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スポーツ選手のためのリハビリテーション研究会

第41回研修会抄録集併載.アスレティック・リハビリテーション 20;2023:31.

投手のコンディショニング──投球障害肩の予測と予防

背景

 関節唇損傷で鏡視下修復術を受けた投手の復帰率は肘のトミー・ジョン術に比べ低く(Gilliam 2018)、これがプロ投手になればさらに低い(Fedoriw 2014)。同様に腱板損傷で鏡視下修復術を受けた投手の復帰率も40%以下である(Altintas 2020)。そこで投球障害肩の予測はできるのか、その表裏一体の予防を観点に投手のコンディショニングを検討する。

肩甲運動異常(Scapular Dyskinesis)テスト

肩甲運動異常テストは視覚動的評価方法である(Kibler 2013)。選手は左右に2 - 3㎏のリストカフを付け、肩甲上腕関節の最大屈曲位から5秒かけて肘を伸ばしスムーズに腕を矢状面上で下ろす。その中で屈曲90°位に肩甲骨の突出の有無を左右比較する。大学(全米NCAA-D1)野球選手28名に肩甲運動異常テストを行ったところ特異性が見られ、非利き腕側に比べ利き腕(投球)側の僧帽筋上部は有意に低く、一方で僧帽筋下部は有意に高かった(Tsuruike 2016)。

ランダム化比較研究では、シーズン前に肩甲運動異常テストを大学野手17名と投手13名に行い、利い腕側の突出有無を検査し、同時にKJOCスコアを用いて主観的な投球腕の状態を調べた。そしてシーズン最終週に再度KJOCスコアで腕の状態を調べた。結果、肩甲運動異常テストに陽性のある投手はシーズン前に比べシーズン後に投球腕の状態を有意に低下させたが、そのテストに陰性の投手は投球腕の状態を低下させなかった。一方で野手は肩甲運動異常テストの陽性有無に関係なく投球腕の状態に変化はなかった(Tsuruike 2018)。

症例報告では、関節唇損傷で鏡視下修復術の既往歴のある投手は肩甲運動異常テストで肩甲骨内側縁の突出が見られ(タイプII)、筋電図では利き腕側の僧帽筋上部と下部の筋活動の割合が非利き腕側に比べ顕著に高かった(Tsuruike 2020)。

さらに大学投手36名に肩甲運動異常テストを用いて4年間の前向き研究を行った。結果、肩甲運動異常テストで陽性の投手は5倍のオッズ比で投球障害肩を起こすことが分かった(Tsuruike 2022)。

エビデンスに基づくエクササイズ

肩甲運動異常の陽性は習慣性動作もあり改善は難しい(Tsuruike 2022)。その上で投球障害肩予防トレーニングは僧帽筋上部および三角筋の活動を抑えながら僧帽筋下部をいかに活性させるかである(Cools 2014)。そのためにも運動負荷の決定が重要である。たとえばチューブ(TheraBand CLX)を用い立位で肩関節水平内転抵抗運動と外旋運動行うことで僧帽筋上部と三角筋を抑えながら僧帽筋下部を活性させることができた(Tsuruike 2020)。

我々の最近の発見で興味深いことは、側臥位で肩甲骨を内転させ肩関節水平内転をすることでも僧帽筋上部と三角筋を抑え、僧帽筋下部を有意に活性させることが分かったであった(Tsuruike 2023)。

専門調整の大切さ

ほとんどのプロ投手は大小の違いはあっても関節唇を損傷させている。それが症状にでるか適応性であるかは選手次第である(Ahmad 2018)。肩甲運動異常テストを投球障害肩の予測、スクリーニングに用い、その予防はシーズンを通して僧帽筋下部を活性させることである。

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