見出し画像

やることはやった。高き壁に立ち向かい続けた日本人に最大級の賛辞を。

南野拓実のモナコ移籍が決定し、世界の頂にいるクラブでの過酷な挑戦は終わりを迎えた。



この記事の結論を先に言うと、”彼は持てるすべてを出してクラブに貢献したが、これ以上は無理”だ。

そこで今回は、彼のリバプールでの成績を振り返り、 高い壁に立ち向かい続けた ”Taki”の足跡を追いかけたい。


ザルツブルグでの活躍

2019年の10月3日、 当時所属していたザルツブルグはリバプールとチャンピオンズリーグで対決し、2nd legで1G1Aの活躍。 
契約解除金が激安なこともあり、リバプールが獲得に乗り出した。


リバプール移籍

2019年12月19日、725万ポンド(約10億円)の移籍金で 南野のリバプール加入が発表された。背番号は18。
マウント・Bフェルナンデス・ロチェルソ・フォルナルス(今は8番)と、気づいたらトップ下タイプに18番が大量発生していた。

このシーズンは2節から首位に立ち、一度もその座を渡すことなく、 ぶっちぎりで優勝するわけだが、途中からはもはや負ける気どころか勝ち点を落とす気がしなかった。

正直スタメンをとるのは厳しいと思っていたので、大した挑戦をする男だと思った覚えがある。


チャンスが与えられず、結果も出せない苦しみ

残念ながら、自分の予想通り南野はリバプールで苦しむ。

19-20(冬に加入)
出場試合数:14(先発5)
プレー時間:494分
ゴール/アシスト:0/0

20-21(冬まで)
出場試合数:17(先発7)
プレー時間:743分
ゴール&アシスト:4/4

※どちらもtransfermarkt調べ。

相手にフィジカルバトルでとばされたり、必要ないのにボールを受けに来て、むしろボール回しを悪くしたり、なじめていない感は見て取れた。

南野拓実は中央で持ち味を発揮できる選手だ。
しかし、フィルミーノという、イングランドどころか世界中探しても見つけられないスーパーな選手がハマってしまったため、センターFWでの起用がかなり少なく、気の毒だった。
※transfermarktでも左ウイングになってる😢

しかし、そこで彼が素晴らしかったのは、「試合に出さんかい、ボケ」と心には思ったはずだが、表で一切クラブに対する不満を漏らさず、 メディアからもそういった情報がまったく出なかったことだ。


結果を出し、マージーサイドを後に

20-21後半でサウサンプトンへのレンタルを経て、迎えた21-22シーズン。
ついに日本代表の10番は結果を出した。

出場試合数:24(先発9)
プレー時間:1008分
ゴール/アシスト:10/1
※transfermarkt調べ。

他メディアで腐るほど見たかもしれないが、このシーズンで公式戦2ケタゴールをあげたのは、マネ・サラー・ジョタ・フィルミーノ・南野のみだ。

そして、今季リバプールがとった2つのカップタイトルに大きく貢献し、指揮官にこう言わしめた。

タキがいなければここにいなかった。
彼がもっとプレーしていないということは罪だ。


それでも重要なゲームでは使われなかった。

今シーズンの彼は、起用された試合で数字を残した。

しかし、リーグ戦とCLの重要な試合では、ほぼ起用されなかった。

BIG6とCL決勝T(累計)
出場試合数:7(先発0)
プレー時間:63分
ゴール/アシスト:1/0
※transfermarkt調べ。

19-20
vsATM 7分(CLベスト16 2nd leg)
vsMC 5分 (リーグ優勝決定後)
vsARS 29分( 〃 )
vsCFC 3分( 〃 )

20-21
vsARS 1分(ほぼ勝ち確の状況)
vsCFC 4分( 〃 )

21-22
vsARS(ほぼ勝ち確の状況)

他により優秀な選手がいるから出られなかったのだが、あえていじわるに言うと、競合相手には通用しないと判断されたとも言える。


あれ以上を求めるのは無理

不満を言わない、ケガもしない、頼りになる控えという評価は確立したといえる。とはいえ、他の選手からスタメンを奪えというのも酷だ。

今季調子を落としたとはいえ、普段はセレソンの最前線を務めるフィルミーノに、得点王のサラー、同様に移籍したマネはバイエルンに3,500万ユーロを払わせた。
ジョタはプレミアで15点とり、ディアスは後半戦でMVP級の活躍だ。

そして、来季はヌニェスが加入する。
世代交代の流れがあるなか、若手が優先的に使われる可能性もある。
噂の4-2-3-1の採用でもそれは同じだ。

彼らとのトレーニングを経て、選手として成長することもあるかもしれないが、相手あってのスポーツであるサッカーは試合に出たほうが成長する競技だ。なんならこれ以上居続けてプレー時間を増やせないのは、リスクというか、チャンスを逃すことにつながる。今夏の移籍はいいタイミングだと思う。


リバプール移籍は最良の選択

先に述べたように、プレータイムは決して長くなかったし、本人もより数字を残して活躍したかったと思うが、南野のリバプール移籍は素晴らしい選択だったと思う。

20代前半にメガクラブで現代フットボールの最先端を学ぶことができるのは限られた選手だけだ。これから10年は続くであろう彼のキャリアにとって、かけがえのないものになったはずだ。

そもそもザルツブルグから世界最強クラブの1つから移籍するのは、人として尊敬に値する。
大学生のときに留学先のオーストリアでちょっと有名なIT企業で働きそこで就職し、ちょっと出世したら、ある日AppleやGoogleからヘッドハンティングの話を持ちかけられた。
こんなことがあったら、怖気づいて断ってもおかしくない。

サウサンプトン時代を含め3年過ごした。
モナコがリバプールに支払った移籍金は1,500万ユーロ。※ボーナスあり
日本人のフォワードに対し、「20億払うからウチにくれ!」と思わせたのは快挙だ。

来季からはフランスでの闘いとなるが、身体能力の高い 選手が集まるリーグで、また違った壁にぶつかるだろう。
それでも世界最強のクラブからのオファーを受けて、 臆することなく高い壁にいろんな男なら、 その壁にも躊躇なくぶつかり、そして乗り越えるだろう。

富安健洋がそこに並び、あるいは凌駕する地位まで上り詰めるかもしれないが、ここまでの高みに到達する日本人選手がいつ現れるかどうかもわからない。

日本サッカー未踏の地にたどり着いた南野拓実に拍手を。
新天地 での活躍を心から期待している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?