[ポエム] 可愛い人。
愛してしまった。
彼女を。
どうしようもなく。
荒唐無稽(こうとうむけい)に。
脇目も振らず。
無闇に好きになってしまった。
好きなのだ。
仕様がない。
どうしても。
愛撫(あいぶ)してやりたい。
しかし。
彼女を殴ってやりたくなった。
それはどうにも。
抑えられない欲望のようであった。
いや違う。
それは嫉妬や八つ当たりではない。
否、そうでないはずだ。
僕は知ってしまったのだ。
彼女の「慈しみ」が。
それが僕に向けられている。
僕はそれを知ってしまった。
僕は神に問いたくなった。
「慈しみには特権がないのか」と。
僕は彼女が不正を犯しているように思えた。
キリシタンでもない僕は。
かような僕はそう思ってしまった。
人に愛嬌を振りまいている彼女。
憎たらしくなった。
何かおぞましいものを見ているかのような。
僕は彼女を疎んじ始めた。
しかしやはり。
やはり僕は彼女が好きなようだ。
愛しているようだ。
なるほど、それは。
性愛によってなのかもしれない。
彼女の体がただ欲しいだけなのかもしれない。
がしかし、その「慈しみ」は。
やはりそれは愛するに能わない。
なぜならそれによって。
僕は彼女を。
愛してしまうからである。
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