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歌舞伎を初めて観に行ったら極楽の宴が待っていた話


noteの更新をするのがずいぶん久しぶり!やだ!1年半くらい経ってる!!時が経つの早すぎ!!
さて今回、放置していたnoteを更新しようかと思い立ったきっかけが、「中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演」を鑑賞しに行ったことなんですよ。私の行った会場は大阪にある枚方市総合芸術文化センターでした。ヘッダー画像は会場近くの枚方大橋です。

歌舞伎をそれまでほぼ全く見たことがなく、役者さんご本人のことも全く存じ上げていないのに、今回の公演を観たあと、めちゃくちゃ予想外に歌舞伎にハマってしまったことを自覚してびっくりしました。

そもそも伝統芸能に全く興味がなかった人間が何故わざわざ生の舞台を観に行ったのか?実際行ってみてどういう点が魅力的だったのか?という点について、観に行くきっかけと当日の演目を振り返ってみました。

1.何故歌舞伎初心者が今回の公演を見に行く気になったのか(あまりにも長すぎる前置き)

年明け早々にNHK正月時代劇「ライジング若冲 ー天才かく覚醒せりー」を浴びてしまって以来、あのドラマの映像が事あるごとに脳裏にチラつくという症状が現れはじめ、気が付いたときには後の祭り。どっぷりハマっておりました。

ご存知の方が多いとは思いますが、念のため。このドラマは江戸時代中期に活躍した絵師・伊藤若冲の半生を、親友である僧侶・大典顕常との関係性や、彼らの交友関係を軸に据えて描いた作品です。主役の伊藤若冲を中村七之助さんが演じておられます。

若冲の真っ直ぐで欲のない人柄、画業にかける思い、売茶翁や池大雅・玉瀾夫妻や円山応挙との交流、そして大典との熱い友情が魅力的な作品です。

正月以来の私は、何かに取り憑かれたように伊藤若冲の画集や解説本や特集雑誌を買い集めて読み耽り、相国寺承天閣美術館の「若冲と近世絵画展」に繰り出し、若冲の人生に思いを馳せ、という具合にとても充実した日々を送っていました、が。

中村七之助さんご本人については、舞台公演などの情報を全く仕入れようとしませんでした。なんだろう、ドラマの若冲のイメージと七之助さんのイメージとの乖離が激しかったら怖いな…と思っていたんです、多分。

しかし、それが見事に覆される出来事が起きました。ウェブ上でライジング若冲の情報を探していたとき、ある記事がたまたま検索に引っかかってきたんです。ドラマ関連の記事ではないけど妙に気になってリンクをタップし、そして読み終わったときに「舞台上にいる七之助さんを是非拝見したい!」と思いました。これです。


めちゃくちゃ面白い。とにかく面白い。それにしても何故就職ジャーナルなのか。いや就職ジャーナルの記事だから気になって読んだのもあるんですけど。

就職に関する話でいうと、先輩の話は聞いたほうがいいというお話や、面接の時に緊張してもいいんじゃないかと仰るあたりのエピソードは具体的で納得できて、ちょっと親近感も覚えて勇気づけられましたし、基本的な職業観に通じる話をされていると感じました。

が、記事を読むうちに、七之助さんの歌舞伎への果てなき愛と情熱に強く惹かれていきました。四六時中歌舞伎のことを考えているって、私のような凡人にはとても真似できないほどの思い入れなんだろうな……こっちの想像も及ばない世界にいてはるんやなと思わされましたね。
インタビューの中で、仰ってることがあまりに美しくて心を奪われてしまったのがこの部分。


素敵な景色を見たら、歌舞伎のあの作品のあの場面みたいだなとか。砂の上を歩いた時には、こんな感触なのか、覚えておこうとか。雪が降った日の空気や感覚…そういう日常のちょっとしたことが、全部、歌舞伎に結び付くんです。いい話を聴いたら、芝居になるなと思うし。誰に言われたわけでもなく、自然と頭がそうなっているんだと思います。

ああもうこの方は骨の髄まで歌舞伎役者なんだな……と深く感じ入りました。歌舞伎のことも檜舞台に立つ七之助さんのことも全然存じ上げないままのごく当たり前の感想で、今思えば大変恐縮ですとしか言いようがないですが。


こういう経緯で、舞台上の七之助さんを拝見したい!という願望というか欲望をはっきりと自覚しましたが、何せ歌舞伎にとんと縁のない人生を送っていたもので、チケットの取り方とか出演者とか演目とかってどう情報を仕入れれば!?高尚で近寄り難い世界では!?と悶々とするばかり。積極的に情報を得ようとまではしていませんでした。

にも関わらず、めちゃくちゃ幸運なことに今回公演情報を知ることができてチケットを取れました。しかも地元から行ける範囲内の大阪・枚方市での公演。そのことも踏ん切りがついた一因でした。遠かったら行ってなかったと思います。もはや天啓では……???と思い込むレベル。

というわけで、ここで叫んでも関係者の皆様には伝わらないとは思いますが、あえて書いておきます。

15箇所も巡業で回って頂いて、そのうちの1つが近場であったことに大変感謝しております!!ありがとうございます!!今後とも期待しておりますので、どうぞ宜しくお願い致します!!

