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【ネタバレあり】心臓病の夫と認知症の妻の終末がリアルに起こり得る現実っぽくて恐怖と哀愁を感じた『VORTEX ヴォルテックス』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:161/169
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:-(本編でBGMなし)
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

   原題:Vortex
  製作年:2021年
  製作国:フランス
   配給:シンカ
 上映時間:148分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
映画評論家である夫と元精神科医で認知症を患う妻。離れて暮らす息子は2人を心配しながらも、家を訪れ金を無心する。

心臓に持病を抱える夫は、日に日に重くなる妻の認知症に悩まされ、やがて、日常生活に支障をきたすようになる。そして、ふたりに人生最期の時が近づいていた…。

【感想】

病に悩まされる老夫婦の日常と終末を描いたドキュメンタリーのような映画でした。正直、映画として面白いかどうかは微妙なところですが、「いつ誰にでも起こり得そう」という怖さを感じられます。

<めずらしいカメラワーク>

この映画、とても特徴的だったのが映像の見せ方です。全編にわたって画面を二分割し、片方は夫を、もう片方は妻を映し続けているんです。なので、同じ時間における両者の行動を同時に観ることができるんですよ。普通はひとりの人物をメインに映すので、同じ時間で違う場所にいる場合、どうしてもシーンが前後してしまいますよね。それが、今回は同時に映しているため、例えば妻が出かけているとき、夫は何をしているのかが一目瞭然なんですよ。カメラの位置は近しいところにあるのですが、絶妙に機材やスタッフが映り込まないようになっているのがすごいなと思います。

<現代社会の辿る未来のひとつ>

特筆すべきなのはカメラワークだけでなく、映画の内容の心苦さもそうです。自分ぐらいの年齢になって両親も高齢化してくると、「いつかこうなるんじゃないか」っていう他人事じゃない気分に襲われますね。妻は認知症で家や外をうろうろし出し、夫や子供の顔すら時々忘れるほど。ガスは点けっぱなしだし、夫の大事な書類をゴミとしてトイレに流しちゃう。そんな妻の看病に加え、自身も3年前に心臓の大手術をした夫。息子はいるけど、離れて暮らしている上に、仕事はヤクの販売で親に金を無心するほど(とはいえ、親は大事にしているようでしたが)。施設への入所を勧めるも、(息子からしたら)母親は状況を理解できず、父親も慣れ親しんだ家を離れたくないと頑なに拒否。こんなリアル、日本にもきっとありますよね。。。

そして、ついに"そのとき"がやって来ます。この先はネタバレになるので、まだ内容を知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。




















まずある晩、夫が発作で倒れてしまうんです。これに認知症の妻が気づかないか、、、と思いきや、翌朝にはなりましたが、幸いこのときは妻の意志がハッキリしていたため、息子経由で病院にまで連れて行くことができました。でも、時すでに遅しで、程なくして夫は息を引き取ってしまいます。もし倒れた直後に病院に運べていたら、、、まあそこは認知症かどうか関係なしに、妻が寝ているときに起きたことなので仕方ないんですけど。。。

夫がいなくなった後も、妻はそれを認識できず、家の中を探し回ります。近所の人に「旦那さんは旅立った」と言われてようやく大人しくなるんですが。で、結局妻はガスを全開にしてベッドに潜り込み、そのまま帰らぬ人になります。これ、認知症であるがゆえに訳も分からずガスを点けたのか、それともこの先の人生を悲観して自ら命を絶つためにそうしたのかがイマイチわからないんですけどね。。。でも、夫の後を追うように妻も旅立ちました。なんか、こういう夫婦そろって重篤な病を抱えるっていうケースは、高齢化社会の今、どんどん増えていきそうですよね。もはやリアルな現代社会の未来じゃないかって。

エンディングで、夫婦の住んだ家が徐々に整理されていき、最後はもぬけの殻になった部屋を見て、なんだか寂しい気持ちになりました。人が住まなくなった家って、こんなにも広いんだなって。死んだばーちゃんを思い出しましたね。。。(泣)

<そんなわけで>

正直、映画として面白いかというと、あんまりそうは思わないんですよ。病を抱えた老夫婦の日常が淡々と映し出されていくだけで、ただの記録映像みたいな感じなので。とはいえ、さっきも書いたように、これがリアルな現代社会かもしれないなとは思いますし、自分の両親または自分自身が年齢を重ねていくと、「明日は我が身」って感じでフィクションとは思えませんでした。劇中ではそこまで悲惨すぎる最期というわけではなかったにせよ、現実にはもっと惨いこともあるんだろうなと想像するだけで悲しくなりました。


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