【ブルーレットの男】

アルバイト先でのレジ打ち業務の話。

レジ打ちの仕事というのは、常に喋ってないといけないし、次々来るお客さんを止めることができない(受け入れざるを得ない)し、レジのシステムはどんどん新しい機能などアップデートされるため頭を使わないといけないので、なかなか大変な仕事である。

そんなレジ打ち業務で様々なお客さんと触れ合う中で体験したエピソードである。

昼休憩を終え、引き続きレジに復帰した矢先のことであった。
夫婦でいらっしゃったお客のレジの最中、後ろに男性客が並んだ。
横目で見たところ、男性は若者で、ジャケットのようなものを着てハットのような帽子をかぶっているようである。
夫婦のお客のレジが終わり、次の男性客のほうに顔を向けると、
彼は、思いのほかよれた帽子をかぶっていたのだが、
まるでディズニーランドで働く人のような素晴らしい屈託のない笑顔をわたしに向けてきた。
よほど良いことでもあったのだろうか。
わたしは、特に気にせず、いつものレジの流れを始めた。

「いらっしゃいませ」

「ポイントカードお持ちですか」
と聞くと、彼は満面の笑みで
「¥%○*〒@」
と答えた。
もしかしたら、彼は外国人なのかもしれない。


ちなみに、彼が購入したのは、ブルーレット付け替え用であった。
ブルーレット付け替え用をレジ袋に入れようとすると、
彼は「いらない」というような仕草をしたので、袋に入れずに、そのままお渡しした。


すると、彼は突然ブルーレット付け替え用の外箱を強引にビリビリと破って開封し、
中身を指でつまみ上げ、
前述の素晴らしい笑顔のまま、
ブルーレット付け替え用をわたしに見せつけてきたのである。
まるで、ブルーレットのキャンペーンガール、もしくはキャンペーンボーイ、かのごとく、であった。
そして、彼は満面の笑顔のまま言った。


「これ、トイレに使うんです」


彼は、日本人であった。

ありがとうございます。お金は好きなタイプです。