見出し画像

投資家目線の半導体業界

投資家目線の半導体業界。半導体は近代社会の石油だと言われてる。投資家としてはこれを理解できないと大きな利益の可能性を取り逃がす。だから最近は一生懸命半導体の勉強をしてる。まずはどの会社が何をしているのかを大まかに知りたいと思い調べた。今日はその報告。最後に私の見立ても話す。

はじめに断っておくと、私は投資家・アナリストであって技術職ではない。だから半導体業界の知識は浅く付け焼き刃。もし間違った認識があったらぜひ教えて欲しい。

それからこの投稿で使う画像はほとんどが@ericflaningamさんがご自身のGenerative Valueというサイトに投稿したもの。内容が素晴らしいのでぜひ皆さんも一読をおすすめる。

まず、半導体と聞いて今皆さんが最初に想像するのは NVDAだと思う。でも半導体関連の上場企業は実は100社以上ある。

下の表にその中でも私がフォローしている20社を並べてみた。過去10年でNVDAは180倍、AMDも40倍、AVGOは21倍、CDNSは20倍になってる。

10バガー(株価が10倍以上になる株)が目白押し。

でもそれぞれやってることがかなり違うし、これから10年の期待成長率も全く違う。

そこで今日はどの会社が何をしていて、どのサブセクターが一番今後の成長を見込めるのか考察してみる。あくまで私の印象と意見なのであまり信じない方がいいけど。

まず、半導体業界は

  • 半導体をデザインすることに関連する企業

  • 半導体を作ることに関連する企業

  • 半導体をデザインして作る企業

に分けられる。そのタイプ分けを非常にわかりやすくビジュアル化してくれたのが前出のEricさん。

https://www.generativevalue.com/p/an-overview-of-the-semiconductor?ref=blog.publiccomps.com

それぞれ説明していこう。

Fabless Chip Firms

NVDAを含むこれらの会社は半導体のデザインをする。そしてそのデザインをFoundries と呼ばれる半導体製造会社に発注して作ってもらう。

イメージとしては建築家(Architects)だ。建築家はビルや家のデザインはするけど、実際に建物は立てない。建てるのは建築業社。この建築業社に当たるのがFoundries.

有能な建築家が建てたビルはカッコよくて、機能美にも優れ、作品のビルが有名になると、建築家も有名になり、注文が殺到して設計してもらいたいなら何年待ち、とかになる。そのイメージ。

それぞれの建築家に得意分野があるように、Fabless Chip Firmsにも得意分野がある。NVDAはGPU。QCOMはスマホなどのチップを作る。AMDはIntelが作ったx86式デザインのチップを作るのが主。

AVGOはラウターやモデムなどのチップに強い。MRVLもWiFiやBluetoothのスイッチやスマートTVに入るチップなんかに強い。

Ericさんの表にはないけどNXPIやONもFabless Chip Firms。この2つは車用や機械用などの最先端ではない半導体をデザインしてる。

この中でなぜNVDAが一番伸びているかというとNVDAはデータセンターがAIとMLに使うGPUがメインの会社だから。AVGOとAMDもデータセンター用のチップを作るけど、それがメインではない。

Fabless Non-Chip Firms

このグループには見慣れたマグ7のロゴが入ってる。これらの会社は自分の会社専用の半導体をデザインしてる。

言うなれば、企業の中にお抱えの建築家がいる状態。新しい自社ビルや工場などを建てるときに、その企業の中のことを知り尽くし、最適な建物を建てられるお抱え建築家に設計を頼む感じ。

彼らもFablessなので設計したデザインを建築会社(Foundries)に発注して作ってもらう。

IP & Design Software:EDA

これらの企業は半導体デザインに必要なソフトウェアを作ったり、繰り返し使われるデザインパターンの特許を持っている会社。

SNPSとCDNSはEDA(Electronic Design Automation)の会社でEDAセクターはこの2社の寡占状態。EDAは言うなれば建築家が使うソフトウェア。

例えばの話、もし建築業社が建築の元にした設計図に構造上の問題があったらどうなる?何億とかけて建てたビルが全く使い物にならず、下手したら取り壊して立て直す必要があるかもしれない。直すにも多大な費用と手間がかかる。

