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離婚弁護士が結婚相談所の仲人を始めた理由

弁護士運営の結婚相談所Marriage Baristaです。

2024年、僕が弁護士になって丸10年になります。
この間司法修習生だったのに、いつのまにか若手とは言え多少中堅的なポジションになってしまいました。時が経つのは早い。

かつては、敏腕な経営スキルのあるボス弁の事務所に入所し、その中で着々とキャリアを積み重ねてきた僕が、なぜ、突然レールを外れることになったのか。
そもそも弁護士仲人ってなんなのか。
儲かるのか。
見てる限り儲かってなさそうだぞ。
最近の若手は副業しなきゃならないほど貧しいのか?

というような周りの同業者からの関心や、法曹を志す人たちに向けて、今日はちょっと仕事のお話をしていこうと思います。

僕の目標は、将来同じ志を持った法曹の人たちと、バッジを持つことでしか得られない経験値を面白い形で社会に還元できる仕事をどんどん展開していくこと。もし、同業者の先生で同じような価値観をお持ちの先生がいたら、一緒に仕事できたらいいな、なんて夢をみています。
ということで、生き恥を晒すようで恥ずかしいため、そのうち有料化しようと思いますが、同業者の先生は声かけてくれたらこっそりご提供します。


弁護士の仕事はAIで埋められていくのか


AIが超やばい

ここ数年、AIの登場によって消えていく職種がどうのこうのって話が賑わい出してますね。
弁護士も大なり小なりその影響は出てくるだろうというのは、否定できないと思います。
実際に契約書のリーガルチェックについてはAIでやってしまうサービスも出てきている。
ヒューマンエラーがないという点で、むしろ人間の僕らが携わるより安定した仕事の提供ができるのではないだろうか、とさえ思うほど。
おそらくこの波は企業法務だけではなく、損害賠償の計算や、簡単な訴状や書面の作成などに波及していくことでしょう。

司法修習生や学生バイトの仕事はAIが奪っていった

何より僕が最近びっくりしたのは、リーガルリサーチの場がAIに取って代わられようとしていること。
弁護士が必死に買い揃えて本棚に陳列してきた法律書や実務書にもサブスク化の波が来てて、月数千円でたくさんの法律書の必要な部分にアクセスできるようになったわけですが、さらにAIの進化で素人っぽい質問を打ち込むだけで膨大な本から読むべき本と読むべき部分を抽出してくれるようになった。
当然数年前には想像ができないサービスで、何ならパラリーガルや学生バイトや司法修習生にレポートとしてやらせていたようなことが秒速でできてしまう時代になってしまったわけです。

このまま便利〜!って受け取るだけでいいのだろうか?
後述のように、弁護士という仕事がなくなることは決してないとは思っているけれども、日本の弁護士業界には安穏とはできない不安がたくさんある。
AIもそうだし、法曹人口増もそうだし、なんか色々不安がある、この業界は。
それに加えてこの先大きく変動する社会情勢を前にして、感情や経験を積む人間の弁護士として、どんな価値を提供できるだろうか、について、この先数十年とこの業界で飯を食っていくにあたり、改めて向き合わなければならない時代に来ているのかな、という感覚がきっかけになったのだと思います。
あ、ちょっとくらいはアパレル店員みたいにおしゃれな雰囲気で働きたいとか、専業で同じことやり続けるのに飽きたみたいなものも混じってるかもしれない。

弁護士が弁護士であり続けられる価値はどこにあるのか?

他方で、ありがたいことに、そんな移り変わりに関わらず、この業界はバッジ(資格)で守られています。日常生活の中でどんなに弁が立っても人徳者であっても、バッジがなければ僕らの仕事はできない。

僕はバッジの使い方を考え続けることができるこそ、この先も弁護士が人間でい続けられる理由なのではないか、と思っています。

ちょっとだけ嫌な言い方になるけど、僕らの仕事の最大の強みは、バッジをつけし者のみしか見えない世界があることだと思っています。
その世界はとても深く、とても広くて、例えば拘置所や刑務所の分野、人には曝け出したくないプライベートな分野、先進的なクリエイティブな分野など、それぞれの弁護士が専門分野を進化させて見通していくことでそれぞれの先生にしかない経験値として存在している。
今後、AIの方が弁護士の頭脳を凌駕する場面は広がっていくだろう。何なら既にchatGPT4.0のほうが僕より優秀でいい文章を書くし絵を描くのもうまい。



でも、僕の弁護士としての価値がAIに絶対に侵されない部分があるとしたら、バッジをつけることで見てきた世界で何を感じたか、だろうと思います。

僕はあいにくショップ店員上がりの人生一発逆転系の弁護士で、法曹界のサラブレッドとは程遠いキャリアだったので、渉外法律事務所でたくさんの力やお金が動く世界は見れなかったけど、 バッジをつけることで思いがけずたくさんの人の離婚やら痴情のもつれやらをたくさん見ることになった。なんか離婚案件の処理がとても奥深くて楽しくて、図らずも家事畑ばかり歩んできてしまったんですよね。
そういった、10年ほど弁護士として歩いてきた自分の航跡を振り返ると、改めてその経験一つ一つが、あまりに宝の山過ぎなんだよあ、って強く思う。

