレート・リセットを実現させるための重要な取り組みは、以下の3つとされています。
・政府主導のステークホルダー経済の実現と公平なルールづくり。
・新たな投資プログラムの活用。
・第四次産業革命のイノベーションを活用した上での、健康と社会的課題への取り組み。

 これらを順に考えていきましょう。
 ステークホルダーとは利害関係者です。ステークホルダー資本主義とは、企業は株主の利益を第一とするという「株主資本主義」とは異なります。企業が従業員や、取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方です。
 「新たな投資プログラム」では、国家が大規模な復興基金や景気対策基金を用意して、システムを根本的に変革することを目指しています。これを推進するには、「大きな政府」が必要になります。
 第四次産業革命は、21世紀のデジタル革命であり、デジタル活用のイノベーションを活用しながら、公共の利益に取り組むことです。
 公共の利益を重視するということになれば、やはり「大きな政府」が必要です。
 以上を考えると、資本主義とはいっても、社会主義に近い資本主義になりそうです。
 中国は資本主義的な共産主義を推進してきましたが、最近では毛沢東時代の共産主義に回帰するような動きも見られます。結果的に、世界全体が左傾化しているのです。
 

3.欧米を軸とした新たなグローバリズム

 中国を軸としたグローバリズムは終焉しました。しかし、欧米を軸としたグローバリズムが始まろうとしています。
 「グレート・リセット」は、欧米を軸とした新たなグローバリズム宣言のようにも感じます。ステークホルダー資本主義も、あくまで欧米のステークホルダーが中心です。
 最も典型的な事例がワクチンです。ワクチンは欧米で開発され、世界に供給されました。これは巨大なグローバルビジネスです。
 そして、ワクチンについては国連のWHOより、アメリカのCDCが主導権を握っています。
 感染拡大時期には、日本発の安価なアビガンやイベルメクチン等の治療薬が注目されましたが、ワクチン供給が始まると、報道は一切なくなりました。ワクチン接種だけが唯一の解決策になりました。
 医療と健康の分野において、中国の信用は落ち、欧米を軸とした世界市場が構築されました。
 更に、中国のIT企業が世界市場から退場し、米国のメガテックが再びネットの支配権を強めています。
 米国のGAFAと並び称された中国のBATH、Baidu(バイドゥ)・Alibaba(アリババ)・Tencent(テンセント)・Huawei(ファーウェイ)各社は、中国国営企業になるでしょう。そして、成長のモチベーションは失われます。
 エネルギーについても、中国を排除すれば、環境問題を絡めながら欧米企業が主導権を握れます。
 軍事的には、既に米国が覇権を握っており、日本は完全に米国のコントロール下にあります。英国も日本との同盟を希望しており、これも見方を変えれば、米英による日本の押さえ込みです。更に、豪州の軍事力を増強し、磐石の白人国家による支配体制を構築しようとしています。
 

4,自立型資本主義の可能性

 日本人は、昔から民族独立を基本としたゆるやかな経済協力体制を目指してきました。大東亜共栄圏構想がその典型です。
 そういう思想があるから、中国への支援を行ったとも言えます。欧米の影響を排して、中国が自立することを良いことだと考えたのです。
 したがって、台湾も自立すべきだと考えています。その台湾を中国が侵攻することは、感情的にも許せません。ましてや、尖閣諸島に圧力をかけるなど、もってのほかです。
 日本が考えるべきグレート・リセットは、グローバリズムを否定し、各国が経済的に独立する、自立型資本主義ではないでしょうか。そして、自立した国同士で対等でフェアな貿易や経済協力を行うのです。
 日本が考える「新しい投資プログラム」では、各国が自立した経済を運営できるような経済インフラ整備がその中心になります。
 中国の一帯一路のような、中国経済のためのインフラ支配ではなく、あくまでもその国の経済が自立するようなインフラ整備です。その中には、各国の企業と人材を育成することも含まれます。
 デジタル産業革命も、分散型で発想できます。大企業を優遇するのではなく、分散型の企業ネットワークを育成します。「分散型イノベーション」による「マイクロ経済圏」あるいは「ローカル経済圏」を構築し、それをネットワーク化していくという考え方です。
 自立した個人や企業が自律的に成長できるなら、「大きな政府」は必要ありません。
 そうなると、左傾化ではなく、民族独立、自立型経済を目指すことになります。
 日本は独自のグレート・リセットを構想し、世界に発信すべきではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?