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仏談 ー金剛力士像 by水曜日のカンパネラー

 運慶と快慶。2人の仏師は同じ時代に生きた。大仏師 康慶の弟子である両巨頭(運慶は彼の息子でもある)は奈良仏師、慶派の本流を貫く天才である。『慶派』とは、仏像制作における流派の一つで、華道の未生流、茶道の裏千家の仏師版のようなものであり『慶』の字がつく仏師が多い。『慶派』の他の流派には『円派』や『院派』などがある。

 水曜日のカンパネラのボーカル詩羽さんは、東大寺南大門の仁王(金剛力士像)2体をフィギュアだと歌ったが、私が笑点の司会者ならこの表現には迷わず座布団3枚は差し上げる。なるほど仏像は当時のフィギュアに違いない。

〽 康慶の後継者やがて作る金剛力士像
それから「あうん」の呼吸合わせ
お互いのバイブスが重なった
運慶と快慶が作り出す
君の金剛力士像
伐折羅陀羅(ばざらだら)
 跋闍羅波膩(ばじゃらぱに)

(水曜日のカンパネラ『金剛力士像』歌詞抜粋 )
※康慶  ➡︎  慶派の大仏師で運慶の父
※下の2行は『金剛力士』2尊の別名

 仏像の大きさは基本的に床からの高さで表されるが、もちろん現代のメートルやフィートではなく、尺貫法の『丈』や『尺』という単位である(1丈は約3メートル、1尺は約30cmだから10尺で1丈である。ちなみに『尺』の一段階下の単位が『寸』であり、約3cmだ。一寸法師は身長3cmだった訳だ。奇しくも水曜日のカンパネラには『一寸法師』という楽曲も存在する)。

 なんでもお釈迦様の身長は 1丈6尺(4.8メートル)だったらしいから(絶対違うがww)、その大きさに合わせた仏像こそ等身大フィギュアであり、『丈六(仏)=じょうろく(ぶつ)』と呼び、これより大きな像は『大仏』として扱われる。しかし東大寺南大門のこの一対の金剛力士像は、丈六どころか その身長、なんと8メートルを超えるのである。しかも制作開始からわずか2ヶ月強で仕上げられたものだ。

 水曜日のカンパネラの歌曲である『金剛力士像』の歌詞では 運慶と快慶がバイブスを重ねて2人で像を作ったことになっている。確かに運慶が吽形(うんぎょう。口をへの字に結んだ方、表題画像右)を、快慶は阿形(あぎょう。同じく口を開けた方、表題画像左)を担当したという説もあるが、『吽形像は定覚と湛慶(運慶の息子)、その他小仏師12名の作であり、阿形像を運慶と快慶、その他小仏師13名が担当した』ということが、阿形像の墨書銘に記載されていたというから そちらの方が信憑性が高いと思う。

 3000に及ぶによるヒノキ材の部品を、それぞれ緻密な設計図と詳細な工程に従って各仏師が削り出し、最終的にそれらを集め組み立てた寄せ木造りにより2体は作られた。この仕事に関わった慶派仏師の作業を単純計算すると、1人あたり100を超える部品を作ったことになり、1日あたりにすると1.5個は作らなきゃならん訳である。それまで仏像といえば一本の木から削り出す『一木造り』が主流だったのだが、複雑極まりないこの分業計画を指揮したのがプロジェクトリーダーたる運慶だった というのがホントのところだろう。 

 さて水曜日のカンパネラというユニットについて。初めて彼女たちの歌を聴くと『この題材で?』とか『コイツら大丈夫か?』と思ってしまうのだが、聴いていると不思議世界に連れて行ってくれるのでなかなかいい(笑)   個人的には前のボーカルであるコムアイさんも好きだったが、今の詩羽さんも可愛くて別の良さがある。あのちゃんあたりと組んでやってくれないものか。きっと予想もつかないような化学反応が起こる気がするのだが。

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