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経営者と生活水準

経営者は、一般的な正社員より、給与(役員報酬)の増減が大きい。
一般的な正社員は、給与が下がることはあまりないが経営者は大きく減ることもある。
そこで影響を受けるのが「生活水準」だ。
今回は、この辺りについて書き綴っていく。

経営者が役員報酬を下げる時

会社の成績が悪ければ、経営者は自分の役員報酬を下げるべきだ。
殆どの経営者は、前期(今期)の会社の成績から今期(次期)の給与を決める。

一時的に会社の成績が悪いことは、よくある話だ。
しかし、これが数期に渡って続くと話は違う。
会社は赤字体質になっていくし、役員報酬を下げるのにも限界がある。

こうなると、経営者は会社を立て直すことはもちろん、生活水準を下げる必要がある。
今回は会社のことについては割愛するが、個人でも「倒産」に準ずる「自己破産」というものがあり、持続不可能な生活水準は成り立たない。

役員報酬を下げない経営者たち

会社の成績が悪くても、役員報酬を下げない経営者もいる。
これは以下の2つの理由が多い。

1.会社全体の経費からすると役員報酬の影響が小さい
2.生活水準を下げられない

まず1の場合。
これはもう個人の給与(役員報酬)を減らしてもあまり意味がない。
分かりやすく例えると、会社の売上規模が数十億、営業利益がプラスマイナス数億といった単位になった場合。
この場合は、営業利益がマイナスに傾いたら、会社を建て直すことに全力を注ぐしかない。
個人の生活水準ストレスが会社の成績に影響を与えるのであれば、役員報酬は下げない方が良いのかもしれない。

2の場合。
一般的に、生活水準を下げるのは大きなストレスとなる。
そのストレスに耐えられない、もしくは「耐えられない気がする」ことから、役員報酬を下げられない。
特に、会社の業績が回復しない場合、会社、個人ともに破産の道へ進んでしまう。
これがよくある不幸なパターンだ。

経営者の生活水準への考え方

私の経験上、2024年現在で年齢50歳くらいにボーダーラインがあるように思える。
このラインを境に生活水準に対する考え方が変わることが多い。

ライン前生まれの経営者は、役員報酬に対しての生活水準が高い人が多い。
高級品に興味がある人が多く、平然と買える人も多い。
逆に、ライン後生まれの経営者は、憧れこそあっても平然と買える人は多くない気がする。
おそらく「内部留保」に対しての考えて方が違うのだと思う。

このラインは、バブル期と就職氷河期の影響を受けているように思える。
就職氷河期の初期程度までは、何だかんだ言ってまだ景気が良かった気がする。
ライン前生まれの人には、景気が良かった時代が記憶に強く残っている。
一方、ライン後生まれの人には、景気が良かった時代の記憶が殆どない。
だから、「内部留保」に対しての考え方に差が出るのだと思う。

最近は日本国内の株価が急上昇し、景気に対しての期待が現実的なレベルで高まっている。
順調に株価が上がって行くならば、現金預金の価値は相対的に低くなる。
ROEなどの会社の数値や株価を強く意識する経営者への世代交代によって、この動きは加速する可能性がある。
この先社会へ出る世代はまた「内部留保」に対して違う考え方を持ち、総合的な考え方も変わっていくのかもしれない。

生活水準の壊れ方

原因①:固定費

一番の原因は「固定費」だ。
生活費の中で「固定費」が高く、そこに依存する気持ちが高い人ほど、生活水準が壊れやすい。

生活の基本である「衣食住」の中で言えば、「住」が固定費だ。
例えば、月に30万のマンションに住んでいた人が居たとする。
役員報酬が240万減ったから、月に10万のマンションへ移住する。
これがなかなか難しい。

特に危ないのは「新築のローン」だ。
仮に現金で買った高級車であれば、売るのは簡単だ。
売れば固定費から解放される。
しかし、住宅となると話は別だ。
すぐに売れるとは限らないし、売ってもローンが残る可能性がある。

――― 無くす術のない固定費

これが一番危ない。

原因②:見栄

一番の原因は「固定費」だ。
継続的に支出を続けるものは、少なければ少ないほど生活水準は壊れにくい。
しかし、理屈では「手放す」ことが重要だと分かっていても、それを実行できない人がいる。
その原因の殆どは「見栄」というものだ。

個人的には「これだけは自分が頑張るために絶対に必要」というものはあった方が良い。
手放さず、必死で守れば良い。
しかし、「他人からの評価を気にして手放せない」というのは、危ない感情だ。
体裁を気にして、生活水準を下げられない。
そして、こういった感情は、探したらキリがないくらい「手放すべきもの」への執着を生む。

――― 見栄のための固定費

これもまた最凶の組み合わせだ。

生活水準の守り方

前提として、固定費と見栄を無くすこと。
しかし、必要な時に手放せる自信があるのであれば、自由に使えば良い。

まず、固定費との付き合い方。
これは、「固定費の認知」が重要になる。
紙でもエクセルデータでも良いので、固定費を一覧としてピックアップした方が良い。
生活水準を上げると、たくさんの固定費を抱えることが多い。
月数千円程度の固定費だと、記憶から消えているものも多いのではないだろうか?

見栄や自己満足のために金を使う場合、「手当たり次第」は止めた方が良い。
自分の趣味などに合わせて、支出するジャンルを定めた方が良い。
欲は、止まらないし、自分で止めるのも難しい。
自分でルールをつくり、それを守る。
そうしないと、収集がつかなくなる。
やがて、クレジットカードの明細を見るのも面倒になる。

最後に、固定費以外の流動費について。
特に、消耗品費。
これは、いつでも替える覚悟でいること。
安いもの、高いもの、その違いを知るのも悪くない。
その程度の気持ちでいると良いと思う。

私の場合

これは私の個人の主観なので、あまり参考にならないかもしれない。
私の場合、役員報酬が年間600万辺りから、生活水準はあまり変わっていない気がする。
私は愛知県の地方に住んでいるので、感覚的には名古屋の都市部での700万程度に相当し、東京の都市部での800万程度に相当するということになるのかもしれない。
経営者として会社の経費で特権的に消費できるものを加味しても、地方で800万程度、東京で1000万程度で「一般レベルの生活水準」は上限を迎えると思っている。

それ以上は、余る。
無理に使う必要もない。
吉野家やマックは何度行っても美味い。
Netflixよりコスパの良い娯楽を知らない。

――― 生活水準なんて、その程度。

少なくとも、ドラマや映画の若い主人公が設定に似つかわしくないレベルの美しい部屋に住んでいる光景に憧れることはない。


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