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8050問題は906030問題へ

8050問題とは、80歳の親が50歳の子供の面倒を見るといった問題だ。
それとは大きく違うニュアンスだが、私は今「906030問題」(私の造語)が危ないと思っている。
今回は906030問題について書き綴っていく。


孫が介護の時代が来た

孫が祖父母の介護をするケースが増えてきたように思う。
私も含めて、私の周りにけっこう多い。

孫が介護をする理由は以下の通り

・親が亡くなっている
・親と祖父母の仲が悪い(素直になれない)
・親が既に高齢で介護ができない
・親がまだ忙しく働いていて介護をする余裕がない
・親だけでは時間も金も足りない

これが私の言う906030問題だ。
90代の祖父母の世話を30代の孫がするというもの。

60親世代の問題

日本では、拡大家族から核家族へと主流が移行した。
平成元年には既に核家族は50%を超えていたようだ。
つまり、30孫世代が生まれた頃には、核家族が主流であり、祖父母と同居していない世帯が多い。

さらに、最近の高齢者は元気だ。
90祖父母と60親が同居していないケースも多い。
そんな中で90祖父母がいよいよ世話が必要になった時、どうなるか?

・時間は十分にあるか?
・金は十分にあるか?
・体力は十分にあるか?
・親の兄弟姉妹は協力してくれるか?

上記のいくつかが欠けると30孫世代の出番となる。
そして、めでたく906030問題の始まりだ。

今後の日本には、さらに906030問題を加速させる要因がある。

・定年退職が70歳へ
・就職氷河期世代が60代へ
・益々悪化していく貧困世帯の増加
・期待できない国の社会保障

30孫世代は、覚悟しておかなければならないだろう。

なぜ30孫世代が世話役になるのか?

私はまさに906030問題の30孫だ。
15年前に始まったので、実は20代から始まっている。
少し特殊なケースだが、自分自身を例として挙げてみる。

15年前、母が亡くなった。
そこから母方祖父の世話がはじまった。

母方祖父は当時約80歳、一人暮らし。
建築会社を経営しており、それは55歳の時にリタイアしたが、不動産物件が残っている。
その残った不動産の運営を続けなければいけない。
母が亡くなったタイミングで、その世話は私に渡った。

なぜ私に世話が回ってきたのか?

母は三姉妹の三女。
長女、次女は「お嬢様育ち病」だった。
いくつになっても「お金をもらうことだけ」しか上手くならない。

父は養子で祖父とは性格が真逆。
あまりに相性が良くない。

親族の中では、私が一番暇のように見えたようだ。
実際、私は今でも父親と兄以外の親族からフリーター(自称自営業)だと思われている。
おそらく、親戚中で一番稼いでいるのに、それは全く伝わっていない。
(いつも同じ服を着ている私が悪いのかもしれないが)
叔母たちは私が祖父から小遣いを貰っていると思っているようだが、私は小遣いどころか給料すら貰っていない。
不動産のメンテナンス手配、集金、トラブル対応、確定申告など、無償で15年以上やっている。
叔母たちに渡る相続財産の維持・管理までやらされているのに感謝されている気配はない。

そんなこんなで10年ほど、母方祖父の世話を続けていた頃。
今度は父方祖父が亡くなり、父方祖母が独りになった。
その後すぐ、喘息に加えて、足と腰が悪くなり、独り暮らしは危険だと判断された。

そして、なんと、私の家に来ることになった。
父はいつの間にかできた恋人(内縁の妻?)と二人で新居にて生活。
そこに父方祖母は行くことを拒否。
父の兄は、行方不明。
父の妹は、奈良の家に入っている。
結果、3階建ての私の家の2階を改装して暮らしている。

これで私の美しい906030問題が完成した。
30代にして「歩く介護施設」となってしまった。
(今はもう40代になったが)

30代孫世代のリアルな世話人生活

【父方祖母の世話】
・買い物代理、週2回程度
・ごみ捨て、適宜
・通院の送迎、外科週1回+内科月1回
・飼猫の通院、適宜
・部屋の掃除、中・月1回、大・年2回
・その他イレギュラーヘルプ、月2回程度

【母方祖父の世話】
・不動産の見回り、月2回程度
・不動産業の月末作業、月1回
・不動産業のイレギュラートラブル対応、月1回程度
・祖父分の確定申告
・買い物代理、週1回程度
・デイサービスへ送迎、週1回
・通院の送迎、週1回
・その他イレギュラーヘルプ、週1回程度

【私の所感】
・私の妻が優秀でなければ、とっくの昔に詰んでいる(感謝)
・親戚は時々来て話し相手になってくれる程度(それでも助かる)
・かなり時間を持っていかれる(サラリーマンだと困難)
・世話を楽しようとすると、そこそこ金が掛かる
・耳が悪くなると電話に出なくなり、自宅にいるか確認できず不便
・ようようと我儘になっていくのが辛い(自由に動けないストレスが由来)

30代孫世代の未来

全ての人が906030問題に直面するわけではない。
しかし、今後は、この問題に直面する30代、40代は多いのではないかと推測している。
そんな人たちは、どのようにして自分自身のための未来を担保していけば良いのだろうか?

まず「絶対に仕事を辞めてはいけない」ということ。
「介護のための転職」も止めた方が良い。
良くあるのは「時間に自由がきく職場に転職」というパターン。
しかし、これを実行して、仕事上のキャリアを崩壊させた人は多い。
30代ならまだしも、40代にとっては、リスクが高過ぎる。

最初はIT機器、ITサービスに頼ると良い。
防犯カメラは、安否確認にも使える。
人体検知機能を使えば、外出と帰宅も確認できる。
強制的にテレビ電話を繋げてしまうのも有効だ。
Amazonエコーには、随分助けてもらっている。
トイレや風呂の脱衣所には、人感センサー付きのヒーター。
寝室には温度・湿度センサー付きのIoT機器を設置する。
金は掛かるが、徹底的に労力は省いた方が良い。
何せ、育児は終わりが見えるが、介護は終わりが見えない。

要支援、要介護の認定を受けたら、それに見合ったサポートを受けることも重要だ。
プロに任せられるところは、プロを頼るべきだ。
また、プロの支援を受け入れてもらうように、祖父母の気持ちを誘導していくことも重要だ。
老人の気持ちを変えるのには、長い時間が掛かる。
思っている以上に事前から、少しずつ、長い目でジャブを打つべし。

絶望的な福祉環境の中でできること

2023年現在、福祉業界では倒産が相続いている。
福祉業界は、国からの支援に依存する売上体制だ。
国からの支援が増えなければ、サービスの拡充ができない。

一方、日本の社会保障事情は、暗い。
社会保険として約44兆円を集めているが、それでは全く足りらない。
税収約71兆円の半分以上である約37兆円が追加で投入されているが、それでも足らない。
新しく国債を発行しているが、過去の国債の利子で多く溶かしている。
国債を借金、税収を売上と考えると、売上71兆円に対して、借金は1000兆円以上。
国保有の資産を無視すれば、絶望的な財政状況だ。

そんな中で自分の家族の社会保障を守るためには、以下の要件が必要となる。

・時間を持つこと
・金を持つこと
・親戚の協力を得ること
・福祉サービスの知識を持つこと

上記のポイントは、国や地方自治体に決して保証されない。
むしろ、国や地方自治体を上手く使う側でなければならない。

日本の30孫世代よ。
健闘を祈る。


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