だから事前に設計図に不備がないかしっかりチェックする必要がある。EDAはそのチェックを半導体デザインにするソフトウェア、というのが私の理解。

半導体がどんどん小さくなり、複雑化するにつれて、EDAもどんどん複雑化、高度化する必要があり、その過程で小さい会社はついて行けずに脱落し、寡占状態になった。

Siemens(SIEGY)とAnsys(ANSS)もデザインソフトウェアを作る。でもSNPSとCDNSほどは重要ではないみたいだし、半導体関連はそれぞれの会社のメインの部門ではないみたい。

IP & Design Software:ISA

皆さんが大好きな最近IPOしたARMは半導体の基本構造(ISA, Instructuion Set Archtecture)の特許を持っている会社。ISAは私の理解では、半導体がソフトウェアにどうやって情報を伝達するかのデザインらしい。

ARMは初めはイギリスの会社だったのをソフトバンクが買収してNVDAがソフトバンクから買収しようとしたら独禁法に引っかかり、破談。そこでIPOとなった。

半導体のISAには主に3種類あって、x86、ARM、RISC-Vがある。x86はIntelが開発したんだけど、AMDはその構造をIntelの特許を使わずに再現したらしい。x86のチップはIntelとAMDが作ってる。

ARMとRISC-Vは両方ともRISC型の構造。RISCとはReduced Instruction Set Computerの略で要するに少ない命令で動くコンピューターみたいな意味。RISC型のチップはx86型に比べて消費電力が少なく、x86ほど熱くもならないので、スマホなど、バッテリーで動くものに非常に適してる。

スマホのARMシェアは100%。ラップトップのARMシェアもだんだん上がってきている。Counterpointのデータによると2019年には1%以下だったARMシェア(つまりx86が99%以上)は2022には13%まで上がり、2027年には25%になると予想されてる。

最近のMacBookに搭載されているM1、M2 などのアップルがデザインしたチップもARM型。私のMacBookも全く熱くならないし、そもそも前のみたいにうるさい冷却用のファンがついていない。

ARMはそのRISC構造をクローズドソースとしてどんどん改善し、チップデザイン会社がそれを使用できるライセンスを売ることで使用料を取る。使用料を取る分保証やサポートもする。

RISC-VはオープンソースのRISC型ISAでUC Berkeleyで2015頃に開発された。こちらはオープンソースなので誰でも使用料なしで使えるけど、サポートや保証もないし、半導体技術者は非常に限られているのであまり普及していない。

Foundries

続いて、建築業社側である半導体を作る側に移ろう。半導体はFoundryと呼ばれるとても大規模で高度な工場で作られる。一番大きく大事なのが台湾にあるTSMC。

半導体は小さければ小さいほど、最先端で、5nm(ナノメーター)以下の半導体を作れるのは今世界でTSMCしかない。TSMCは2020年に5nmの半導体を作り始め、今は3nmの半導体を作っている。

アリゾナ州や日本の熊本に今建てているTSMCのFoundries も3nmは作れない。アリゾナは5nm、熊本に至っては22nmと28nmのチップを作る予定らしい。

ところが、中国はアメリカから半導体の販売を規制されてしまったので、今必死に自国のFoundryを開発中で、驚いたことに去年の8月に7nmのチップを作ってしまい、なんと5nmのチップが今年中に作れるようになると発表した。

なければ作る。中国はこんなに逞しいのに、日本はTSMCを誘致しているにもかかわらず、22nmしか作れないなんて、残念としか言いようがない。

Samsungは自社で使うチップだけでなくFoundry としてもチップを作っている。Global Foundries はAMDの自社Foundryだったものが2009年にスピンオフされてできた。

Equipment

Foundries で使う機械を作る会社がこのカテゴリーに入る。中でも一番有名なのがオランダのASML。

ASMLは露光(Lithography)装置という半導体製造過程には欠かせない機械を作る会社で、この装置を作れるのは世界中でASMLしかない。このEricさんの半導体製造工程の2の部分に露光装置が必要となる。

https://www.generativevalue.com/p/an-overview-of-the-semiconductor?ref=blog.publiccomps.com

