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松本には旅とサッカーの魅力が大体全部ある

OWL magazineで6月16日(日)、「旅とサッカー」についてのイベントを行います。

旅とサッカーという文脈において、松本という土地は重要な場所だそうです。

えっ、本当に?

来月のイベントの副題なのですが、誇大広告ではないですかね?
今回はそのことについて本気出して考えてみます。

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著者 円子 文佳 (まるこ ふみよし)
Twitter https://twitter.com/maruko2344

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僕は長らく(一年だけ移籍した時期があります)、柏レイソルを応援してきました。

柏は過去に一度しか松本で試合をしたことがありません。しかし僕はこれまで4回アルウィンを訪れています。残りの3回は応援ではなく旅目的で松本に来たことになります。

「旅とサッカーという文脈において、松本は重要な場所である」

最初は「また大げさなこと言ってるよ……」とか思いました。しかし確かに僕は、これまで何度も松本を訪れていました。サッカーと旅が好きであれば、応援しているチームに関わらず、つい訪れてしまう場所。それが松本ということなのかもしれません。

それはなぜかを考えていくのですが、その前に昔僕が松本に行った時の思い出話をします。


・2007年、地獄の北信越リーグ

2007年11月、アルウィンに「地域リーグ決勝大会」を見に行きました。

当時、松本山雅はまだ北信越1部リーグのチームでした。そして2007年の北信越1部で優勝し、JFLへの昇格が懸かった「地域リーグ決勝大会」(以下、「地域決勝」と呼びます)に初めて出場しました。
この年の北信越1部リーグは8チーム2回戦総当たりで行われ、勝点31で松本山雅とAC長野パルセイロが並び、得失点差で松本が優勝しました。2位の長野はこの年、地域決勝には進出できませんでした。(後の伏線になるので覚えておいてください)

地域リーグ決勝大会の一次リーグは、11/23-25の3日間で行われました。3日で3連戦を行うという、体力的に厳しいレギュレーションです。4チームで一次リーグを戦い、グループ1位が後日行われる決勝リーグに進出できます。松本山雅とFC Mi-OびわこKusatsuが2連勝でお互い勝ち点6とし、第3戦でグループ1位をかけて直接対決になりました。なお、当時の地域決勝は90分で同点だった場合はなぜかPK戦が行われるレギュレーションで、この試合は引き分けはなくPK戦まで含めて「勝った方が決勝リーグ進出」という状況でした。

この試合に全てがかかる、非常にアツい状況です。そして何と、たまたまというか根回しが良いというか、このグループの試合は(おそらく松本山雅が出場決定する前から)アルウィンで行われることになっていました。当時は今よりももっと、「サッカー専用スタジアム」が日本に少なかった時代でした。僕は自称「専スタフェチ」でして、「専スタで、何か大きなものがかかった試合が見たい」という欲望で、東京から車で日帰りで松本に行くことにしました。

当時の写真はもうないので、ハトさんにアルウィンの画像をもらいました
https://note.mu/hatonosu/n/nef93554efb7d


・牧歌的だった時代

朝5時半に起きて車で出発しました。松本山雅のクラブ史上、間違いなく最も重要な試合だと思ったので、「人が集まりすぎて駐車場に入れないかもしれない」と思ったのです。しかし意外と早く着き、スタジアム正面の駐車場にもまだ誰もいないぐらいでした。「えっ、まだ開いてない?」と思ったぐらいです。今となっては考えられないですね……。

松本-びわこの試合は13時キックオフでしたが、開始まで4時間ぐらいあります。11時から第一試合の徳島ヴォルティス・アマ対セントラル中国という試合があり、寒さの中何となく眺めていました。売店も何も出ておらず、自販機で紅茶だけ買って飲んでいた気がします。僕のような物好きはそれなりにいるようで、FC東京ユニを着た二人組がメインスタンドにいました。

13時までには観客もそれなりに入り、最終的に3600人と発表されていました。入場無料でチケットなどもチェックされるわけではないので、どうやって観客数を数えたのかは謎です。


・当時の山雅のプレーには何も感じなかった

試合内容については、辛うじてメモが残っていたので再現してみます。前半は松本の方が中盤の支配力が強く、二度ほどキーパーと一対一の場面を作りましたが両方とも外し0-0で前半終了。後半3分にカウンターから松本が失点し、そこから焦りや経験のなさが出たのか、一気に崩れました。ミスパスとラフプレー地獄に自らはまって、びわこに追加点も許し、0-2で試合終了となりました。

ざっとググった感じだと、テキストベースでこの試合について触れている記事は見当たらなかったのですが、動画はあっさり見つかりました。

この試合について当時の僕は、以下のように感想を書いていました。

何だか、よくある低レベルの試合で終わってしまった。追い詰められた状況になったらもっと悲壮感を漂わせたサッカーをやって欲しいんだけど、それも見えなかった。この状況なら当然必死だったと思うし、試合後には泣いてた山雅の選手もいたけど、プレーの中で必死さを表現するにも技術のレベルが必要なんだろうか。

何様だこいつ!でも当時、わざわざ朝5時半に起きてアルウィンまで行くほどの熱意があったはずなのに、そのように見えたのですよ。当時のチームのレベルが本当に低かったのかもしれませんが、対戦相手の戦術にはめられて実力を出し切れなかった可能性もあります。びわこの監督は「地域決勝の仕事人」戸塚哲也でした。いずれにしろ、J1まで昇格した今となっては隔世の感があります。


