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ぼくの死体をよろしくたのむ(川上弘美)

名前はとてもよく目にしていたし、聞いていたけれど
なぜか今までこの人の本は読んだことがなかった。

ぼくの死体をよろしくたのむ

なんてインパクトある題名。

どの短編も、何とも言えない余韻、情景を残す思いがけない出会いだった。
文体が、とにかく美しくて、飲み込まれているうちに読み終えてしまう。

それぞれの話で1冊ずつ作れるのではという話ばかりで、
むしろ続きが、その前後が気になる物語が多すぎて。

各話の印象に残った
・単語
「」セリフ
・私用メモ
を残しておく。


・銀色のダンベル 七番目の子供 公園
「でも、欲しいものは、ない」
・フリーの校閲の仕事を持つ、佇まいの美しいホームレスの男に恋するわたし。

大聖堂
・大量の酒瓶 痕跡翼 いつも一人
「名前をおつけになったら、いかがですか」
・格安家賃のかわりに一匹扶養義務があるアパートで「つばさ」と暮らすぼく。アパートの住人で名前が分かるのは河合さんだけ。

ずっと雨が降っていたような気がしたけれど
・まだ開封していない箱 はさみ スケッチブック
「かまわない。おれ、退屈してるから」
・喪失にそなえて同じものを二つずつ買う妹。生まれた時から「スペア」として生きてきた兄。欲しいものは何?

二人でお茶を
・ムーミントロール模様のタイツ 日本ごっこ くさくさする
「だってあたくし、働き者だもの」
・従姉妹で働き者のトーコさんとの暮らし。わたしは料理をし、洗濯掃除をし、紅茶を入れる。トーコさんとの日々は少しだけ軽く、色がつく。

銀座 午後二時 歌舞伎座あたり
・当たり 小さな二人 銀色のダンベル
「怖がらなくていい。おれたちがおまえを怖がってもいいくらいなんだから」
・叔母との待ち合わせがあるのに、15㎝くらいの小さい人たちを助けるために、名前も知らない男とTビルの屋上へ。銀座は猫だらけ。武蔵野の集落より。

なくしたものは
・違う髪型 犬のたましい 雨
「たまには、言う。言いたい時には、言う」
・鳴海と成田は短大の同級生。成田と渚は高校の時からの古いつきあい。渚の家の犬、小太郎は3年前に死んだ。小太郎が家の中で2番目に好きな満は失われた文化を研究を志している。二千年前に埋葬された「おばさん」は治めていた国の名前も忘れてしまった。なるちゃんとなりちゃんは今日もきらきら輝いている、たぶん。

儀式
・田中さん ミススミス ヤロスラーヴァ
「人間のことが、わたしにはいまだによくわからないのです。」(独白なのでセリフではない)
・夕方頃に起きて活動する「わたし」の話。とても静か。ご飯を食べて、掃除をして、天罰を下す。アルコールに酔う事はないどこかのおばさん。

バタフライ・エフェクト
・手帳 九月一日 河津 
「いいじゃない、変われば、運命」
・手帳、未来の日付にそれぞれ書かれた見ず知らずの名前。少しずつ、微妙に、接触する二人の、ずっと後まで続く話のはじまり。

二百十日
・魔法 人がた 大事な人
「さみしいけど、悲しくはないから、いいの。」
・叔母の代わりにやってきた「るか」いう子供とのほんの一時の生活。ちょっとだけつかえる「ある能力」。わたしも、そして「叔父」も。

お金は大切
・スパゲッティナポリタン 午後零時 十二万円
「払いません」
・元カノの知り合い(たぶん)の和田さんから持ち掛けられた謎の時間の過ごし方。あったりなかったりする喫茶店。僕の呪い。

ルル秋桜
・缶の中身 毒をもつもの 杏子ちゃん
「そういう生まれつきの人なのよ」
・切り抜きの「〇〇」を集めている。静かで、悲しそうだから好き。名前もちゃんとついている。姉妹のみのりは筋を通した意地悪らしい。ともだちは緑の缶に入れた「〇〇」を分かってくれる唯一の人、ほんとは先生だけど。

憎い二人
・新幹線の二人づれ コシアブラの間の二人 スナックボンゴレ
「友だち、わたしも、ほしいな」
・弁当を半分ずつ食べて交換し合って、バスでゾンビの夢を見た話をして、旅館の旬の料理を堪能し、同じく旅行中の女子3人組にちょっと絡まれて、帰りの新幹線でもきっとたぶん半分個ずつ交換する弁当を食べる、年の離れた友だちだと言う男二人。を見かけた女子視点の話。同じ旅行中でも、双方の時間の過ごし方が、圧倒的に比較されていて、どちら側に居たいかは一目瞭然。

ぼくの死体をよろしくたのむ
・黒河内璃莉香 電子レンジ 死の誘惑
「そうよ、ずるいの、わたし」
・父の恩人宅を年に二回訪ねるあたし。それが父の遺言。父が死んだ時、怪我したみたいな気分になったその人が、入れてくれるお茶はとてもおいしい時と、全然おいしくない時の差が激しい。

いいラクダを得る
・逆行サークル タンメン どれもわたしからは少し遠い
「私には、ほとんどのことがわかりませんネ。でも、アドバイスは、いいことデス。それは逆行ではありませんネ」
・アラビア語の講師バクル先生からアラビア語を習うわたしたちは、コギャルメイクをして、腰パンして、たまごっちして、スマホをガラケーに戻す。
ただの「知り合い」など、いらない。馬蹄目のことは、よくわからん

土曜日には映画を見に
・小西さん そうめん 土曜日
「え、映画行きませんか」
・数ページの中に、ふたりの人生の話が詰め込まれている。それはどんでん返しもなければ、謎解きもなく、起承転結も考えなくていい。騒々しくも無く、穏やかで、ずっと見ていられる映画のようだ。

スミレ
・精神年齢 実年齢 引っ越し
「なんか、外の世界になじまなくて」
・その宿舎に入居する人々は、そこにいる時は精神年齢の年になる。実年齢よりだいぶ上だったり、だいぶ下だったり。時に逆転する事もある。精神年齢はそういう物だから。

無人島から
・川のほとりのアパート 西麻布のマンション 山梨の古民家
「なんかそういうの、町はずれのスナックに来たお客みたいじゃない?」
・短期居候在宅勤務なわたしは「解散」した家族の家を転々とする。

廊下
・美術館 麻耶さん 時
「自由なんじゃなくて、無責任なの」
・10歳年下の彼、会えたり、会えなかったり、それは長い廊下の先。若い祖母がいたり、歳を重ねた孫もいる私には懐かしすぎる遠い「私」がいたり。


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読んだ人しか分からない。読んだ人にも分からないような。

いつか、また読み返したくなった時
これを見たら、それぞれの話を思い出せるのだろうか・・・

いや、結局よく分からなくて、普通に読む事になりそうだけど。
それでも、いい。



なんだかんだで、今月振り返ってばかりで本が読めてない・・・・いいけど。














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