露光装置は非常に高度な精密機器でASMLも年間55台くらいしか作れない。そして装置一つで2億ドルから3億ドルする。

もう一つ参考になるEricさんの図がこちら。これはそれぞれの半導体製造工程で必要となる機械をどの会社が作っているかが一目でわかる。

こう見ると黄色のTEL(Tokyo Electron)は半導体製造Equipmentの業界ではかなり頑張ってることがわかると思う。

https://www.generativevalue.com/p/an-overview-of-the-semiconductor?ref=blog.publiccomps.com

Testing, Packaging, Assembly

こうして作られた半導体はこれらの企業に送られ、製品として組み立てられ、出荷されていく。この中で一番有名なのはiPhoneの組み立てをしているFoxconnだろう。

Integrated Device Manufacturers

最後にデザインも製造もする会社のことをIntegrated Device Manufacturersという。一番顕著な例がIntelとSamsung。

最近株価が上がり注目されているMUはCPUやGPUなどの頭脳となる半導体ではなく、メモリー半導体を作る会社。人間の頭脳は制御と記憶を両方やるけど、半導体の場合、制御する機能と記憶する機能は別のチップがつかさどる。

メモリーチップ業界はかなりコモディティー化していてMUの業績は非常にサイクル性が激しい。MUは最近では2012年、2016年、2023年に損失を出してる。

メモリーチップは主に2つの種類に分けられる。電源が切れると忘れてしまうけど、素早く情報にアクセスできるDRAM(Dynamic Ramdon Access Memory)と電源が切れても保存されるけど、アクセスに時間がかかるNAND(Not-AND Logic Gateの略で頭文字をとった略語ではない)。

DRAMを作っているのは主に3社:韓国のSamsung とSK Hynix、そしてアメリカのMU。NANDを作っているのはDRAMの3社プラス日本のKioxiaとアメリカのWestern Digital(WDC)。

最後に、Texas Instruments (TXN)とAnalog Devices (ADI)はアナログチップの製造会社。アナログチップはデジタルチップに比べてかなり単純でさらにコモディティー化しているので差別化は価格でしかなく、大きくて規模経済が働く企業にシェアが集中してる。

TXNは一番大きく、ADIは2番手。トップの5社が63%のシェアを握ってる。

私の見立て

以上が私が調べてみた半導体関連会社が何をする会社なのかのまとめ。これを書いてみてやっと色々なことがスッキリした。

半導体関連で私が投資してみたいと思う会社は以下の特徴がある。

  • AI・MLに間接的にでも重要に関連している。

  • データセンターに必要な部品、機械、ソフトウェアをデザインまたは製造している。

  • 技術の堀が深く、結果、業界が寡占状態、または独占状態。

  • キャッシュフローが豊富で堀の深さを保つ設備投資や研究投資に惜しみなく資金を使える。

以上を考えると、やはり私が好きなのはNVDA、CDNS、SNPS。さらにASML、TSMC、ARMも面白いな、と思った。後半の3つは持ってないので、詳しく分析してみようと思う。

MUはメモリーチップがAIに必要なことはわかるんだけど、商品がコモディティー化しているところが気になる。例えば、MUが全く新しい、DRAMとNANDのいいとこ取りで、速くて消えないメモリーチップを開発する、とかでもあれば話は別だけど(それが求められているかどうかさえ私は知らないけど)。

DRAMは3社、NANDも5社あるし、それぞれ2社ずつくらいなったらもっと面白いかもしれない。

AMDとAVGOは立場的にNVDAにはAI関連では永遠に勝てないと思う。実は両方とも株を持ってるんだけど、タイミングを見てNVDAだけに絞ろうかなと思った。やはり私はリーダーの株を持ちたい。

次に勉強しなくちゃならないのはデータセンターに必要な機械や部品を作る会社達。SMCI、DELL、VRTなど、最近はこの辺りの株も伸びてるので色々勉強してまた報告しようと思う。


サポート嬉しいです!いただいたサポートはサークルや他の啓蒙活動に使わせていただきます!