2.当日の感想

プログラムは以下の通りでした。
・浦島
・甦大宝春日龍神
・トークコーナー

2-1.浦島の感想

長唄に合わせて一人で踊る演目で、中村屋若手ホープの中村鶴松さんが踊っておられました。前半の若者と、後半玉手箱を開けちゃった後の老人になったときの踊り分けがコミカルで楽しかったです。

前半での片足立ちの足捌きがなんかもうすごい。もちろん当たり前だけど基本ずっと中腰の姿勢だし、しかも鬘も衣装も重いはずだし。そりゃあ何年も何年もずっとお稽古してたら鍛えられるよなと思いつつも、まず体幹の安定感が違うぜ、などとしみじみと拝見しました。

なお後のトークコーナーで、老人になって肩で息をしながら踊るところは、後半の疲労そのままに踊れると鶴松さんご本人が仰ってました。

アッやっぱりそうなんだ!と大変納得しましたが、いやしかし、それならなおのこと前半の華麗な踊りが凄すぎて鳥肌ものです。


長唄については、単語は途切れ途切れに聴き取れるんですが、全体としての意味が掴めなくて、こんなに分からないのかと衝撃でした。

感覚としては洋楽を聴いてるのに近い感じで、ちゃんと歌詞や解説を読んで全体の意味を理解すればわかると思うけど、初見だと何が何だか、みたいな状況ですね。慣れれば初見でも聞き取れるようになるのかもしれませんが、道のりは遠そう。

長唄の歌詞や演目の解説はパンフレット(と言っていいのか)に載っていました。幕間で初めて確認したけど遅かったです! 上演時間までざっとでも目を通しておけば良かった……。

前半途中で二枚扇を使って踊る部分があるんですが、あれは浦島と乙姫の二人を比翼の蝶に喩えているんですね(上演後にパンフレットにて確認)。いやなんか意外でした。

これまでの私の浦島像って、村に帰ったあと、ものすごく時が経ってしまったことに驚き戸惑うばかりなイメージで、乙姫に未練があるとは思ってなかったんですよ。

でも浦島太郎って子供の頃絵本で読んだだけだし、乙姫への未練という感情は子供向けの話では入らないか……そうか……考えてみればそりゃあ乙姫が恋しいよな……と何となく一人で納得しました。お馴染みの昔話に新たな視点が得られたのが新鮮で楽しかったです。

2-2.甦大宝春日龍神の感想

もとは能の謡曲で、舞踊にアレンジされて春日大社の奉納舞として演じられた作品だそうです。
 

仏跡を辿るために入唐を志す高僧の明恵上人が、春日大社に許しを乞うため参拝するんですけど、参拝途中で村人の男女と出会います。二人は龍神のお告げがあったと言って上人を止めます。実は二人の正体は龍神龍女で、後半その姿を現す、という話です。日本は古来仏教に守られた歴史ある素晴らしい国だということを表している作品らしいです。以上、プログラムの解説を元に書きました。


ここから感想。最初に出てくる、中村いてうさん演じる明恵上人が印象的でした。的外れな感想だったら申し訳ないですが、なんだろう、すっきりしてて美しい所作がお坊さんらしく思えたのかなと。

途中で上人が出会う村の男女が、それぞれ勘九郎さんと七之助さんなんですけど。
なんか……舞台上に……美しい人が……居やはったで……。なんかもうとにかく眩い。なんなんやここは。極楽に来てしもたんかな。って思いました。セリフとかほとんど頭に入って来なくてびっくりしました。完全に七之助さんばっかり見てましたすみません、という懺悔。

以前宝塚のファンの人の話で、あまりに役者さんが美しくて見惚れてしまって、初見の演目だと筋書きとかセリフとかが全然入って来ない、というのを聞いたことがあるんですが、あれ本当なんですね!??? そうか…こんなことがあるんだな…と衝撃でした。指先までも美しすぎますよね……と当たり前の感想しか出てきません。
 

この甦大宝春日龍神も浦島と同様に前半後半の対比が面白く、前半部分の村人の素朴な演技と、後半部分の龍神龍女のダイナミックな衣装や踊りの違いがわかりやすく面白いです。

特に今回、龍女役で踊る七之助さんが隈取を取ってはるんですよね。後のトークコーナーでも勘九郎さんが仰ってましたが、すごく貴重ですよね……。

隈取は眉毛が繋がっているのは人でない役柄を表している、と七之助さんが言うてはった、と、思うんですが、その辺うろ覚えで。一応ググってみたんですが言及されてる記事に行きつかず。

『土蜘』の土蜘の精とか有名な役どころを見たらたしかに繋がっているような。けど間違ってるかも!すみません!