「幸せな結婚」って、知力や財力や社会的地位とは別次元にある。

どんな金持ちも人格者と言われる人も、あるいは離婚の現場を数々渡り歩いてきた我々離婚弁護士ですらも、それぞれの理由で平等に結婚に失敗する。その意味で、「幸せな結婚」って、知力や財力や社会的地位とは別次元にある。
数多の依頼者とパートナーとの別れを目の前にして共に考え振り返り続けてきた10年間の経験値。 これこそが、結婚(いわば「自分の人生をより豊かなものにする手段としての結婚」に)を考えるにあたり、何人にも、そしてAIにも負けることがないかけがえのない価値ではないかと思うのです。
そしてこれを使うことができるのは、この世に自分だけ。

だから、仲人なんだ。

じゃあそれをどう最強に美味しい形に調理するかを考えた結果、見えたのが仲人業だった。
仲人は面白い。離婚弁護士が、関係を解消する、という点でのその先の人生の大きな選択をサポートするのであれば、仲人は、0から関係を紡ぎ、その先の人生の大きな選択をサポートするということ。両者は人生最大の人間関係の構築と解消、という一つの線でつながっているんですよね。
つまり、バッジをつけることによってのみ経験することができた数多くの離婚の経験値をスライドすることで、婚活に新しい指針を作ることができるのではないか。失敗は成功の母、といったら語弊があるかもしれないが、終わりを迎える時こそ、その関係の始まりについて一番深く向き合うものだと思うから。
離婚事件の弁護士経験という世にもニッチな職務経験が離婚以外の場面でもっとも輝く場面は、婚活なんだと確信し、レッドオーシャンの結婚相談所業界に踏み入れた次第です。

実際に離婚弁護士は仲人としてやっていけてるのか?

弁護士としての既得権益に甘んじて経営センスを磨かなかったツケでもあるのだが、現実は全く甘くありませんでした。
「離婚専門弁護士がその職務経験を活かした結婚相談所」って看板は、葬儀場でブライダルプランナーをやっているようなものなので全然売れなかったんですよね。
ワクワクしてポジティブであるべき婚活の伴走者に離婚の経験値にまみれている者がいるなんて、基本的に縁起が悪く見られる、ということに気づくのにまず1年かかりました。

あとは、正直弁護士をやっていると、結婚相談所の客単価の低さは堪えるものがありますね。ブルーオーシャンどころか永久凍土並みにコチコチでニーズが見えない新規事業を前にして、「(独占業務としてに守られている)弁護士としての自分の時給」を変えることなく、価格設定をして参入したことも失敗の一つだったな、と今は思う。値段を上げるのは、独占業務として認知されてからにすべきだった。

そのほかも色々失敗した。

そんな、たくさんの失敗をして、たくさんの金を失っていった1年だった。こんなことせずに大人しく弁護士やっていれば、きっとタワマンライフも愛車のゲレンデヴァーゲンを手放さずに済んだだろう、と後悔した日もあります。

誰も出来ない、誰もしていないことがありさえすれば、きっとなんとかなる


めっちゃ頑張って開発したマリグラム

そんな失敗を踏まえ、性格分析学などを1から勉強して、新しくカウンセリング型婚活専門性格分析システムであるマリグラムを作ってリリースしたのが去年の今頃。
幸運にも、バズることができて申し込みが殺到し、僕も本業とプライベートそっちのけで、1年間で300人もの婚活者の悩みをカウンセリングさせていただくことで、わけわからんほどの量のビッグデータを手に入れることができました。
それを活かして、今は独自のメソッドを作って差別化をしたり、弁護士仲人イベントとかやって、そうやって「弁護士ってもしかしたら結婚に役立つかも?」という永久凍土を溶かし耕し続けています。
少しずつ、その価値が認識され始め、目を引くような好条件の短期成婚者もではじめて、得体の知れないおもしろ経歴人間から、結婚に頼ってもいい専門家かも!と浸透し始めている実感がようやく持てるようになってきたのは、昨年の暮れ頃からかもしれません。
自分のこの10年の経験値は、他の結婚相談所は持ち合わせていない。
そして他の弁護士の先生は婚活市場なんて見向きもしていない。
そんな場所が、弁護士仲人という居場所です。

誰にも出来ない、誰もしていないことであれば、きっと「努力」という単純作業で道は開けていくのかな、と感じることができたのは、本当にいい経験を得られたもんだなと思います。
そして、まだまだ、この先どうなるか分からない。金が尽きて自己破産しない限りはこの死ぬほど面白い育成ゲームを楽しむことはできそうだ。

婚活の世界で弁護士が活躍する余地はたくさんある。

バッジを手にして見てきた生の景色と経験。完璧な情報収集ができない、不完全な人間であるからこそそれぞれの先生が不揃いに持ち合わせるこの経験値こそが、絶対にAIには取って代わられない強みである。
だから、この先AIがどれだけ進んでも、僕らが人間である限りこの分野でAIに負けることはない。

その一つが、弁護士と婚活の世界の立ち位置なのではないかと確信している。

なんて偉そうなことを言ったけど、僕なんて業界で言ったらたかだかキャリア10年の若造です。
昔から離婚に情熱を持って取り組まれてきた先生方がその経験値の活用先として婚活に意識を傾ける時代が来れば、 今の婚活の世界、ひいては結婚そのものがよりよくなるんじゃないかなって信じています。
レッドオーシャンになったら新しい道を探せばいいだけの話。最近オーダースーツサロンを開き始めたのも、弁護士とのシナジーを意識した別の目論見がある。

そうして、僕は弁護士と仲人をやっています。
面白いと思ったら、ぜひ、マリグラムから興味を持ってみてください。
僕にしか提供できない、最高にロックでおもしろい、知的好奇心をくすぐりまくる婚活が、ここにはあります。


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