・「クラシコ」 長野と松本の対立関係

もう一つ、この試合について今でも印象に残っていることがあります。3600人とはいえ、地域リーグレベルでは通常考えられない観客動員でした。松本で開催されたこともありスタンドの雰囲気は概ね松本山雅寄りでしたが、逆側のゴール裏にはびわこサポと思われる、水色のユニを着た一団がいました。その時は「やっぱり滋賀から応援しに来る人もいるんだなあ」と思ったのですが、水色の人たちは試合中ずっと、松本の選手に対して罵声を浴びせ続けていました。「やっぱり関西の人って、いかつい人が多いのかなあ」ぐらいに思って、しばらくしてそのことは忘れてしまいました。

それから数年が経ちました。

twitterか2ちゃんねるかを見ていたところ、何かのはずみでこのような昔の書き込みを見つけました。

AC長野パルセイロ応援団の謝罪 皆様お世話様です。コールリーダーの●●です。 さて、今回、アルウィンで行われました地域リーグ決勝大会3日目、第2試合におきまして、我々応援団が行った愚行により、お客様、関係者の皆様に多大なるご迷惑をかけ、名誉を失墜させてしまいました。 この場をお借りし、心より謝罪致します。

あ、あの試合!!

あの時「関西の人はいかつい」と僕が思っていたびわこサポは、本当はびわこサポではなく、長野サポだったのです!松本に昇格されたら面白くないから、わざわざ水色のユニまで買って、アルウィンのアウェイゴール裏に野次を飛ばしに行ったということでしょうか。この書き込みだけでなく、当時の報道の痕跡も見つかった(記事自体はもう消えていましたが)ので、おそらく本当のことなのだと思います。

数年前の謎が解けました。それにしても僕は、あの時「つまらない試合だな」みたいにボーっと過ごしていて、なぜこんなすごいことが起きていることに気付かなかったのでしょう。まあ偽サポがいるなんて、気づけるはずもないか……。普段と異なる世界に行ってみると、本当にいろんなことがあります。

もちろんこういう行為は褒められたものではないのですが、それだけの熱意を持って応援したり、逆に敵対するチームがあるということは、うらやましくも思います。JFLよりも下のカテゴリーでそんなことが起きていたなんて!松本と長野の対立関係はその後、「クラシコ」という映画の題材にまでなっています。


・ここ10年、地域リーグからJ1までたどり着いたのは2チームのみ

その後の松本山雅の軌跡を振り返ってみます。翌年の08年は北信越リーグ4位、全社枠(知らない人は敗者復活戦的なものと捉えて下さい)で地域決勝に進出しますがまたしても一次リーグ敗退でした。

09年は再び北信越4位、全社枠で再び地域決勝に進み、この年は優勝してようやくJFL昇格を決めました。09年の大会は決勝リーグが松本での開催で、最終戦の観客数は10965人とされています。一次リーグとはいえ2年前は3600人だったことを考えると、このクラブの急成長ぶりがよくわかります。

10、11年とJFLで、11年に年間4位でJ2に昇格します(当時はまだJ3がなかった時代です)。2014年にJ2で2位となりJ1へ初昇格、この時は1シーズンでJ2に戻りましたが、今年再びJ1に復帰しています。

この10年間で地域リーグからJ1までと、結構なシンデレラストーリーですね。近年ではここまで成長したクラブは他にない……と思ったら、Vファーレン長崎も08年まで九州リーグでした。その2チームがここ10年での「成長株」ということになりますね。それぞれ理由はありそうです。


・旅とサッカーという文脈において、松本が重要な理由

詳細はイベントで議論されると思います。長くなったのでここからは簡単に書いていきます。

僕がわざわざ松本にサッカーの旅をしたくなったのは、やはりアルウィンの存在が大きいと思います。サッカースタジアムとして作りが素晴らしい。これがダっさい陸上競技場だったら、わざわざ来たいとは思わなかったでしょう。舞台ということではスタジアムの箱だけでなく、スタンドの雰囲気の良さもあります。松本のサポーターは熱いことで以前から知られており、サッカーの観戦環境としては周りも盛り上がっている方が気持ちが入ります。

松本は東京からだと地理的にも陸路で3-4時間と、程よい距離感です。旅先としてはあまり近すぎると非日常感がありませんし(東京でも旅は出来ると書いたのですが)、飛行機に乗るとなるとやはり思い切りが必要になります。

最後に、ライバルクラブである長野の存在です。サッカーという競技自体も単なる玉蹴りではなく、相手があって勝敗を競うスポーツです。サッカークラブの運営も、「地元に根付いてよかったね」的な話だけだと、サッカーのプレーでいうリフティングのようなもので、深みがないように思います。敵がいてボールやフィールドを奪い合う方が「サッカー的」であり、地域内に対立がある長野県はクラブの運営も「サッカー的」な側面があるのではないでしょうか。地域内で「対立」「闘争」している環境は、サッカーと旅に興味がある部外者からすると、ぜひ訪れてみたい場所ということになると思います。


というように、サッカー旅の行先としての松本について語ってみました。本文は以上になります。一応本文だけで完結する文章になっています。
この先はおまけ部分で有料になります。07年以外に松本を訪れた時の話や、イベント前の試合、松本山雅-ベガルタ仙台の展望?について書いています。
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