2-3.トークコーナーの感想

最後のトークコーナー、本当にありがたかったです。歌舞伎についても役者さんご本人についても、色んなことを知ることができました。観客の質問に答えてくれるのも嬉しいし、お三方の素顔が垣間見ることができたような気がして楽しかったですね。

まずびっくりしたのが、勘九郎お兄ちゃん、トークがめっちゃお上手ですね!?って思わず心の声が。ドラマに出てるところしか拝見したことがなくて。喋らはるとあんな感じなんか。全然知らんかった。

七之助さん阪神ファンなんですね。これだけで大阪人は無駄に親近感を覚えてしまう。阪神の優勝確率はね……。うん……。気を長くして見守っていかないとですね……。

めちゃくちゃ面白かったのが、七之助さんのラジオ番組、ラジのすけの話になったとき。ラジのすけのある回で、お悩み相談のコーナーをやったらしいんですね。夫婦で食事の好みが絶望的なまでに合わない、という奥さんからの相談だったそうです。七之助さんはお悩み相談でなかなかポジティブな回答を返すのが難しいらしく、今回も離婚の二文字が頭にチラついていたそうなんですが。

その回にゲストで上白石萌音ちゃんが来てはって(萌音ちゃんとサシで喋るなんてめっちゃ羨ましいです七之助さん……と思いました)、なんと神回答をされたと。

彼女の回答は、出前とか宅配系やら出来合いのものでさまざまな種類のものを食べて、どれがどうだったという意見を交わしながら、お互い落とし所を探っていく、というものだったらしいんですよ。

一方の作ったものを食べるとなると、味も他方の好みには絶対合わないからストレス溜まるし、作った方もせっかく作ったのに美味しくないって言われたら腹立つし、ということで。すごいや!!なるほど萌音ちゃん天使だ……。


勘九郎お兄ちゃん(だめだもうお兄ちゃんって呼んでしまう)がその話のとき、旦那の我慢が足りない、もっと感謝しなきゃ、みたいな話をしてはったのがとても記憶に残ってます。世の中には嫁が飯作って当たり前って思ってて、しかも本人がそれをナチュラルに自覚してない旦那も多いですからね! よく言ってくれたよお兄ちゃん! って私なんかは思っちゃいますけど。

でも七之助さんの、どちらが我慢するのも良くないっていうのも分かりすぎるくらい分かるんだな。萌音ちゃんの回答は天才的だなと私も思います。


あとは鶴松さんが遊園地の絶叫系アトラクションがダメっていう話をされてて印象的でした。ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンでトラウマになっちゃったらしいです。めっちゃ親近感湧くなぁ……。鶴松さん、今後のご活躍にめちゃくちゃ期待してます。出演される舞台をまた見に行きたい。

今回鶴松さんのことを初めて知って、過去の舞台なんかの話をネットで探したんですが、「歌舞伎美人(かぶきびと)」に載ってたインタビューが面白かったのでリンク貼っときます。


他にもここに書き切れないくらい色んなお話をしてくださって楽しかったので、来年も絶対頑張ってチケットを取ろうと思いました。そこかよ!もちろん素晴らしい演目あってのこのコーナーですね。

3.観劇後の諸々について

実は今回のパンフレットの最後に予告が載ってた11月の赤坂大歌舞伎のチケットを押さえました。観劇後に喫茶店に入ったんですが、そこでチケット押さえて新幹線の時間まで調べてました。しかしその時点で自分の行きたい日付はS席しか残ってなかったです。なので強制的にS席。うわーめちゃくちゃ楽しみ!!また極彩色の夢が見れるの超ハッピーすぎますね。


今回の公演、トークコーナーの質問で名古屋から来たっていう方がいて、すごーいって思ったんですが。まさかその数時間後に自分が東京のチケット買ってるとは思わなかったぞ。こわい。

あと、10/24に放送のラジのすけも聴いて、25日の月曜にはシネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』も観てきたので感想を書きたいんですが、この調子で書いてたら絶対終わらんやん!どないしよ!!と思ってます。

以上、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

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